※本記事は2022年2月5日に初回公開しました。最新マーケットに合わせ情報を更新しています。
2022年上半期、世界の株式相場は軒並み下落
早いもので2022年ももう半分が過ぎました。昨年末まで順調に右肩上がりの上昇を続けていた世界の株式市場には、地政学リスクの台頭、エネルギー価格の上昇、インフレ懸念、円安進行、利上げ圧力と、数々の試練が訪れ、調整を余儀なくされました。
近年、人気の投資信託といえば米国株ですが、多くの機関投資家が運用指標にするS&P500種指数は年初から約21%(米ドルベース、以下同。)下落したほか、主要なハイテク株で構成するナスダック100株価指数に至っては、約30%下落しました。
この下落幅を大きいと捉えるか、「大したことない」と考えられるかは、意見が分かれるところだと思います。実際に、円建てで米国株に投資する日本の投資家は、足元の円安進行によって15ポイント程度リターンが押し上げられたので、そこまで悲観的に捉えている方は多くないかもしれません。
とはいえ、年初からの調整局面で少しでもヒヤリとした、あるいは、米国株に対して「イメージしていたものと違う」と思ったなら、長期投資を前提としていても、原理原則を押さえた上で、リスクの取り方を再検討した方がよいでしょう。
では、ここでクイズを一つお出しします。
本連載で過去にも取り上げている内容なので、見覚えがあるという方も多いかもしれません。基準価額が下落している今こそ、向き合っていただきたい内容です。
投信の基準価額が値下がり分を回復するためには、何%のリターンが必要?
答え:約33.3%
10,000÷7,500-1=0.33333≒33.3%
直感的に「25%」と答えてしまいそうですが、正解は、25%より8.3ポイント大きい33.3%です。基準価額が25%下落した後(7,500円)、再び25%上昇しても、7,500×1.25=9,375と、1万円には届きません。
このクイズが意味するのは、基準価額の上昇と下落は一対(ペア)ではないということ。つまり、一度基準価額が下落してしまうと、再び同じ水準まで戻すためには、下落率以上のエネルギーと時間を要する可能性があるということです。
当然のことながら、下げ幅が大きければ大きいほど、元の水準に回復するために必要なリターンは大きくなります。
異例ずくめの米国株式市場 今後もリスク点検を
株式市場の調整と聞くと、2020年春のいわゆる「コロナショック」を思い浮かべる方も多いと思いますが、当時のように、わずか数カ月で株価が元の水準まで回復することを当然のように思ってはいけません。
むしろ、大規模な金融緩和策によって押し上げられたコロナ禍の米国株式市場は、異例ずくめの動きであったと考えた方がよいでしょう。
コロナショックの時のように、想定していたよりも基準価額が早く回復すれば、それに越したことはありません。しかし、短期間のうちに大きく基準価額が下落した場合、回復までに年単位の時間がかかる可能性も否定できません。
例えば、フィンテックやイノベーションなど、特定の投資テーマを掲げたテーマ型ファンドの中には、基準価額が年初来で40%以上下落したものもあります。先の式に当てはめて考えた場合、基準価額が40%下落すると、10,000÷6,000-1=0.66666≒66.7%ものリターンが必要となります。
「米国株インデックスファンド、好調の一因は〇〇だった」で触れた通り、2021年のS&P500とナスダック100指数の年間騰落率は米ドルベースで約27%のプラス、為替変動を加味して約43%のプラスでしたから、66.7%のリターンを獲得するのに年単位の時間がかかる可能性は十分に考えられます。(ただし、積み立てを行っている場合は、この限りではありません。詳しくは「積立投資のテクニック(1)高値圏から始めても利益が出るってどういうこと?」をご参照)
20年、30年単位の長期投資を前提としたとき、米国株が有望な投資先であることは間違いないでしょう。
しかし、長期投資を実践する過程では、短期的に30~40%の下落に見舞われることがあり、さらに、その下落分を回復するために年単位の時間がかかる可能性もあるということも覚えておく必要があります。
今回のような株式市場の調整と、「お金が必要になったとき」が重ならないよう、自身が取っているリスクの定期的な点検を心掛けましょう。
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