人気の指標「ナスダック100」とは

 前回は、多くの機関投資家が運用指標とする「S&P500種株価指数」と円安進行の関係について取り上げましたが、今回は、S&P500指数と双璧をなす人気のナスダック100株価指数についてみていくとともに、今後の投資戦略について考えます。

 ナスダック100指数は、米国のナスダック市場に上場する銘柄のうち、金融以外のセクターで流動性が高く、時価総額の大きい上位100銘柄で構成されます。いわゆるハイテク株の比重が大きいため、より高い期待リターンを追求できる半面、指数自体の値動きも大きくなる傾向があります。

 そのナスダック100指数は、年初からの急落を経て、3月には回復の兆しをみせていましたが、足元で連日年初来安値を更新するなど、再び苦戦を強いられています。

 足元の円安進行による恩恵を受ける形で、同指数への連動を目指す代表的なインデックス型ファンド(投資信託)は円ベースのリターンが押し上げられているものの、それでもなおマイナス圏(▲12.4%)に沈んでいます。

NASDAQ100指数とインデックスファンドの年初来リターン推移

※QUICK、NASDAQのデータを基に楽天証券経済研究所作成

ナスダック100でよく聞く「レバレッジ型」。注意点は?

 さて、ナスダック100指数といえば、対象指数に対して数倍の値動きを目指す「レバレッジ型」の投資信託を思い浮かべる方も多いかもしれません。レバレッジ型とは、先物取引などを活用して投資資金の2倍、3倍(商品によって異なります)の投資効果を追求する、ハイリスク・ハイリターン型の投資信託です。

 実は、このレバレッジ型は、為替を「フルヘッジ」(為替変動の影響をほぼ全面回避)するよう商品設計がなされています。

 例えば、「iFreeレバレッジ NASDAQ100」は、「日々の基準価額の値動きがNASDAQ100指数(米ドルベース)の値動きの2倍程度となること」を目指して運用を行いますが、為替変動の影響が基準価額に反映されてしまうと、「2倍」にならない可能性があります。

 そこで、為替をフルヘッジし、純粋に株価指数の値動きだけを基準価額に反映するようにしているのです。為替をフルヘッジするということはつまり、円安進行時に為替差益を享受できないということでもあります。

 加えて、足元のナスダック100指数の値動きは、「負の複利効果」が生まれやすく、レバレッジ型にとってはこの点も逆風です。(理由についてはこちらの記事をご参照)

 先ほどのグラフに、「iFreeレバレッジ NASDAQ100」を追加してみると、同じ「ナスダック100指数」関連のファンドでも、レバレッジ型のマイナス幅(▲39.8%)がいかに大きいかが分かります。レバレッジ型は、指数が一方向に動かないとリターンが出にくいのです。

NASDAQ100指数と関連ファンドの年初来リターン推移

※QUICK、NASDAQのデータを基に楽天証券経済研究所作成

結論:インデックス型で積み立てがリターン大

 とはいえ、ナスダック市場そのものには中長期的な成長期待という魅力があります。指数が今後どのように推移するかを予測するよりも、値動きの大きさを逆手に取り、レバレッジのかかっていないインデックス型ファンドで積み立てを行うのがよいでしょう。

 ちなみに、レバレッジ型と、レバレッジのかかっていないシンプルなインデックス型ファンドの直近1年間の積み立て効果(累積評価損益)を比較すると、以下のグラフのようになります。

月次積み立て時の累積評価損益の推移
2021年4月から2022年3月の月末最終営業日に毎月1万円を積み立てたと仮定

※QUICKのデータを基に楽天証券経済研究所作成

 レバレッジ型の方が理論上、基準価額の値動きが大きいので高い積み立て効果を期待できそうなイメージがありますが、指数自体が小さな上下を繰り返しながら下落傾向にある場合は、積み立て効果も期待できません。

 短期的な見通しを立てにくい足元のような相場環境の場合は、追加的なコスト(信託報酬)を負担してレバレッジ型を積み立てるよりも、シンプルなインデックス型ファンドの方がコストも安く、リターンを素直に享受できるでしょう。