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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「【日本株】米景気も息切れ?ナスダック急落 どうなる、日経平均?」
米景気にも失速リスク、ナスダック急落
4月最終週(25~28日)の日経平均株価は1週間で257円下がり、2万6,847円となりました。ただし、先週は東京市場が閉まった後、日本が祭日の4月29日(金)に米国株が急落しています。
下落率が特に大きかったのはグーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフトなどハイテク株比率の高いナスダック総合指数で、29日に▲4.2%の下落となりました。これを受け、日経平均にもさらなる下値のリスクが高まりました。
米ナスダック総合指数と、日経平均、NYダウ比較:2020年12月末~2022年4月末
ナスダックは、昨年10月以降、インフレ・ショック【注1】、ウクライナ・ショック【注2】によって下がってきました。先週は、それに加えGAFAMなど大型ハイテク株の成長が鈍化する不安が出て、株価の下げに拍車をかけました。
アマゾンが28日に発表した1-3月期決算で、純利益は▲38億4,400万ドル(約▲5,000億円)の赤字。先に発表済みのアルファベット(グーグルの親会社)1-3月決算では、ネット広告の成長鈍化が嫌気されました。
【注1】米インフレ・ショック
米インフレ率(CPI総合指数前年比)が8.5%(3月時点)と、約40年ぶりの高水準となったことを受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締めを急いでいます。5月4日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、0.5%の利上げと保有資産の縮小(量的な引き締め)が決定されるのがほぼ確実です。さらに6月14~15日のFOMCでも、連続して0.5%の利上げが行われる可能性があります。
【注2】ウクライナ・ショック
2月24日ロシアがウクライナに侵攻を開始したことが、世界の株安を加速させました。米欧日本などがロシアに経済制裁を実施。制裁を受けるロシアだけでなく、制裁する側の欧洲、日本などにもダメージが大きくなりつつあります。ロシアの主要輸出品である原油、ガス、穀物、パラジウムなどの供給不安から市況が高騰、世界のインフレを加速する懸念が高まりました。米欧日本のロシア事業停止・撤退の発表が続いていますが、それが撤退企業の巨額の損失につながるリスクも出ています。
米中景気に失速リスク
先週、さらにネガティブだったのは、米国、中国の景気失速懸念が出たことです。米商務省が発表した1-3月の実質GDP(国内総生産:速報値)は、前期比年率1.4%のマイナスでした。米景気が失速するリスクが意識されました。
米GDP成長率(実質成長率・前期比年率・季節調整済)
ただし、1-3月の米GDPがマイナスとなったのは、テクニカル要因が大きく、実態は強いとの見方もあります。マイナスに寄与したのが、輸入の急増と在庫の減少だったからです。米景気実態を最もよく表す個人消費は前期比年率+2.7%、設備投資は同+9.2%と強い内容でした。
米景気の実態が強いということは、企業業績にはプラスです。ただし、同時に金融政策にとってはネガティブです。1-3月のGDPがマイナスでも、実態は強いということがわかるので、FRBは急激な引き締めの方針を変えないと考えられるからです。
ただし、4-6月以降に米国の消費がさらに減速する可能性はあります。コロナ危機発生直後の2020年は、金融・財政政策の大盤振る舞いで景気悪化を食い止めましたが、今は、その大盤振る舞いができなくなっているからです。
FRBは引き締めを急いています。インフレが問題となる中で、大型の財政出動もやりにくくなっています。金融引き締めと財政のガケが年後半の米景気悪化につながるリスクに注意が必要です。
もう1つ、ネガティブなのは、中国景気の悪化懸念が出ていることです。ゼロ・コロナ政策を堅持している中国では、上海の都市封鎖(ロックダウン)がすでに1カ月を超えています。さらに、感染者が増えている北京にもロックダウンが広がる懸念が出ています。ロックダウンが中国景気にマイナス影響を与え始めています。
世界のGDP規模で1位の米国と2位の中国の減速が鮮明となれば、世界景気全体の失速につながります。今後の、米中の景気動向を慎重に見ていく必要があります。
日経平均に再び下値トライのリスクも
米インフレ&ウクライナ・ショックに加え、米中景気失速リスクも意識されるようになったことから、日経平均にはもう一度下値トライするリスクも出てきました。ここから、どのくらい下がる可能性があるでしょうか?私の考えを4月27日のレポートに書いていますので、そちらをご参照ください。
結論だけ再掲します。
【1】メインシナリオ:世界景気はかなり減速するものの景気後退には至らない
昨年来高値(3万670円)から2割程度の下落(2万4,500円前後への下げ)があり得る。ただし、それ以上は下げない。3月9日に一度2万4,717円まで下げているので、それで値幅調整は終わっている可能性もある。
【2】リスクシナリオ:今年の後半から来年にかけて世界景気は後退期に入る
昨年来高値から3割程度の下落(2万1,500円前後への下げ)があり得る。
上記は、日経平均の過去10年弱の動きを参考に考えたものです。日経平均は以下の通り、これまで急落・急騰を繰り返しながら上昇してきました。
日経平均推移:2012年末~2022年4月末
過去10年の間、日経平均は何度も急落しています。高値から安値まで20~30%くらいの下げが多いことがわかります。
【1】世界景気悪化を伴うと、下落率は3割に達することも
【2】世界景気の悪化を伴わないショック安は、20%くらいで済むことが多い
世界景気の悪化に加え、世界的な金融危機が起こる、つまり、2008年のリーマンショックのようなことが起こると、さらに下げが大きくなります。ただし、現時点でそうなる可能性は極めて低いと私は考えています。
「割安な日本株がさらに割安になり良い買い場となる」見方を継続
日本株は、平成時代の構造改革を経て、財務良好、収益基盤は堅固で、割安となっていると判断しています。割安な株がさらに売り込まれるリスクが出ているものの、そこは良い買い場となると判断しています。
最後に著書のご紹介です。マンガで解説する投資入門書を4月18日に主婦の友社から出版しました。以下の動画にて、紹介しています。
書籍紹介「クボッチ先生のやさしい投資入門」
▼著者おすすめのバックナンバー
2022年4月27日:リーマンショック再来はあるのか?忍びよる危機にどう備える?
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