10万円から始める高利回り株投資、スーパースクリーナーで銘柄選択

 日本株は、配当利回りから見て割安で、長期投資対象として魅力的と考えています。ただし、銘柄選択は大切です。1つの銘柄に集中投資するのではなく、予想配当利回りの高いなるべく多数の銘柄に、分散投資した方が良いと思います。

 そこで今日は、10万円以下で買える高配当利回り株をご紹介します。楽天証券ウェブサイトでは、さまざまな条件を指定して、その条件に合った銘柄をスクリーニング(抽出)する「スーパースクリーナー」というツールを提供しています。スーパースクリーナーの使い方は、以下をご参照ください。

「スーパースクリーナーを使った銘柄分析方法を動画で解説」

 今日は、スーパースクリーナーを使って選ぶ、10万円以下で投資できる高配当利回り株を、ご紹介します。以下の手順で絞り込みます。

【1】10万円以下で買える1,607銘柄を抽出

 まず、東証プライム、東証スタンダード、東証グロース、名証に上場する銘柄について、「投資金額10万円以下」の条件を指定すると、1,607銘柄が出てきます。この1,607銘柄が、2022年4月20日時点で、最小投資単位100株を買うのに必要な金額が10万円以下の銘柄です。

【2】予想配当利回り3.5%以上の83銘柄を抽出、証券業を除き79銘柄に絞り込み

 10万円以下で買える銘柄から、配当利回りが高いものを抽出します。「配当利回り(予想)が3.5%以上」という条件を加えると、銘柄数は、一気に83まで減ります。これが、10万円以下で買える高配当利回り株の候補となります。

 私は、コンプライアンス上の理由で、証券業に属する銘柄の投資判断を述べることができませんので、証券業に入る4社を除外します。すると、79銘柄が残ります。

【3】さらに時価総額が1,000億円以上、銘柄に絞り込む

 高配当利回り銘柄を選別する際、注意すべきことがあります。配当利回り(予想)は高ければ高いほど、良いというわけではないことです。なぜならば、株の配当利回りは、確定利回りではないからです。業績が悪化して、減配(1株当たり配当金を減らすこと)になり、株価が下がることもあります。

 したがって、上記リストから高配当利回りの投資銘柄を選ぶ時は、見かけ上の配当利回りの高さではなく、減配リスクが低いと判断される銘柄を選ぶべきです。

 減配リスクの低い銘柄にさらに絞りこむ方法は、いろいろあります。減配リスクが低い銘柄には、一般的に以下の特色があります。

◆時価総額が大きい
◆経常利益率が高い
◆自己資本比率が高い(借金が少ない)
◆景気の影響を受けにくい業種(ディフェンシブ株)
◆経営者が株主への利益配分に積極的

 すべてを満たす銘柄はありません。上記の1つか2つを満たせば十分と考えます。今日は、一番単純でわかりやすい「時価総額が大きい」(時価総額1,000億円以上)という条件で絞り込みます。

 その方法で絞り込むと、32銘柄が抽出されます。すべて東証プライム上場企業です。

10万円以下で買える、時価総額1,000億円以上、予想配当利回り3.5%以上の32銘柄

コード 銘柄名 配当
利回り
株価
4月20日
1株
当たり
配当金
1719 安藤・間 4.5% 890.0 40.0
1802 大林組 3.5% 903.0 32.0
1893 五洋建設 3.6% 634.0 23.0
1942 関電工 3.4% 816.0 28.0
3167 TOKAI HD 3.5% 866.0 30.0
3865 北越コーポレーション 3.6% 659.0 24.0
4005 住友化学 4.3% 560.0 24.0
4188 三菱ケミカルHD 3.8% 793.2 30.0
4202 ダイセル 4.1% 783.0 32.0
4902 コニカミノルタ 5.1% 505.0 26.0
5020 ENEOS HD 4.8% 458.9 22.0
5406 神戸製鋼所 5.1% 585.0 30.0
6178 日本郵政 5.5% 908.9 50.0
7167 めぶきFG 4.2% 265.0 11.0
7182 ゆうちょ銀行 4.8% 984.0 47.0
7186 コンコルディアFG 3.7% 486.0 18.0
7189 西日本FG HD 4.4% 792.0 35.0
7337 ひろぎんHD 3.7% 655.0 24.0
8306 三菱UFJ FG 3.6% 774.4 28.0
8308 りそなHD 3.7% 571.7 21.0
8334 群馬銀行 3.7% 378.0 14.0
8410 セブン銀行 4.5% 245.0 11.0
8418 山口FG 3.8% 737.0 28.0
8593 三菱HCキャピタル 4.4% 588.0 26.0
9069 センコーグループHD 3.8% 853.0 32.0
9412 スカパーJSAT HD 4.3% 416.0 18.0
9504 中国電力 4.5% 882.0 40.0
9506 東北電力 2.2% 741.0 16.0
9507 四国電力 3.8% 789.0 30.0
9508 九州電力 4.7% 843.0 40.0
9509 北海道電力 4.0% 505.0 20.0
9831 ヤマダHD 4.4% 380.0 16.9
出所:銘柄は楽天証券スーパースクリーナーで抽出、配当利回りは1株当たり年間配当金(会社予想)を4月20日株価で割って算出。配当予想を発表していないヤマダHDは、市場予想を使用。配当金と株価の単位は円

 上記のような配当利回りの高い銘柄群のリストを見る時の注意点です。配当利回りは確定利回りではありません。業績が悪化して減配になると利回りが下がるだけでなく、株価も大きく下がることがあります。したがって、スクリーニングで選んだ銘柄に、機械的に投資するのは得策とは言えません。なるべく減配リスクが低いと考えられる銘柄を選別すべきです。

 また、上記のようなリストを見ると、利回りが高いほど投資魅力が高いと考える方がいますが、そうではありません。利回りが高い銘柄ほど、潜在的な減配リスクが高いこともあるからです。相対的に利回りは低くても、財務内容が良好で収益基盤が堅固な銘柄を選んだほうが、長期的なパフォーマンスは良い結果になります。

私が投資してみたいと考える6銘柄

 配当利回りが高い銘柄には、将来、減配になるリスクもあるので、さらに絞り込む必要があります。私の眼で選んだ6銘柄は以下です。

 このリストで注目していただきたいのは、「今期増減益率 市場予想」の欄です。6銘柄ともすべて3月期決算企業ですので、今期というのは4月に始まったばかりの2023年3月期のことです。3銘柄が今期減益予想です。

筆者がファンドマネージャーならば買ってみたい6銘柄

コード 銘柄名 配当
利回り
今期
増減益率
市場予想
今期予想
PER
1893 五洋建設 3.6% +57.6% 8.5倍
4005 住友化学 4.3% ▲10.6% 6.9倍
5020 ENEOS HD 4.8% ▲61.0% 7.8倍
8306 三菱UFJ FG 3.6% ▲7.5% 9.2倍
9069 センコーグループHD 3.8% +8.4% 7.4倍
9412 スカパーJSAT HD 4.3% +3.0% 8.6倍
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成、今期とは2023年3月期のこと。「今期増減益率 市場予想」は、今期純利益(市場予想)を前期純利益(市場予想)と比較して計算した増減益率のこと、市場予想はQUICKコンセンサス予想を使用

 今期減益予想の3銘柄を含め、今期増減益の要因を簡単に説明します。なお、6銘柄とも現時点でまだ、前期(2022年3月期)決算も今期(2023年3月期)の業績(会社予想)も発表されていません。決算発表時に会社の考え方が分かりますが、本レポートでは市場予想に基づくプレビュー(事前の見解)を提供します。

【1】五洋建設(1893):今期純利益コンセンサスは+57.6%増益

 前期(2022年3月期)純利益は209億円から115億円(会社予想)へ大幅減益となった模様です。シンガポールの大型土木工事で工事損失が発生した他、複数の大型工事でコロナ禍にともなう工事の遅れが発生しました。今期は、大型工事の進捗が見込まれます。大型の工事損失は発生せず、大幅増益に転じる見込みです。

 建設土木業は、2020年までで1つのピークをつけて業績がスローダウンしてきています。今期は、資材高のマイナス効果もあり、建設土木株を積極的に買おうとする投資家が今あまりいないのは事実です。

 それでも、私が五洋建設を入れたのには、理由があります。最近、割安な建設土木株に対するTOB(公開買付)が増えてきたことです。海上土木や道路など、特殊分野で技術優位を持つ会社がターゲットになりやすいと思います。

 五洋建設が買収のターゲットになるとは全く考えていませんが、海上土木の最大手で海外工事で高い実績があり、株価は割安と考えられることから、高配当株として買っても良いと思いました。海上土木は、羽田空港の沖合展開が一巡していったん落ち込んだ状態ですが、中長期視点にたてば、これからやるべき案件が山積しており有望と判断しています。

【2】住友化学(4005):今期純利益コンセンサス▲10.6%減益

 電子材料・医薬品など高付加価値のスペシャリティケミカルの比率が高く、収益基盤は堅固です。ただし、石油化学の利益が不安定で、サウジで展開するペトロ・ラービグ社の収益力が低いことは懸念材料。

 前期の純利益は、460億円から1,400億円(会社予想)へ大幅増益となった模様です。ただし、前期の増益には一時的要因が含まれています。石油化学部門で、いわゆる在庫評価益が出ていることです。

 前期、原油・ナフサなど原料市況が高騰しましたが、当初は安値在庫を持っていたので原料高の影響をあまり受けません。安値在庫を持ったまま、化学製品の市況が高騰する恩恵を受けたため、大幅増益になりました。ただし、これは一時的要因です。安値在庫がなくなる今期は、原料高が直接ダメージとなります。一時的利益がなくなる分、減益が見込まれます。

【3】ENEOS HD(5020):今期純利益コンセンサス▲61.0%減益

 ENEOS(エネオス)というと、皆さんが思い浮かべるのは、ガソリンステーションかもしれません。ガソリン小売業は、同社のたくさんある事業の中の1つに過ぎません。同社はエネルギー総合企業で、川上(原油資源開発)から川下(石油製品)まで、一貫生産できる強みを持ちます。銅鉱山の経営も行っています。

 前期純利益は、1,139億円から4,900億円(会社予想)へ大幅増益となった模様です。ただし、前期の増益には一時的要因が含まれています。住友化学と同じ、いわゆる在庫評価益が出ています。石油精製業界は、70日分の原油在庫を保有する義務を課せられているので、原油価格が大きく上昇する時、在庫評価益がきわめて大きくなります。今期は在庫評価益がなくなることで大幅減益になる見込みです。

【4】三菱UFJ FG(8306):今期コンセンサス▲7.5%減益

 前期純利益は、7,770億円から1兆1,500億円程度(市場予想)へ大幅増益となった模様です。ただし、前期の増益には一時的要因が含まれています。前々期(2021年3月期)に大幅に積み増した貸倒引当金の一部に戻入益が発生したことです。コロナ禍で貸倒れが大幅に増える見通しを立てていましたが、実際の貸倒れは会社の見積もりよりも低水準でした。

 ただし、貸倒引当金の戻入は、前期の一時的要因で、今期はほとんど出なくなると予想されます。それが、減益要因となる可能性があります。

【5】センコーグループHD(9069):今期コンセンサス+8.4%増益

 総合物流業のセンコーの前期連結経常利益は15.2%増の256億円(会社予想)と、11期連続で経常最高益を更新した模様です。今期の経常利益(市場予想)は、前期比でさらに増益が見込まれ、12期連続の経常増益となる見込みです。

 コロナ禍でも物流は国内外で成長が続いています。前期は、燃料費増加の減益要因を、合理化と数量増でこなして最高益となった模様です。今期も物流の成長は続く見込みです。

【6】スカパーJSAT HD(9412):今期コンセンサス+3.0%増益

 スカパー(放送)事業は低採算で利益が不安定です。ただし、JSAT(衛星)事業が安定的に高収益を稼いでいます。衛星事業では昨年NTTと業務委託契約を締結し、持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙事業を行うと発表しています。

 成長性はあまり期待できませんが、安定的に収益を稼いでいく高配当利回り株として長期投資していく価値があると考えています。

 以上が、今期のざっくりとした見通しです。ただ、現時点でまだ前期決算も、今期の会社見通しも発表されていません。市場予想で今期減益が見込まれる銘柄は、決算が発表されて今期の会社見通しが発表された後に投資した方が良いかもしれません。

 ただし、今期減益とは言っても、減益を織り込んだ今期予想PERは10倍割れの低評価となる見込みです。今期減益は織り込み済みの可能性もあります。

 本コラムでは、これまで「10万円以下で買える」銘柄をピックアップするレポートを定期的に書いてきました。今回は正直、選ぶのに少し苦労しました。

 というのは、「10万円以下で買える」銘柄の常連で、私が高く評価していた、INPEX(1605)(4月20日株価1,651円)、双日(2768)(同株価2,032円)、丸紅(8002)(同株価1,480.5円)などが、株価が大幅に上昇して「10万円以下で買える」グループを卒業してしまったからです。INPEX、双日、丸紅は、現株価でもなお割安で投資魅力は高いと判断しています。

 最後に、著書発売のお知らせです。4月18日、主婦の友社より私の著書「クボッチ先生のやさしい投資入門」が発売されました。

 私にとって初めて、マンガで解説する投資入門書です。投資信託、ETF、日本株、米国株、成長株、割安株、NISA、iDeCo…、これから資産形成を始める人が知っておくべき内容を、ひと通りぎゅっと詰め込みました。ぜひ、ご参照ください。

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