★筆者が選ぶ10万円株は2ページ3ページ4ページに掲載しています。

投資家は常に「糸口」を探すもの

 日本株に限らず、グローバル株式市場はここまで、米金融政策が急速なタカ派傾向を示したこと(米インフレ加速)、ロシアのウクライナ侵攻による情勢の悪化と波乱続きでした。

 現時点で多くの個別銘柄は割安を示していると思われますが、懸念がまだ払拭(ふっしょく)されずにいることから、投資家は新たに買いに出ることに慎重な姿勢を崩していません。

 時折、外部環境の好転による買い戻しにより反発することはありますが、完全に反騰局面入りするまでには至っていない…というのがおおかたの認識だと思います。

 足元、3月期決算企業の本決算発表が進んでいますが、それについても今期強気見通しを示した企業よりも、慎重な見通しを示した企業の株価動向について、全体相場に悪影響がないかどうか投資家はまず関心を払っていると思われます。

 米金融政策にしても、ウクライナ緊張にしても、この時点ではすでに急に投資家を安心させることにはならないと考えておくべきでしょう。都合よく合図がされるわけではないのです。

 実はこのことについても投資家は十分に認識していると思います。そして、それでも株式市場は動いていくことから、必ずどこかに動意の糸口があり、それを探す構えであることにも変わりがないでしょう。

 好業績を継続する企業がそれに該当するかもしれませんし、足元の懸念事項の影響をほとんど受けない企業が見直されるかもしれません。また、消去法的な見方からディフェンシブセクターが選好されるかもしれません。

 ここでは、「直近年初来高値更新銘柄」に着目し、それらが足元強い動きをしている背景を見ていきたいと思います。年初来高値更新銘柄とは今年年初からここまでで、もっとも高い株価を付けた銘柄です。

 昨年来という意味では株価が低位にあるものもありますが、直近、高値を付けていることには変わりがありません。ここに目を付ける背景には「株式市場が(好材料に対して)先行して動く」という経験則があります。

年初来高値を更新しているコモディティETF

 直近で年初来高値を更新している銘柄でまず目に付くのは、実は「ETF(上場投資信託)」です。金、パラジウム、銅、大豆、トウモロコシ、天然ガスなどのコモディティに関連するETFが軒並み高値をつけています。

 世界的にインフレ傾向が表れていたところにウクライナ緊張が発生、モノの価格をさらに押し上げる格好になったことから高値を更新しているものです。

 これらも「10万円で投資可能な銘柄」です。この先さらにインフレが進行したり、地政学的リスクがさらに高まったときなどには一段高の可能性もあります。

10万円で投資可能なコモディティETF

 株価データは2022年4月19日終値ベース。

SPDRゴールド・シェア(1326)

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

純パラジウム上場信託(1543)

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

大豆上場投資信託(1697)

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

とうもろこし上場投資信託(1696)

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

天然ガス上場投資信託(1689)

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

株式市場が示す内需株の優位性

 個別銘柄を見ていくと、外食、小売り(EC含む)、医薬品、人材、非鉄金属、ゲーム、電力、通信などのセクターに位置する銘柄、「内需系銘柄」が多い印象です。

 この背景はやはり「コロナ禍からの消費活動再開期待」と考えられます。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は4月15日に通信社のインタビューで、「社会活動を完全に止めるようなオプションはないのではないか。対策は新しい局面に入った」とする見解を述べています。

 感染拡大の防止に重点を置く「まん延防止等重点措置」や「緊急事態宣言」の行動制限措置から、経済活動とのバランスを重視する対策に軸足を移す姿勢を明確にしたものと思われます。

 3月21日の期限で「まん延防止等重点措置」が解除されてから一定期間を経た発言だけに、重要な意味を持つものと思います。前段で「株式市場が先行して動く」と書きましたが、まさにその様子が直近年初来高値更新銘柄に表れているかもしれません。

 株式市場が示していることは、「内需株の優位性」です。ここでは直近で年初来高値を更新するなど強い動きをしている銘柄の中から、10万円で投資可能な銘柄を参考として取り上げます。

10万円で投資可能な内需株

 株価データは2022年4月19日終値ベース。

ジェーソン(3080・スタンダード)

 首都圏を地盤に低価格の飲料・加工食品・日用品のバラエティストアを展開しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

アイケイ(2722・プライム)

 カタログ通販会社で生協向けに強みを持ちます。テレビ通販「プライムダイレクト」も手掛けています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

イー・ロジット(9327・スタンダード)

 EC事業者の物流業務を代行する通販物流が主力です。2021年3月上場。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

コシダカホールディングス(2157・プライム)

「カラオケまねきねこ」、ひとりカラオケ「ワンカラ」も展開しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ネットプロテクションズホールディングス(7383・プライム)

 後払い決済の先駆的な企業で、美容・アパレルECに強みを持ちます。2021年12月上場。(注)この銘柄はいまだ年初来対高値を更新していないがジリ高傾向。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)