結論:これだけ覚えておいてください

 今日のレポート内容は、中・上級向けです。日経平均先物についてあまり詳しくない方は、以下の結論だけお読みください。

結論

◆3月29日までの日経平均先物(6月限)は、日経平均より約240円低い水準で推移する 先物が240円低くても、それは先安感を表すものではなく、理論値通りに値がついているだけである。たとえば、「前日のシカゴ(CME)日経平均先物の終値が25,000円」だったとすると、新しい相場変動要因がその後何も出なければ、「今日の日経平均は25,240円くらいでスタート」すると考えることができます。

◆3月30日以降、日経平均先物(6月限)は、日経平均とほぼ同値で推移するようになる
 たとえば、「前日のシカゴ(CME)日経平均先物の終値が25,000円」だったとすると、新しい相場変動要因がその後何も出なければ、「今日の日経平均は25,000円くらいでスタート」すると考えることができます。

 今日は、先物の値動きが上記のようになる理由を、解説します。「なぜ、そうなる?」まで、きちんと勉強したい方は、次ページ以降をお読みください。

日経平均先物の夜間取引は、翌日の日経平均を先取りすることもある

 朝、東京証券取引所が開く前に、「シカゴ日経平均先物が(前日の日経平均終値と比べて)大幅安」というニュースを聞くと、ヒヤリとします。その日の日経平均が大幅に下がって始まることが多いからです。

 逆に、「シカゴ(CME)日経平均先物が大幅高」と聞くと、期待が高まります。その日の日経平均が大幅に上昇して始まることが多いからです。

 通常、日経平均先物(期近)の理論値は、日経平均株価とほぼ同値です。したがって、「CME日経平均先物が、(前日の日経平均終値より)240円安い」と聞くと、「今日の日経平均は240円くらい下がって始まる可能性がある」と解釈する人が増えます。普通は、その解釈でOKです。

 例外として、3月11日(3月のSQ)から3月29日(3月の権利つき最終売買日)の間に日経平均先物(6月限)を見る場合だけ、見方が異なります。「約240円下でCME日経平均先物(6月限)の値がついていれば、当日の日経平均は上がりも下がりもしないで始まる可能性が高い」と解釈されます。

3月14日の日経平均先物(6月限)は、日経平均より約240円低い水準で推移

 百聞は一見にしかず。それでは、実際に3月14日の日経平均先物(6月限)の値動きを、日経平均と一緒にご覧ください。

日経平均と日経平均先物(6月限)の日中足:2022年3月14日9:00~15:00

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 ご覧いただくとわかる通り、株式現物と日経平均先物の売買が両方ともできる時間帯(9時11時30分、12時30分15時)、日経平均先物(12月限)は日経平均よりも常に約240円低い値がついています。

 これを見て、「日経平均先物(12月限)に日経平均の先安感が表れている」という誤った解釈をしないようにしてください。先物(6月限)は、理論値通りに値がついているだけです。

 3月の配当金の権利つき最終売買日である3月29日まで、この状況が続きます。ただし、配当金の権利落ち日である3月29日以降は、日経平均先物(6月限)は、日経平均とほぼ同値で推移するようになります。

これだけ覚えてください!2つのポイント

 少し難しくて、かりにくい話になっているかもしれません。難しい理屈はどうでもいいですが、とにかく、以下2つのポイントだけ、覚えてください。

 以下2点だけ頭に入れていただければ、後半の説明はやや難解ですが、からなくても問題ありません。

ポイント1

日経平均先物6月限の理論値は、3月29日までは、日経平均の値を約240円下回る。その間、先物が日経平均より240円低い水準にあっても、それは、先安感を表しているのではない。理論値通りに値がついているだけである。

ポイント2

日経平均先物6月限の理論値は、3月30日以降は、日経平均とほぼ同値となる。3月30日以降は、先物と日経平均は、ほぼ同じ価格で取引されることになる。

3月決算の配当金の権利落ち(予想額)は240円

 3月29日まで、日経平均先物(6月限)は、日経平均よりも約240円価値が低いわけです。その理由は、3月決算での配当金にあります。

 日経平均(現物)を保有していると、3月決算の配当金の権利落ち日(今年は3月30日)に、配当金を受け取る権利が確定します。ところが、日経平均先物(6月限)を買い建てしていても、3月配当金を受け取る権利は得られません。

 3月末基準の配当金は、約240円と予想されています。したがって、日経平均先物(6月限)は、日経平均(現物)よりも、240円低い値段が付くのです。

 ところが、3月30日以降は、日経平均と先物(6月限)は、ほぼ同値で売買されることになります。3月29日までに日経平均(現物)を買えば、3月末基準の配当金が得られますが、権利落ち日の3月30日以降に買っても、配当金は得られないからです。先物を持っていても、現物を持っていても、3月末基準の配当が得られないのは、同じです。

 したがって、3月30日6月9日(先物6月限の最終売買日)まで、日経平均先物(6月限)を保有しても、日経平均を保有しても、どちらも3月配当金が得られないという点で、同じになります。したがって、3月30日以降は、両者はほぼ同値で推移することになります。

<参考>日経平均先物(6月限)の理論値の計算方法

 詳しい説明は割愛します。概算値を出す計算式を掲載します。

(日経平均先物6月限理論値)=(日経平均の値)-(6月9日まで日経平均現物を保有することで得られる配当金予想額)+(日経平均現物を購入するのに必要な現金を6月9日まで短期金融市場で運用した時に得られる利息)

 現在、短期金利はほぼゼロなので、金利要因は無視しても大丈夫です。配当落ちは、3月が特に大きいです。9月や12月にもあります。

 東京市場の取引時間中は、日経平均先物が理論値から大きくかい離することはありません。かい離すれば、裁定取引が入り、先物は常に理論値の近くに維持されます。ただし、東京市場の現物取引時間が終了すると(15時以降)、日経平均先物は理論値から乖離(かいり)して動くようになります。裁定取引が入らないので、大引け後のニュースに反応して、日経平均の理論値から離れて動くわけです。

 今日の説明は、かりにくくてすみません。途中に掲載した「これだけ覚えてください!2つのポイント」だけ、頭に入れていただければOKです。

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2021年9月16日:日経平均先物を見る時の注意点:9月28日まで日経平均より約180円低い値で推移する