ドル/円相場の中期シナリオを考える上で、現在、興味深い現象が2つある。それは筆者の定点観測している「一目均衡表週足の雲」と「20カ月移動平均線」である。

ドル/円(週足)一目均衡表の雲がドル/円相場の抵抗帯


(出所:石原順)

3月26日のレポート「相場はテクニカル主導-絵で見る為替相場」で「ドル/円相場のこの先の大きな抵抗線は、一目均衡表の<週足の雲>である。過去のパターンから考えて、95円近辺からは上値が重くなるだろう」と述べたが、相場は4月2日の94円70銭を高値に現在反落している。

ドル/円は、4月8日現在、21日ボリンジャーバンド1σの内側で取引されており、14日ADXや26日標準偏差ボラティリティもピークアウトしかけている。したがって、筆者はドル/円の<日足ベースの取引ポジション>を現在持っていない。このあたりの“事情”は、ブログ「石原順の日々の泡」で取り上げているので、アーカイブを参照されたい。

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ


(出所:石原順)

話がいささか脱線するが、筆者のところには毎週のように多くのドル暴落観測レポートやユーロ危機のレポートが届いている。経済状況のリアルな実体を指摘しているものもあり、これらは“読み物”としては面白いのだが、相場の実践には使いにくい。『いつ(何時)』という観点がないからだ。ここにきて円高観測や円キャリートレード崩壊のレポートも増えてきている。大幅な円高やドル安は“いつか”実現するだろう。しかし、円高はもう少し先の話になるのではないかというのが、最近の筆者の感触である。その根拠は、米国債の金利がもちあいを離れ上に抜けた(=金利上昇)からだ。もちあいを離れた米国債金利は6月あたりまで上げ循環に入る確率が高い。

米10年国債金利(日足)もちあいを上離れる


(出所:石原順)

そうなると米国債金利と連動性の高いドル/円相場は、しばらく下方硬直性の相場展開となるだろう。金利観測から見た場合、ドル/円は6月頃までは押し目買いに分がありそうだ。

米・日10年国債金利差とドル/円相場(日足)

FFレートが上がる手前までの米金利上昇はドル買いか……?


(出所:石原順)

さて、筆者がドル相場の大局をみる上で一番注目しているのが「20カ月移動平均線」である。1月29日のレポート「通貨ファンドが注目するユーロ/ドルの20カ月移動平均線」でとりあげた「ユーロ/ドル」は、20カ月移動平均線を割り込んだ後、現在まで弱気相場が続いている。今月は「ドル/円」が相場のトレンドを決する20カ月移動平均線の攻防となっている。筆者は4月月足の終値でドル/円相場が20カ月移動平均線を上回れば6月に向けて100円トライの相場になるような気がしているが、はたしてどうだろうか?
(もちろん、20カ月移動平均線を上回ればストップ注文を置いてドル買いますが……)

ドル/円(月足)20カ月移動平均線(青)の攻防


(出所:石原順)

最後に、「豪ドル/円の相場見通し」に関しての質問が多いので、筆者の見方を述べておきたい。豪ドル/円はATRが上昇しない限り、押し目買い方針である。

豪ドル/円(週足) 豪ドル/円キャリーはATRが命綱

上段:相場のボラティリティ
中段:21週ボリンジャーバンド1σ
下段:20週ATR


(出所:石原順)

豪ドル/円(週足)88円から90円の抵抗は強そうだが……


(出所:石原順)

では、筆者がどこで押し目買いをするかというと9日RSIが売られすぎから反転し、同時に14日ADXがピークアウトしているポイントである。いつもうまくいくわけではないが、押し目買いのタイミングとして参考にしている。

豪ドル/円(日足)

上段:21日ボリンジャーバンド1σ
中段:14日ADX
下段:9日RSI
(ADXの上昇中は逆張りは厳禁)


参照:「石原順の日々の泡」 (出所:石原順)