今、コモディティ関連投信に注目する理由
本連載では過去数回にわたり、世界的な株価の調整について取り上げてきました。株式市場が調整色を強めている背景には、米国の金融政策の転換と、それに伴うインフレの高進という大きな要因があります。
さらに足元ではウクライナ情勢の緊迫化も重なり、株式市場の不安定さが増す一方、原油や金(ゴールド)などの商品(コモディティ)価格は上昇基調にあります。
コモディティとは、商品先物市場で取引されている、エネルギー、貴金属、穀物、農畜産物などの実物資産を指します。
投機的という印象をお持ちの方も多いかもしれませんが、物価の上昇とともに価値が上がる傾向にある実物資産は、実はインフレに強い資産と考えられています。
さらに、株式や債券といった伝統的資産とは異なる値動きをする傾向にあることから、分散投資の1パーツとして活用することもできます。
金(ゴールド)や原油を含むコモディティへの投資方法としては、商品先物やETF(上場投資信託)が一般的ですが、投資信託(ファンド)という選択肢もあります。
金(ゴールド)については過去に「投資信託で金(ゴールド)投資」を失敗しないための3つの重要ポイントで取り上げているのでそちらをご参照いただくとして、今回は、コモディティ全般に投資する投資信託について解説します。
コモディティ関連投資のリターンをチェック!
コモディティ全般に投資する投資信託は、楽天証券分類「その他商品市場-為替ヘッジ無し」と「その他商品市場-為替ヘッジ有り」の2分類で絞り込むことができます。
投信スーパーサーチを使って検索すると、「為替ヘッジ無し」は5本、「為替ヘッジ有り」は1本出てきます。
実は、金(ゴールド)関連投信と比べると、コモディティ関連投信は、投信間で運用成績のばらつきが短期的に大きくなる傾向にあります。
実際に、投信スーパーサーチで「その他商品市場-為替ヘッジ無し」を選択し、「リターン」タブから「6カ月リターン」の高い順に並べ替えると、最も高い「iシェアーズ コモディティインデックス・ファンド」と、最も低い「eMAXISプラス コモディティインデックス」で、20ポイント以上の差があることが分かります。(2022年2月18日時点)
この理由は、コモディティ関連の各投資信託が参照する指数(インデックス)の違いにあります。
下記の図は、「iシェアーズ コモディティインデックス・ファンド」がベンチマークに掲げるS&P GSCIトータルリターン指数と、「eMAXISプラス コモディティインデックス」がベンチマークに掲げるブルームバーグ商品指数トータルリターン指数の構成比率を円グラフにしたものです。
では、ここでクイズです。
コモディティ関連投信がベンチマークとする指数で、重要な商品は何?
答え:(原油を含む)エネルギー
世界の商品市況全体の値動きを表す代表的な指数は幾つかありますが、その中身=構成比率は指数によって異なります。
最大のポイントは、原油を含むエネルギーセクターの比率です。足元では、エネルギーセクターの比率が高い指数ほど原油価格上昇の恩恵を受けており、これが結果として高いリターンにつながっています。
「iシェアーズ コモディティインデックス・ファンド」がベンチマークに掲げるS&P GSCIトータルリターン指数は、エネルギーセクターの基本構成比率が約60%と、代表的な商品指数の中では最も高いという特徴があります。
一方、「eMAXISプラス コモディティインデックス」がベンチマークに掲げるブルームバーグ商品指数トータルリターン指数のエネルギーセクターの比率は約36%と、S&P GSCIトータルリターン指数ほどは高くありません。
ただし、エネルギーセクターの比率が高い指数と、それら指数への連動を目指す投資信託は、原油価格の影響を受けやすいため、コモディティ関連の投資信託の中でも基準価額の値動きが大きくなる傾向にあります。この点には注意した方がよいでしょう。
なお、金(ゴールド)関連の投資信託は、一部を除き、金現物取引の世界指標である「LBMA金価格」が金価格のベンチマーク・参考指数に掲げられています。コモディティほど指数にバリエーションがないため、運用成績のばらつきは大きくありません。
先述した通り、金(ゴールド)を含むコモディティ関連の投資信託は、あくまでも分散投資の1パーツであり、ポートフォリオの「脇役」的な存在です。
単体で「主役」級の高いリターンを期待するのではなく、株式や債券といった伝統的資産の補完的な役割、そして、分散効果による運用効率の向上に期待し、取り入れるようにしましょう。
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