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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
インフレショックで世界株安 3月にも米利上げ0.5%?

企業業績好調を好感し、日米とも株が反発したが・・・

 先週(2月7~10日)の日経平均株価は1週間で256円上昇し、2万7,696円となりました。ほぼ出そろった2021年10-12月決算が好調で、業績拡大への期待から、日経平均は上昇しました。

 ただ、先週金曜日(2月11日)は祝日で取引がありませんでした。もし、2月11日が営業日ならば日経平均はその日に大きく下落し、先週1週間でマイナスとなっていた可能性もあります。

 なぜならば、2月10日、東京市場がしまった後に発表された米国の1月のインフレ率がネガティブサプライズで、米国株が下落したからです。

 1月の米インフレ率(CPI総合指数前年比)は7.5%と事前予想7.2%を上回り、40年ぶり、第2次オイルショック以来の高いインフレ率でした。この高いインフレ率を受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)が一段とタカ派姿勢を強め、3月15-16日のFOMC(連邦公開市場委員会)で0.5%の利上げを行う可能性が高まりました。

 急激な金融引き締めへの懸念から、ナスダック総合指数を中心に、週末にかけて米国株は反落しました。先週1週間の下落率は、ナスダック総合指数が▲2.2%、S&P500が▲1.8%、NYダウが▲1.0%でした。

 これを受けて11日のシカゴ(CME)日経平均先物(3月限)は2万6,930円と、2月10日の日経平均よりも766円低い水準で引けています。

ナスダック総合、S&P500、NYダウと日経平均の動き比較:2020年1月6日~2022年2月11日

出所:2019年末を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 上のチャートを見るとわかる通り、金融引き締めに弱いGAFAM(グーグル、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフト)など大型ハイテク株比率の高い、ナスダック総合指数は、まだ調整が続く可能性があります。

 日本株は割安で、長期投資で買い増しの好機と思いますが、短期的には一段安となる可能性が残っています。

1月の米インフレ率は7.5%

 1月の米インフレ率は、第2次オイルショック後の1981年以来の高い水準となり、FRBが引き締めを急ぐのは必至の情勢となりました。

米インフレ率の推移

出所:米労働省

 引き続き、以下2つの要因が米インフレ高止まりを招いています。

【1】脱炭素インフレ:世界各国が脱炭素を目指し、化石燃料の開発・増産が進みにくくなる中で、需要が拡大し、供給不足→価格高騰を招いている。
【2】物流停滞:オミクロン感染拡大が物流産業の人手不足に拍車をかけ、物流の停滞から米小売店に消費が届かず、店頭から消費財が消えることで価格が上昇している。

 インフレが高止まりしていることを受けて、米長期金利は一時2%台に乗せました。

米長期金利の動き:2020年1月2日~2022年2月11日

出所:QUICK

金融相場から業績相場への移行期との見方を継続

 過去の景気過熱局面と比較すると、まだ米長期金利の水準は2%と低く、金利上昇だけで世界株安が一段と進む状況にはないと考えています。ただ、インフレが40年来の高水準に達したことを受け、金融市場のショックはもうしばらく続くと考えられます。

米長期金利とFF金利、NYダウの推移:2004年1月~2022年2月(11日)

出所:ブルームバーグより作成

 以下の景気局面分析において、当面、景気拡大「中期」が続くとの見方がメインシナリオです。一方、一気に景気過熱期に入るとの不安もあり、しばらくその不安が払しょくできない状況が続くと考えられます。

景気循環と、金利・株価循環の関係

出所:筆者作成

 

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