日経平均は3週間で1,200円以上の下落
先週末1月21日(金)の日経平均終値は2万7,522円となりました。前週末終値(2万8,124円)からは602円の下落、週足ベースでは3週連続の下落で、この期間の下げ幅合計は1,200円を超えています。
2022年相場に入って、週足での上昇はまだ見られない状況ではありますが、今週は日米の注目企業の決算が本格化する中で、FOMC(米連邦公開市場委員会)が控えるスケジュールとなっています。
先週の日米株式市場が大きく下落していることもあり、今週のイベント通過が「悪材料出尽くし」で反発となるのか、それとも「さらに下げが加速してしまうのか」を見極める難しい週になりそうです。
まずは、いつものように足元の状況から確認し、今後のシナリオについて考えていきたいと思います。
■(図1)日経平均(日足)とMACD(2022年1月21日取引終了時点)
あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、週初の17日(月)は前週末から反発してのスタートとなり、翌18日(火)の取引時間中には25日移動平均線を回復する場面もありましたが、上抜けすることができず、「リターン・ムーブ」のような格好で、その後は下げ幅を広げる展開となりました。下段のMACDも下向きの動きを続けています。
さらに、移動平均線について見ていくと、75日移動平均線が200日移動平均線を下抜けたことで、移動平均線の並びが上から200日・75日・25日・5日という順番になり、いわゆる売りの「パーフェクトオーダー」と呼ばれる、下げの意欲が強い格好になってしまいました。
2万7,500円付近が押し目買いの水準として意識される
それでも、週末にかけての日経平均は陽線が2本続くなど、一応の「粘り腰」も見せ、2万7,500円付近が押し目買いの株価水準として意識されているようです。この2万7,500円は前回のレポートでも紹介した「下値ゾーン」の範囲内です。
■(図2)日経平均(日足)の動き その2(2022年1月21日取引終了時点)
下値ゾーンとは、上の図2を見ても分かるように、昨年の日経平均が下げ止まった株価が集中している価格帯のことを指します。
先週の下落によって、日経平均は昨年8月下旬から形成してきた「三角もちあい」を下放れしてしまいました。
この下値ゾーン内で踏みとどまることができれば、相場の持ち直しが期待できる一方、下値ゾーンを抜けてしまうと、今度は昨年2月16日の高値を起点とする、下向きのチャネルラインの範囲内に足を踏み入れることになり、もう一段階、株価水準を引き下げるシナリオが濃厚となります。
仮に、今週もこのまま株価が下げてしまった場合の目先の下値メドについては、前回紹介したエンベロープが参考になりそうです(下の図3)。
■(図3)日経平均(日足)のエンベロープ(25日移動平均線)(2022年1月21日時点)
ここ数年の日経平均の値動きの特徴として、普段は25日移動平均線からプラスマイナス3%の範囲内で動くことが多く、相場が大きく動く局面では、その範囲がプラスマイナス6%あたりまで拡大するという傾向があります。
上の図3のように、直近1年間でみても同様の傾向が読み取れます。
先週末21日(金)時点の25日移動平均線の値が2万8,506円でしたので、現時点でマイナス6%まで下げが進んだ場合の株価は2万6,795円となります。もちろん、この値は日々変化していきます。
前回のレポートでは、「米国の金融政策の正常化をめぐる要人発言に振り回される状況が一服するため、株価は反発しやすい展開になりそう」、「少なくとも米長期金利が1.8%超えを目指すような動きにならない限り、金融市場はいったん落ち着きを取り戻しそう」としていましたが、先週の値動きとチャートの形状を見る限りその結果はこうした想定とは反対のものとなってしまいました。
米国株も大きく下落。短期反発ねらいなら押し目買いのチャンス?
とりわけ、米長期金利については、1.9%台に乗せる場面があるなど、急ピッチな米金融正常化による「オーバーキル(過度な引き締めがもたらす景気後退懸念)」の警戒が思っていたよりも高まっている印象です。
実際に、米国株市場も週間でNYダウ(ダウ工業株30種平均)が4.58%安、S&P500が5.68%安、NASDAQが7.55%安と大きく下落しています。
■(図4)NYダウ(日足)の動き(2022年1月21日取引終了時点)
NYダウは、1月5日の最高値更新後に伸び悩んでいましたが、先週になって50日移動平均線を下抜けしてから一気に下げ足を速めました。同様の傾向は昨年11月8日に高値を更新した時にも見られました。
しかも、それぞれの下値がほぼ1本のラインで結ぶことができますので、足元で株価が反発する期待感が残されています。
ただし、できるだけ早い段階で50日・25日移動平均線を回復する必要があるほか、この2本の移動平均線が下向きとなっているため、「とりあえず、移動平均線までの戻りはありそうだが、その後の株価の戻りが長続きしないかも」ぐらいの展開を想定しておくのが無難かもしれません。
NYダウについては、中長期的にも踏ん張りどころに差し掛かっています。
■(図5)米NYダウ(週足)の動き(2022年1月21日取引終了時点)
NYダウを週足チャートで見ると、先週のローソク足が大きな陰線を形成し、13週・26週・52週の移動平均線を跨ぐ、「3本下抜け」の格好となっていて、下方向の意識を強めています。
チャートを過去にさかのぼると、2020年の10月末にも3本下抜けの場面がありましたが、当時は翌週の株価が大きく反発して、それぞれの移動平均線水準を回復したため、相場の上昇トレンドが継続する展開となりました。
今回も同様の展開となるのが理想ですが、回復までに時間がかかったり、移動平均線が抵抗(レジスタンス)として機能してしまうと、中長期的な株価の下落トレンドを描き始めるシナリオが浮上することになってしまいますので、株価が反発した時の勢いも試されることになります。
そのため、短期反発ねらいであれば、押し目買いのチャンスと捉えることもできそうですが、反発後に再び下落に転じる可能性も低くはなく、中長期の投資スタンスならば、慌てずにいったん買いを見送るのもアリかもしれません。
今週はFOMCと企業決算にらみの展開に
また、冒頭でも触れましたが、今週はFOMCと企業決算にらみの展開となります。
まず、FOMC(25~26日開催)では、「FRB(米連邦準備制度理事会)に逆らうな」という相場格言が意識されやすい環境下で、金融政策の正常化に向けたタカ派姿勢の強さ(利上げ回数や利幅、QT[金融引き締め]開始時期などの議論の内容)と、それらに対する市場の織り込み度合いを確認しながらの値動きが焦点になります。
続いて企業決算については、金融相場から業績相場への移行が進む中で、米国のグロース(成長)株の代表格である、アップルやマイクロソフト、テスラなどが決算を発表します。
■(図6)アップル(日足)の動き(2022年1月21日取引終了時点)
とりわけアップル株については、年始に上場来高値を更新し、時価総額が一時3兆ドルを突破したことが話題となっていましたが、そのわずか2週間後には高値から10%以上下落しているほか、25日移動平均線は跳ね返されるリターン・ムーブの動きとなって、50日移動平均線も下抜けるなど、ムードをかなり悪化させています。
国内外の市場に対する影響力を踏まえると、同社の決算発表に対する市場の反応が今週のヤマ場となりそうです。
ちなみに、日本国内では日本電産やファナック、アドバンテスト、信越化学、KDDI、キヤノン、OLCなどの決算が予定されています。
米小型株の動向を確認。金融引き締めの影響はどう出る?
最後に、個人的に気になっているのが、米国の小型株の動向です。FRBの金融引き締めの影響が大型株に比べて中小型株の方が大きく出やすいとされているためです。
■(図7)米ラッセル2000(日足)の動き(2022年1月21日取引終了時点)
上の図7は米国の代表的な小型株指数であるラッセル2000の日足チャートです。先週の値動きによって、これまでサポートとして機能していた2,100pの節目を割り込んだほか、50日と200日移動平均線の「デッド・クロス」が出現しています。
特に、このデッド・クロスについては、過去の出現状況をさかのぼると、2020年春のコロナショックの時、前回の米金融政策引き締め終盤の2018年秋、そして2015年夏のチャイナ・ショック時など、株価が大きな調整局面を迎えた場面となっています。必ずしも歴史が繰り返すというわけではありませんが、頭の片隅に置いておいた方が良いかもしれません。
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。