2021年は米国株が主役!指数連動のインデックスファンドが人気

 2021年はとにもかくにも米国株が主役の1年でした。日本株も日経平均株価が一時3万円を回復するなど奮闘しましたが、振り返ってみれば、年間の上昇率はTOPIX(東証株価指数)が10%、日経平均が5%と、米国株と比べると物足りなさを感じる水準にとどまりました。

 米国の代表的な株価指数の年間上昇率は、多くの機関投資家が指標とするS&P500種株価指数と、ハイテク株比率が大きいナスダック総合株価指数がともに約27%、ダウ工業株30種平均が19%を記録。投資信託の世界では、各指数への連動を目指すインデックスファンドも人気を集めました。

 さて、この時点で「あれ? なんか物足りない…?」と思った方は勘がいいです。

 S&P500、ナスダック、ダウ平均、それぞれの指数への連動を目指すインデックスファンドを保有している方は、もっと高いリターンを獲得できているという感覚をおもちかもしれません。

 ではここで、代表的なインデックスファンドについて、2021年の運用成績を確認してみましょう。

指数 ファンド名 運用会社名 ファンド1年間騰落率(%) 指数1年間騰落率(%)
S&P500指数 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 三菱UFJ国際 44.5% 26.9%
iFree S&P500インデックス 大和 44.3%
米国株式インデックス・ファンド ステート 44.0%
ナスダック100 iFreeNEXT NASDAQ100インデックス 大和 42.8% 26.6%
インデックスファンドNASDAQ100(アメリカ株式) 日興 42.7%
NZAM・ベータ NASDAQ100 農中全共連 42.0%
NYダウ SMTAMダウ・ジョーンズ インデックスファンド 三井住友TAM 34.9% 18.7%
iFree NYダウ・インデックス 大和 35.5%
eMAXIS NYダウインデックス 三菱UFJ国際 34.9%
※QUICK、ブルームバーグなどのデータを基に楽天証券経済研究所作成。
データはすべて2021年12月末時点。

 インデックスファンドは指数との連動を目指すファンドですが、表にあげた各指数とインデックスファンドの騰落率(上昇率)を比べると、15ポイント以上の差があることが分かります。

 ここでクイズです。

問題表中の各指数とインデックスファンドで、騰落率に差があるのは、一体何が影響しているでしょうか。

米国株価指数とインデックスファンド、騰落率の差に影響しているのは?

答え:為替変動

 好調に推移する株式市場の影に隠れてあまり強調されませんでしたが、実は、2021年は円安ドル高が進みました。米ドルが日本円に対して10%以上上昇し、1ドル103円台から115円台になりました。

 円が各国通貨に対して下落する円安の進行は、外貨建て資産に投資するファンドにはプラスに作用します。為替の変動率がそっくりそのまま投資信託の運用成績として反映されるわけではありませんが、2021年に関しては、円安進行によって、ファンドの基準価額と運用成績が押し上げられました。

 言い換えれば、米国の投資家が現地通貨の米ドルで各指数に投資するよりも、日本の投資家の方が為替差益を得られた分、有利だったということです。

 ちなみに、2020年は、米ドルが日本円に対して5%下落する、円高ドル安の状態でした。2020年も、S&P500指数やナスダック指数は2桁台の上昇率を記録していましたが、2021年とは逆で、円高の進行が、ファンドの基準価額と運用成績を押し下げました。

 このように、外貨建て資産を組み入れた投資信託は、「為替ヘッジあり」のタイプを選択しない限り、原則として為替変動の影響を受けます。また、この為替変動が投資信託の基準価額に与える影響は、インデックス型に限らず、アクティブ型でも同じように作用します。

 ただし、アクティブ型は、銘柄選定や投資配分の面で柔軟な対応が可能なため、インデックス型ほど直接的に為替変動の影響が表れません。

 米国株式市場は2022年も引き続き強気の見通しが目立ちますが、2021年のインデックスファンドの好成績は、株式市場の上昇だけでなく円安進行による押し上げ効果も大きかったということを、今一度認識しておいた方がよいでしょう。

※為替ヘッジについて、詳しくは「失敗しない投資信託選び:為替ヘッジあり・なしってどういうこと?」の記事をご参照