日経平均は2週連続下落、2万8,000円水準で下げ渋る

 先週末12月3日(金)の日経平均は2万8,029円で取引を終えました。前週末終値(2万8,751円)比では722円安、週足ベースでも2週連続の下落となりました。

 新型コロナウイルスの新たな変異株(オミクロン株)の登場によって揺さぶられた国内外の株式市場ですが、日経平均もここ2週間のあいだに1,716円ほど下げたことになります。

 これから詳しく見ていきますが、不安を先取りした株価の下落が落ち着きを見せつつあり、戻りをうかがう兆しがある一方、今週の国内株市場は週末にメジャーSQ(特別清算指数)、翌週にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が控えており、需給面や米金利の動向にも気を配る必要があります。そのため、今週は年末株高への正念場となるかもしれません。

 まずは、いつもの通り、先週の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2021年12月3日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、「月またぎ」となった前半(11月)と後半(12月)とで印象が変わる展開となりました。

 前半の11月29日(月)と30日(火)については、ともに陰線で売りが優勢でした。29日(月)は戻りを試す場面がありながらも売りに押されて長い上ヒゲをつけ、翌30日(火)も、前日比で大きく値を上げてスタートするも、結局は節目の2万8,000円台を下回ってしまいました。

 ただ、12月に入った週末にかけては下げ渋りを見せ始めた印象となりました。2万8,000円台を下回ったところでは買いが入り、1日(水)から3日(金)まで陽線が並びました。そして、何とかその2万8,000円台を回復して1週間の取引を終えています。

 先週の日経平均は、前週にサポートとして期待されていた主要な移動平均線(25日・75日・200日)を下抜けてしまったことで、下値を探る展開となりましたが、節目の2万8,000円水準で下げ渋りを見せています。

 また、現在の株価は、年初来高値を更新した9月14日を起点とした「上値ライン」と、その前に年初来安値をつけていた8月20日を起点とした「下値ライン」が交差するところに位置しています。とりわけ、下値ラインがサポートとして機能していることは前向きに捉えて良いと思われます。

年末株高の可能性は残る

 もちろん、冒頭でも触れたように、今週末にメジャーSQが控えていますので、株価の下振れシナリオもくすぶっています。いわゆるSQ前の日経平均の値動きは、オプション取引において比較的売買が多いとされる「権利行使価格250円刻み」が意識されやすい傾向があります。

 つまり、今週の日経平均は、先週末終値に近い2万8,000円を基準にして、上方向であれば、2万8,250円や2万8,500円、下方向であれば、2万7,750円や2万7,500円といった具合に250円刻みで株価水準が上下しやすいということになります。

 先週の日経平均は2万7,588円の安値をつけた場面があり、これが「値覚え」となって、2万7,500円あたりまで再び下落することも考えられますが、この株価水準で下げ止まることができれば、年末にかけての株高シナリオの可能性は高まりそうです。

■(図2)日経平均(日足)の動き その2(2021年12月3日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 というのも、上の図2を見ても分かるように、日経平均の2万7,500円は「下値ゾーン」の上限あたりの水準です。さらに、「三角もちあい」の下限の線や、「下向きのチャネルライン」の上限の線とも重なっており、チャートの「クロスロード(交差点)」のような格好となっていて、次の展開待ちの様相を強めています。

 仮に、今週の株価が下向きのチャネルラインの範囲内に入ったとしても、下値ゾーンを下抜けない限りは株価反発への意欲は保たれると思われます。

 ちなみに下値ゾーンの下限は、図2のチャートの左端、つまりちょうど一年前の今ごろに株価がもみ合っていた2万6,800円あたりです。となると、2万7,000円割れの場面があっても想定内ということになります。

TOPIXも下値が堅い

 また、「下値の堅さ」という点はTOPIX(東証株価指数)の値動きからも読み取れます。

■(図3)TOPIX(日足)の動き(2021年12月3日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のTOPIXも日経平均と同様に、主要な移動平均線を下抜けてしまい、チャートのクロスロード(交差点)状態となっていますが、日経平均とは微妙な違いがあります。

 まず、TOPIXには日経平均のような下値ゾーンはなく、とりあえず1,900pが下値の目安ラインとして意識されそうです。また、下向きのチャネルラインの上限の線と、9月14日を起点とする上値ラインとで「下方ウェッジ」を形成しているようにも見えます。

 前回のレポートでは「上方ウェッジ」の下放れについて解説しましたが、下方ウェッジについては、上方向への意識が強い形状です。

 さらに、チャートを過去にさかのぼって安値をつけた場面について見ていくと、8月20日、5月13日、1月19日と、図2の日経平均と日付が一致していることが分かります。

 日付が経過するたびに安値が切り下がっていた日経平均に対して、TOPIXの安値は切り上がっており、長期の下値ラインとして、一本の直線で結ぶことができます。そのため、中長期的には日経平均よりもTOPIXの方が下値は堅そうな印象になっています。

今週の注意点1:需給的な上値の重さ

 繰り返しになりますが、今週の国内株市場は、週末に控えるメジャーSQを意識しながらの相場地合いとなります。

 また、国内外の金融市場を揺るがしてきた、新型コロナウイルスの変異株(オミクロン株)についても、引き続きニュースのヘッドラインや感染の拡大状況などに一喜一憂すると思われますが、「感染力は強いものの重症化リスクが低いのではないか」など、まだ不確定要素がありながらも、不安を先取りする材料としての威力は弱まりつつあるような雰囲気も漂っています。

 変異株の感染爆発など、状況の著しい悪化がない限り、今週の株式市場は戻りを試すというのが基本的なシナリオになりそうです。

 ただし、注意が必要な点も2つあります。

 その1つ目は前回のレポートでも紹介した、需給的な上値の重たさです。

■(図4)信用買い残高と日経平均(週足)の動き

出所:MARKETSPEEDⅡおよび取引所公表データを元に筆者作成

 上の図4は信用買い残高と日経平均(週足)の推移を表したものです。

 信用買い残の元データである取引所の「信用取引現在高」は、前週末時点の状況が翌週の第2営業日(火曜日)の16時を目安に公表されますので、上の図4に示されているのは、先週30日(火)に公表された11月26日週末時点の状況ということになります。

 この週の日経平均は994円下げていましたが、信用買い残は26日時点で約3兆7,400億円と、前回(11月19日時点の3兆5,790億円)から増加し、2018年3月2日時点の残高(3兆6,160億円)も超えてきました。

 つまり、株価が下落する中で、買い向かう動きが多かったことがうかがえます。

 となると、前回と同様に、株価が反発したとしても、戻り待ち売りが出やすく、株価がさらに下落していく場合には、投げ売りが出て、下落を加速させてしまう展開を想定しておく必要があります。

 先週末(12月3日時点)の買い残高は今週の7日(火)に発表されますが、図1でも見てきたように、先週の日経平均は2万8,000円割れまで下げた後に下げ渋る動きとなっています。

 先週の展開で積み上がった買い残がある程度整理されていることが確認できれば、株価の戻りに弾みがつくかもしれません。メジャーSQを控える週だけに需給要因は要チェックです。

今週の注意点2:FOMCと米CPI公表

 そして、2つ目の注意点は、来週の14日から15日にかけてFOMCが予定されていることです。

 先週の30日(火)にパウエル米FRB(米連邦準備制度理事会)議長が議会証言で「テーパリングを2~3カ月早く終えるのを検討するのが適切」と発言したことをきっかけに米株市場の下落が加速する場面があったため、株式市場はコロナ以外に、物価や金利の動向にも敏感に反応しやすくなっている点は意識しておく必要があります。

 FOMCで金融引き締めの是非について議論されることになるため、今週は様子見ムードを予想する見方も多くなっていますが、メジャーSQと同じ今週10日(金)に公表される米11月CPI(消費者物価指数)が注目されます。

 CPIについてはここ数カ月間、前年比からの伸びが強い状況が続いており、先月11月8日に史上最高値を更新していたNYダウ(ダウ工業株30種平均)が調整局面入りしたきっかけが、直後に公表された前回のCPIでした(下の図5)。

■(図5)NYダウ(日足)の動き(2021年12月3日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 実際にチャートを見ても、前回のCPI発表後にNYダウが下落基調を強めていたことが分かります。

 先週のNYダウは200日移動平均線を下抜け、9月から10月にかけて株価が底打ちした3万4,000ドルの株価水準でひとまず反発している状況ですが、今回のCPIの結果次第では、FOMCを前に株価が大きく動き出す可能性があります。

 したがって、今週は、コロナ変異株やインフレ警戒、メジャーSQの「三つどもえ」で株価の方向感を探る展開が見込まれ、チャート的にも市場環境的にも年末株高に向けた正念場の週になりそうです。