世界の株式市場は「業績相場」に移行しつつある
米国市場では、前週末に下院議会が総額1兆ドル(約113兆円)の「インフラ投資法案」を可決したことが好材料となり、8日にS&P500種指数、NYダウ(ダウ工業株30種平均)、ナスダック総合指数は過去最高値を更新しました。
ただ、9日は利益確定売りが先行して反落。10日に発表されたCPI(消費者物価指数)の前年同月比が+6.2%と市場予想を上回ったことで、インフレ警戒感と早期利上げ観測が広まり、株式は続落を余儀なくされました。ただ、好調な業績が株式の堅調を支えている状況に変わりはありません。
図表1は、MSCI株価指数をベースにした「12カ月先予想EPS(1株当たり利益)」の推移を2007年以降で比較したものです。
2008年の金融危機で業績見通しが急速に落ち込んだ局面と同様、2020年春のコロナショックで急減少した予想EPSは、大規模な金融緩和、積極的な財政出動、コロナ感染の収束傾向を受け改善傾向をたどっています。
特に米国の業績拡大は顕著で、予想EPSの前年同期比伸びは+34.3%となっています。米国市場を中心に、「金融相場(流動性相場)」から「業績相場」への移行を示す状況となっています。
こうしたなか、日本株式は中国の不動産バブル調整と景気鈍化懸念に上値を抑えられる動きとなっています。
ただ、国内の感染収束と決算発表で業績見通しが改善するに連れ、日本株にも「年末高」の機会が訪れると予想しています。本稿では株価のモメンタム(勢い)に乗るシンプルな投資戦略をご紹介したいと思います。
<図表1:世界の業績見通し:米国を中心に予想EPSが拡大傾向>
10月初来でモメンタム(勢い)が強い米国株銘柄は?
本年もいよいよ年末が近づいています。例年の傾向である「年末高」に乗りたいような短期決戦を想定する場合、どのような銘柄を選別するのが得策でしょうか。本稿では、米国株式を例にとり、ユニバース(銘柄母集団)を大型株(S&P100種指数構成銘柄)に限定。
4Q(第4四半期)入りしてからの、ベストパフォーマー(10月初来騰落率の上位15銘柄)を図表2で一覧しました。参考までに、S&P500指数の10月初来騰落率は+7.9%となっています。「株価の相対的なモメンタム(勢い)に乗る」シンプルな投資戦略です。
結果として、最近までS&P500指数の高値更新をリードしてきた銘柄群が上位を構成しています。半導体世界最大手のエヌビディア(NVDA)やEVメーカー世界最大手のテスラ(TSLA)が1位と2位に浮上。
これら2銘柄は、すでに時価総額がGAFAM(時価総額で100兆円以上の大手IT銘柄群)に迫る増勢を示している高成長期待銘柄です。
一方、自動車のフォード・モーター(F)の株価が約20年ぶりに20ドルを上回ったことも注目されています。フォードはEVへの取り組みに加え、半導体不足をうまく乗り切っている経営戦略が評価され、年初来騰落率は+120.3%とテスラ(同+51.3%)を大きく上回っています。
テスラの予想PERが174.1倍であるのに対し、フォードは10.3倍と割安感があります。クアルコム(QCOM)はスマホや自動車向けの半導体に強みがあり業績が好調でありながら予想PERは15.6倍にとどまっています。複数銘柄をピックアップして分散投資したいと思います。
<図表2:米国大型株のパフォーマンス「ベスト15銘柄」>
日本株で10月初来のモメンタムが強い銘柄は?
一方、国内株式についてもユニバース(銘柄母集団)を大型株(TOPIX[東証株価指数]100指数構成銘柄)に限定し、10月初来のベストパフォーマー(騰落率上位15銘柄)を図表3で一覧しました。
格言でも、「Trend is your friend」(トレンドは友)とあります。参考までに、TOPIXの10月来騰落率は▲1.1%です(10日)。
そうしたなか、騰落率1位はリクルートホールディングス(6098)でした。6位のZホールディングス(4689)と同様、DX関連の有望銘柄として注目されています。2位の日産自動車(7201)は、市場予想を大幅に上回る決算が評価されました。
3位の東京エレクトロン(8035)は業績が好調です。米国市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が連日で最高値を更新したことが示すように、半導体の需要は世界的に旺盛で、高い技術力と国際競争力を持つ半導体製造装置メーカーとして注目されています。
4位の小松製作所(6301)はインフラ関連銘柄として有望視されています。バイデン政権が実行しようとしている「インフラ投資法案」から恩恵を受ける可能性が高い企業と考えられています。
また、業績の好調が続くソニーグループ(6758)も注目です。さらに、資源高が追い風となっている丸紅(8002)や住友金属鉱山(5713)も相対的な低PERに対する市場の評価が高まっています。日本株についても、複数銘柄への分散投資で取り組みたいと思います。
<図表3:国内大型株のパフォーマンス「ベスト15銘柄」>
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