日経平均は下落から持ち直す。上方向への期待感が優勢

 先週末11月12日(金)の日経平均株価終値は2万9,609円となり、前週末終値(2万9,611円)からは2円安と、ほぼ横ばいで取引を終えました。

 確かに、週末の終値同士を比べれば、値を保ったと言えますが、週間の値動きは、「下落してから戻す」という展開でした。

 前回のレポートでは、チャートの形状から上方向への意識の強さが感じられたことから、株高のシナリオを想定していたことを踏まえると、「何だよ、全然上昇していないじゃん」とお叱りを受ける展開となってしまいました。

 とはいえ、上方向への意識が弱くなってしまったわけでもなさそうです。11月相場も中盤に入り、米クリスマス商戦からの年末相場ムードに差し掛かるタイミングの中、日経平均3万円超えをうかがう意欲は保たれているのでしょうか?

 まずはいつもの通り、足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2021年11月12日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 冒頭でも触れた通り、先週の日経平均は「下落から持ち直す」動きとなりました。「上昇から失速」だった先々週の値動きとは正反対となり、結果的に、ここ2週間のあいだ、2万9,500円をはさんだもみ合いが続いたことになります。

 一般的に、もみ合い(もちあい)相場は「抜けた方向に動き出す」とされていますが、先週の日経平均の安値(11日の2万9,040円)が2万9,000円台を維持したことや、25日移動平均線がサポートとなったこと、下段のMACDもシグナルとの下抜けクロスを回避したことなどを考えると、下方向よりも上方向への期待感の方が優勢と見ることができます。

 しかも、ローソク足の並びを確認すると、10日(水)まで陰線が5本続くという良くない状況にもかかわらず、株価の節目や移動平均線を維持できたことも心理的にプラスに働きそうです。

 そのため、日経平均がもみ合いの上限となっている11月4日の高値(2万9,880円)を超えてくると、あっさり3万円台に乗せる展開も考えられます。

 また、日経平均の値動きは、ギャン・アングルでもざっくりとした値動きの方向性を掴むことができます。

■(図2)日経平均(日足)のギャン・アングル(2021年11月12日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図2は、8月20日の年初来安値から、9月14日の年初来高値更新時を起点とした、水色の上昇ギャン・アングルと、そこから10月6日の直近安値を起点とする、黄緑色の下降ギャン・アングルを描いています。

 10月6日以降の日経平均ですが、水色の上昇ギャン・アングルの4×1ラインまで上昇した後、黄緑色の下降ギャン・アングルの線を意識したもみ合いが続き、再び上昇ギャン・アングルの4×1ラインまで上昇して、その後下降ギャン・アングルの8×1ラインに沿ってもみ合っているという状況です。

 同じリズムが繰り返されるのであれば、上昇ギャン・アングルの4×1ラインをトライする展開が想定されます。

TOPIXは上値ラインの攻防が目立つ

 先週のTOPIX(東証株価指数)についても見ていくと、日経平均と同様に「下落してから戻す」という展開だったのですが、こちらは「上値ラインの攻防」という注目点があります(下の図3)。

■(図3)TOPIX(日足)の動き(2021年11月12日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 11月に入ってからのTOPIXは、9月14日からの直近高値同士を結んだ上値ラインから上放れできないという状況が続いており、先週末12日(金)もこの上値ライン付近で取引を終えています。

 このラインを突破できれば、図2でも確認した、水色の上昇ギャン・アングルの4×1ラインまでの上昇も見えてきます。

 図1のレンジをはじめ、図2のギャン・アングルのライン、図3の上値ラインなど、足元の日経平均やTOPIXは、いわゆる「節目」とされるところで、株価がもみ合っている状況が目立っています。

節目の突破パターン

■(図4)株価の節目突破について

 一般的には、こうした節目を「どのように突破するか」によって、その後の株価の動きに少なからず影響を与えるとされています。上の図4はその節目の突破パターンをざっくりまとめたものです。

 前回のレポートでは、「リターン・ムーブ」型を期待させる格好のチャートが多く、それが強気のシナリオを描く理由の1つとなっていたのですが、先週の値動きによって、「もみ合って突破」型が増え始めており、先週に比べ強気のトーンはややダウンしている状況と言えます。

 もちろん、強気の見方自体は維持して良いと考えますが、しばらくもみ合いが続いてしまう展開や、下げに転じてしまう展開についても、ある程度、想定しておく必要が出てきたと思われます。

米国株は今週も下げを見せる可能性あり

 そして最後に、前回のレポートでも指摘した、日米株式市場のギャップについても考えていきたいと思います。

 先週の米株市場は、主要3指数(NYダウ[ダウ工業株30種平均]・NASDAQ・S&P500種指数)が最高値圏から下落する場面が目立ち、「好調な米株に対して、腰が重い日本株」という構図が一服した格好です。

■(図5)NYダウ(日足)のボリンジャーバンドとRCI(2021年11月12日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図5は、上段がNYダウのボリンジャーバンド、下段がRCI(順位相関指数)で、前回、「売り待ち」のテクニカル指標として紹介したものです。

 具体的には、(1)株価がプラス1σ(シグマ)を下抜け、「バンド・ウォーク」が崩れるかどうか、(2)9日のRCIが13日のRCIを下抜けするか、の2点に注目としていましたが、両者ともに達成しています。

 それにより、「連日で最高値を更新!」といった勢いで新値を取りにいく動きはひとまずストップした可能性があります。となると、今週の米国株についてはまだ、下げを見せる場面があるかもしれません。

■(図6)NYダウ(日足)のフィボナッチ・ファンとMACD(2021年11月12日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 確かに、上の図6下段のMACDを見ても、シグナルを下抜けクロスしており、下げが続く可能性があります。

 とはいえ、25日移動平均線までは距離があり、9月20日の安値を11月8日の高値の上昇幅の「38.2%押し」「50%押し」「61.8%押し」の水準を線で結んだ「フィボナッチ・ファン」のそれぞれのラインもまだ下方向に位置しています。

 仮に株価が下げる展開になったとしても、これらがサポートとして機能しているあいだは、「まだ大丈夫」という判断の目安にして良いかもしれません。逆にこうしたサポートが次々と破られてしまった場合には、市場のムードが一気に変わり、さらなる下押しに警戒が必要になります。

 いずれにしても、今週から日米の決算発表シーズンが一巡することになり、資源価格の状況や、米金利動向、経済指標などの景況感などに相場の視点が移ることになります。

 国内では7-9月期のGDP(国内総生産)をはじめ、9月機械受注、10月消費者物価の発表が予定されているほか、米国では、10月の小売売上高や鉱工業生産、住宅着工件数などの発表が控えています。

 中国でも週初の15日に10月の小売売上高と鉱工業生産が予定されているため、経済指標の結果に敏感に反応する場面もありそうです。

 したがって、今週の日本株は、出遅れ感の修正期待がくすぶる中、景況感をにらみつつ、日経平均3万円台への地ならしから解き放たれるかどうかが注目される週になりそうです。