日経平均は、2万9,000円前後でやや膠着(こうちゃく)

 27日の日経平均は、前日比7円安の2万9,098円でした。強弱材料が拮抗(きっこう)し、大きくは上にも下にも動けないボックス圏が続いています。

  1. 米景気・企業業績が好調で、米国株が強いこと、
  2. 緊急事態宣言の解除で国内消費に回復期待があること、

 が追い風となっています。

 一方、

  1. 中国恒大の破綻懸念、中国景気悪化懸念
  2. 国内政局不安、31日投開票の衆院選が終わっても内閣支持率が高まらない可能性
  3. 米国のインフレ、長期金利上昇の不安。11月2~3日のFOMC(米連邦公開市場委員会)でテーパリング(量的金融緩和の縮小)が決定した場合の金融市場への影響に対する不安

 が上値を抑えています。

日経平均・NYダウ(ダウ工業株30種平均)の動き比較:2020年10月1日~2021年10月27日(NYダウは26日まで)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所作成

日本株を動かす外国人売買

 本欄で繰り返しお伝えしている通り、過去30年日本株を動かしているのは外国人投資家です。外国人が買い越す月は日経平均が上昇し、外国人が売り越す月は日経平均が下落する傾向が30年続いています。

 なかでも、外国人投機筋による日経平均先物の売買は大きな影響を持っています。昨年2~3月コロナ・ショック時に日経平均を暴落させたのは、外国人の売りです。なかでも、日経平均先物の売りは大きな影響を及ぼしました。

 昨年11月以降、日経平均を3万円に向けて上昇させたのが、外国人投資家でした。特に踏み上げ【注】による日経平均先物の買いが大きな影響を及ぼしました。

【注】踏み上げ
日経平均が下落すると予想して日経平均先物の売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していく中で、損失拡大を防ぐために日経平均先物の買い戻しを迫られること。

 そうした投機筋(主に外国人)による、日経平均先物の売買動向が、東証が発表している「裁定売買残高」の変化に表れています。それを見てみましょう。

裁定売り残に表れる、投機筋の日経平均先物「空売り」の動向

 詳しく説明すると難解になるので、説明は割愛して結論だけ述べます。東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れます。

 また、「裁定買い残」の変化には、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「買い建て」の変化が表れます。買い建てが増えると裁定買い残が増え、買い建てが減ると裁定買い残が減ります。以下をご覧ください。

日経平均と裁定売り残・買い残の推移:2018年1月4日~2021年8月13日(裁定売買残高は8月6日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成 

 2018年以降の、裁定売り残・裁定買い残の変化から、投機筋の動きをレビューします。

【1】裁定買い残高が高水準だった2018年

 上のグラフを見ていただくとわかる通り、裁定買い残高は、2018年初には3.4兆円もありました。この時は、「世界まるごと好景気」と言って良い状況でした。したがって、投機筋は世界景気敏感株である日本株に強気で、日経平均先物の買い建てを大量に保有していたことがわかります。

 ところが、2018年10月以降、世界景気は悪化しました。投機筋は、日経平均先物を売って、買い建て玉をどんどん減らしていきました。

【2】売り残を積み上げた後、踏み上げが起こった2019年

 2019年には製造業を中心に中国や日本の景気が悪化しました。それを受けて、投機筋は日経平均先物の売り建てを増やしました。そのため、裁定売り残が一時拡大しました。

 ところが2019年10月以降、世界景気回復期待が高まって日経平均が上昇する中で、踏み上げが起こりました。日経平均先物を売り建てていた投機筋は、損失拡大を防ぐための先物買戻しを迫られました。その結果、裁定売り残が減少しました。

【3】コロナ・ショックで売り残が再び積みあがるも、踏み上げで減少に向かった2020年

 2020年、コロナ・ショックで日経平均が暴落した1~3月、投機筋は再び日経平均先物売り建てを増やしました。裁定売り残は一時2.6兆円近くまで増加しました。ところがその直後から、世界的な金融緩和と景気回復をうけて日経平均は急騰し、ここでも先物の踏み上げが起こりました。

【4】裁定売り残は低水準となった2021年、裁定買い残は急増・急減を繰り返す

 2021年になり、裁定売り残の減少が続きました。投機筋は日経平均先物の売り建てで勝負することを止めました。

 一方、裁定買い残は急増・急減を繰り返しています。投機筋が日本株に強気になったり弱気になったりを繰り返していることがわかります。日本株について外国人の投資スタンスが定まらない状況が続いています。

日本株は長期的に「買い場」の判断を継続

 日本企業は、平成に取り組んだ構造改革によって財務良好、収益基盤は堅固となってきています。にもかかわらず、PER(株価収益率)・配当利回りで見て、割安と判断しています。したがって、長期投資で日本株は買い場と考えています。

 ただし、短期的には、中国の不安・国内政局不安・インフレ懸念などがあって伸び悩む傾向が続きそうです。

 日本株に積み立てで投資している方は、そのまま続けるべきと考えます。まとまった投資資金をお持ちの方は、時間分散しながら投資を増やしていったら良いと考えます。

 なお、割安な高配当株への投資について、6月15日に日経BPから発売された以下の私の著書で詳しく解説しています。ご参照ください。

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