資産形成は、非課税貯蓄口座で

 今日は、資産形成を考えるとき、最初に検討すべき「iDeCo(イデコ)」について解説します。加入資格があるのに加入していない方がまだたくさんいます。加入資格があることに気づいていない方が多いかもしれません。

 非課税貯蓄制度として、代表的なものに、「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」、「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」、「つみたてNISA」があります。3つのうち、一番節税メリットが大きいのが「iDeCo」です。加入資格のある方は、まず、「iDeCo」を枠いっぱいまで使って貯蓄することを目指すべきです。

「iDeCo」の加入資格がない方、あるいは、すでに「iDeCo」を枠いっぱい使っていてさらに投資余力のある方は、「NISA(ニーサ)」または「つみたてNISA」を検討したら良いと思います。

 今日は、まず「iDeCo」の現在の制度を解説します。次に来年(2022年)5月に予定されている制度変更について、解説します。

iDeCo(イデコ)の加入資格があるかないか、ご存知ですか?

 iDeCoには、後段で説明しますが、3つの節税メリットがあります。ところが、加入資格があるのに、入っていない方が、いまだにたくさんいらっしゃいます。とてももったいないことです。2020年11月の楽天DI(読者へのアンケート調査)で、「NISAまたはつみたてNISA」を利用しているか、「iDeCo」を利用しているかお伺いしました。4,200名を超える回答をいただきました。集計結果から、「NISAまたはつみたてNISA」の利用率が71.9%と高い一方、「iDeCo」の利用率は26.4%と低いことが分かりました。「NISAは使っているが、iDeCoは使っていない」方が、かなりいらっしゃることが分かりました。

 【1】公務員・自営業の方、【2】加入資格の無い会社からある会社に転職された方などに、加入資格があるのをご存知ない方が多数いらっしゃると、伺っています。

 皆さまが、制度をきちんと理解されているかチェックするために、以下のフローチャートで、ご自分がどこに該当するか、確かめてください。「加入資格」からスタートして、問いに答えながら先に進んでください。
 
iDeCo(イデコ)の理解度をチェックするフローチャート

 加入資格があるかないか「分からない」方は、加入できるのに未加入の可能性があります。iDeCoは、原則20歳以上、60歳まで加入できます(来年5月から65歳まで加入できるようになります)。ただし、勤務先に企業型確定拠出年金制度がある方の一部は加入資格がありません。加入資格について、詳しいことは、勤務先などで確認してください。

 加入資格があり、加入するメリットもあるのに「未加入」の方は、節税メリットを受け損なっていて、もったいないと思います。早めにスタートした方が良いと思います。

 ただし、加入資格があっても、入るメリットがない場合もあります。課税所得がゼロの専業主婦(主夫)の場合などです。それについても、後述します。

節税メリットはフルに活用しましょう。iDeCo、3つの節税メリット

 iDeCoには3つの節税メリットがあります。すぐに恩恵を感じられるのは、【1】拠出金が所得控除になること、です。

【1】拠出金が所得控除になります

 年末調整、または確定申告によって所得控除を受け、所得税・住民税の納税額を減らすことができます。

 たとえば、民間企業の勤務者で、給与収入が650万円(課税所得350万円と仮定)の方は、iDeCoで拠出額の約30%分、節税できます(復興特別所得税を勘案しない計算)。年間27万6,000円(月額2万3,000円ずつ)拠出を行うならば、単純計算で、年間8万2,800円の節税となります。

【2】運用益が非課税となります

 運用期間中に得られる利息・配当金・売却益が、非課税となります。将来、10万円の運用益(配当金や売却益)が得られるとします。通常の課税(分離課税・単純計算)では、2万円(復興特別所得税を勘案しない計算)が税金として差し引かれます。iDeCo・NISAなど非課税制度を使っていれば、10万円まるまる受け取れます。大きな差となります。

 40歳の方を例にとると、iDeCoでは非課税で投資できる期間がNISAやつみたてNISAよりかなり長くなります。NISAなら最長で5年、つみたてNISAなら最長で20年非課税投資が可能です。iDeCoだと、40歳から受け取り可能になる60歳まで、最短でも20年間の非課税投資ができます。さらに、受け取りを70歳まで遅らせれば40歳から70歳まで30年間の非課税投資が可能です。後段で説明しますが、来年(2022年)5月から最長75歳まで受け取りを遅らせて75歳まで35年間、非課税貯蓄を続けることも可能になります。

【3】受け取り時にも節税メリットがあります

一時金で受け取るならば、退職所得控除の対象となります。年金方式で受け取る場合は、公的年金等控除の対象となります。詳細は割愛しますが、非課税で受け取れる可能性が高いと言えます。

iDeCoに入るデメリット

 主なデメリットについても、説明します。

【1】原則60歳まで引き出しができない

 60歳になるよりも早い時期に、住宅購入や子供の教育などで使う予定があるお金ならば、iDeCoではなく、NISAやつみたてNISAで運用した方が良いと考えられます。

【2】投資信託を通じて株などに投資する場合、値下がりすることもある

 投資信託で運用する場合、当然ですが、必ず資産が増加するとは限りません。値下がりする可能性もあります。運用リスクを取りたくなければ、iDeCoで定期預金に加入することもできます。

 ただし、私は、60歳まで長期運用できるお金を定期預金に置いておくのは、おすすめしません。利回りが低くてほとんど資産が増えないからです。短期的な値下がりリスクを負っても、長期的な資産形成に寄与すると期待される投資信託などに投資していくべきと考えています。

【3】加入先によっては運営管理手数料がかかる場合がある

 ただし、楽天証券ならば、運営管理手数料は、条件なしで誰でも無料です。

専業主婦(主夫)などで課税所得ゼロだと「所得控除」メリットは無い

 iDeCo(イデコ)の3つの節税メリットのうち、すぐに恩恵があらわれるのは、拠出金が所得控除になることでした。ただし、課税所得がゼロの場合は、そのメリットがありません。

iDeCoでの年間拠出金上限は、勤務先や働き方によって異なる。

 以下の通り、加入資格・年間の拠出金上限などが決められています。

iDeCoの概要

出所:楽天証券が作成

 iDeCoに年間いくら拠出できるか、上の表に示した通り、勤務先や働き方によって異なります。iDeCo枠は、目いっぱいまで使い、3つのメリットをフルに得ていくことが良いと思います。

来年5月からの制度変更

 来年(2022年)5月からの制度変更の、重要ポイントは以下2点です。

【1】65歳まで加入可能に

 現在は、60歳未満でないと加入できません。来年5月からは、65歳未満であれば加入可能となります。ただし、65歳まで国民保険または厚生年金の被保険者であることが条件です。

【2】受け取り開始を75歳まで遅らせることが可能に

 現在は、70歳までに受け取りを開始しなければなりませんが、75歳まで受け取り開始を遅らせることができるようになります。受け取りを開始するまで、非課税での投資が継続されます。

 iDeCoは、非課税で投資できる期間の長さで、NISAやつみたてNISAを大幅に上回る可能性があります。40歳の人を例にとって説明します。日経平均インデックスファンドにNISA口座で投資すれば最長5年間だけ非課税投資となります。つみたてNISAで投資すれば最長20年間非課税です。

 iDeCoで投資すると非課税で投資できる期間がもっと長くなります。60歳になるまで原則出金できませんが、60歳になってすぐ受け取るならば20年間非課税で投資することになります。60歳では受け取りを開始せず、70歳から受け取りを開始するならば、40歳から70歳まで30年間非課税で投資することになります。来年5月から、75歳まで受け取りを遅らせることができますので、40歳から75歳まで最長35年の非課税投資ができることになります。

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