株式投資における「節税」とは?

 皆さんは、株式投資で「節税」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。

 節税というのは、払うべき税金を払わないようにすることではありません(脱税になってしまいます)。

 税法で定められた仕組みを上手に使い、本来ならば払う必要のなかった税金を払わずに済むように対策を講じるというのが節税です。

 そして、株式投資の世界で節税といえば、ほぼ「損失と利益を相殺して税額を圧縮する」ことになります。これがしっかりとできるかどうかで、税金の額も変わってきますし、引いては税引き後の手残りの額も変わってくることになります。

損益通算の順序はどうなっているの?

 投資のベテランの方は大丈夫だと思いますが、特に2020年のコロナ・ショック以後に株式投資を始めたような方だと、株式投資の税金の扱いについてもあまりよく知らない、ということも多いと思います。

 実は、株式投資で生じた利益と損失を相殺する順番というものが決まっています。

 例えば今年(2021年)であれば、「2021年中に生じた売却益」と「2021年中に生じた売却損」をまず相殺します。

 この結果、売却損が残った場合、次に2021年中に受け取った配当金と売却損を相殺します。それでも売却損が残れば、これを2024年まで繰り越し、2022~2024年の売却益や配当金と相殺することができます。

 逆に2021年は売却益が残った場合、過去から繰り越してきた売却損と相殺することができます。これは古い順に相殺することになっています。

 最も古いものは2018年の売却損のため、順に2018年の売却損、2019年の売却損、2020年の売却損と2021年の売却益を相殺していきます。

 なお、売却益だけでなく、2021年に受け取った配当金も、過去の売却損と相殺できます。

損失の繰り越しには確定申告が必須

 損失を繰り越すには、繰り越す都度、毎年確定申告が必要となります。

 2021年の損失は2024年まで繰り越すことができますが、そのためには2021年分、2022年分、2023年分の確定申告にて毎年損失の繰り越しを行う必要があります。

 一度、損失繰り越しの確定申告を行っても、自動的に3年間繰り越してくれるわけではありませんから、注意が必要です。

 勘違いしやすいのが、「源泉徴収ありの特定口座」で取引している場合です。この場合、売却損益の計算のみならず、売却益にかかる税額の源泉徴収も証券会社がやってくれますので確定申告は不要です。

 ですが、この「確定申告不要」を誤ってとらえ、損失の繰り越しを行うために必要な確定申告についても不要である、と思っている方が結構いらっしゃいます。

 源泉徴収ありの特定口座であっても、損失の繰り越しには必ず確定申告が必要となりますので、十分注意してください。

 過去の損失繰り越しにつき確定申告をしていない場合のリカバリーの可否については、以前書いたコラム「失敗しない株の売却損益・配当金の申告:年末調整・確定申告前に税理士が指南」をご参照ください。

今からやっておきたいこととは?

 2021年であれば、まず2021年の売却益と売却損、配当金を相殺し、売却益や配当金が残れば過去から繰り越した損失と相殺することになります。

 そして、2018年に生じた損失は、2021年中の利益と相殺できなければ切り捨てになってしまいます。

 ですから、まずは現時点で下記について確認します。

・2021年の売却損益
・2021年中に受け取る配当金
・2018年から繰り越している損失

 もし、2018年から繰り越している損失が多額に上り、2021年の売却益や配当金では到底足りないような場合、現時点で含み益のある株を売却し「益出し」することで、2021年の売却益を増やすことが有用です。

 これにより、2018年からの繰り越し損失と2021年の売却益の相殺により、節税できる金額が大きくなります。

 もちろん、税額を圧縮するためだけの理由で安易に保有株を売却することはお勧めしませんが、売却した後で再び買い直すこともできます。

 特に今年で期限切れとなる2018年の繰り越し損失については、使えず切り捨てになってしまう事態を避けることを心掛けましょう。