実践している売買タイミングの決め方
「この銘柄いいな!」と思っても、いざ、どのタイミングで買って、どのタイミングで売るかを考えると、なかなか悩ましいところもあるのではないでしょうか?
株価が上がってくると、「今、買わないとこのまま上がってしまうのでは」という焦りが生まれ、追いかけて買った結果、高値掴みをしたり、株価が下がってくると「まだ下がるのではないか」と思って指値を引き下げていった結果、買えずに終わるということが起こりやすかったりします。
このため、あくまでもご参考ですが、安く買い、高く売るために私自身が実践している売買タイミングの決め方についてお伝えをしていきたいと思います。
まず、私自身はバリュー投資の考え方をベースとしています。
バリュー投資もさまざまですが、私のスタイルは中小型株を対象として、業績からみて割安なだけでなく、成長性も兼ね備え、ネットキャッシュの金額(現預金+有価証券から有利子負債を引いた額)が多い銘柄を好んで選定しています。
そして、実際に投資対象とすると決めたら、次のような表を作成して売買タイミングを決め、これに従って動くようにしています。
買い水準を3段階とし、売り水準を2段階として、この表に従って、下がったところを段階的に買っていき、上がったところを段階的に売っていくという方法を取ることで、どこで買ったらよいか、どこで売ったらよいかという迷いを無くしています。
かつ、この表は高いところを買ってしまったり、安いところを売ってしまったりすることを避ける仕組みにもなっています。
問題は、この表の買い水準、売り水準をどのように決めていくかですが、次の点から目安とする基を決めています。
(1)移動平均線
(2)過去のサポートライン、レジスタンスライン
(3)過去の高値・安値
(4)キリのよい株価
(5)過去3年の実績PERから算出
(1)移動平均線、(2)過去のサポートライン、レジスタンスライン
具体的な銘柄でみていきましょう。本来、私の好きなバリュー投資の考え方で選定した中小型株を例に出したいところですが、ここでは、日本企業で時価総額の一番大きいトヨタ自動車(7203)を例として取り上げることとします。
(1)移動平均線
移動平均線においては、200日移動平均線と200週移動平均線の2つに着目をしています。
200日移動平均線に着目をするのは、多くの人がみている線だからです。200週移動平均線に着目するのは、さまざまな銘柄をみると、なぜかその線がサポートラインになったり、頭を抑えるラインになったりしているようにみえるからです。
(2)過去のサポートライン、レジスタンスライン
サポートラインは下値を支えるラインで、レジスタンスラインは上値を抑えるラインのことです。過去のサポートライン、レジスタンスラインは、今後においても株価が支えられたり、上値を抑えられたりするラインになったりします。
(1)、(2)について、実際のチャートでみていきましょう。
トヨタ自動車(7203)の1年チャート
200日移動平均線は8,676円の水準にあり、ここ4カ月間は10,000円がレジスタンスラインになっているようにみえます。
次に5年のチャートをみてみましょう。
トヨタ自動車(7203)の5年チャート
200週移動平均線は7,356円の水準にあり、6,000円あたりがサポートラインに、2019年末から2020年初にかけては、8,000円あたりがレジスタンスラインになっているようにみえます。
(3)過去の高値・安値、(4)キリのよい株価、(5)実績PERから算出
(3)過去の高値・安値
過去の高値・安値については、直近1年と直近3年についてみていきます。
直近1年 | 直近3年 | |
---|---|---|
高値 | 10,330円 | 10,330円 |
安値 | 6,825円 | 5,771円 |
(4)キリのよい株価
キリのよい株価は、意識する人が多いせいか、サポートラインになったり、レジスタンスラインになったりすることが多いので、売買タイミングの目安としていきます。
株価 | 備考 |
---|---|
12,000円 | |
11,000円 | |
10,000円 | |
9,795円 | 2021年9月13日終値 |
9,000円 | |
8,000円 | |
7,000円 |
(5)実績PERから算出
過去3年間の実績PER(株価収益率)から売買タイミングの目安を算出していきます。
2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | |||
---|---|---|---|---|---|
1株利益 | 650.55円 | 720.10円 | 794.67円 | ||
最高株価 | 7,592円 | 7,929円 | 8,650円 | ||
実績PER(高値) | 11.67倍 | 11.01倍 | 10.89倍 | ||
最低株価 | 6,079円 | 5,941円 | 6,195円 | ||
実績PER(安値) | 9.34倍 | 8.25倍 | 7.80倍 | ||
出所:トヨタ自動車株式会社 2021年3月期 有価証券報告書よりマネーブレインが作成 |
実績PERは次の計算式で算出します。
実績PER(高値)=最高株価÷1株利益
実績PER(安値)=最低株価÷1株利益
算出したら、それぞれの3年間の平均を算出します。
実績PER(高値)の3年間の平均=11.19倍
実績PER(安値)の3年間の平均=8.46倍
3年間の平均を算出したら、それに1株利益を掛けて、売買の目安を算出していきます。用いる1株利益については、さまざまなものがあります。
a. 会社予想の今期1株利益
b. 会社四季報における今期1株利益予想
c. 会社四季報における来期1株利益予想
d. 会社四季報における今期1株利益予想と来期1株利益予想の平均値
ここでは、a.の会社予想の今期1株利益である823.1円を用いることとしますが、会社予想は慎重であるケースも多いので、b.c.d.を用いてもよいと思います。
これに実績PER(高値)、実績PER(安値)の3年間の平均を掛けて売り買いの目安を算出していきます。
売りの目安=823.1円×11.19倍=9,210円
買いの目安=823.1円×8.46倍=6,963円
(1)から(5)をまとめる
(1)から(5)までをまとめると次のようになります。
株価 | 備考 | |
---|---|---|
売りの目安 | 12,000円 | キリのよい株価 |
11,000円 | キリのよい株価 | |
10,330円 | 過去の高値(直近1年、3年) | |
10,000円 | キリのよい株価、現在のレジスタンスライン | |
9,210円 | 実績PER(高値)から算出 | |
現在値 | 9,795円 | 2021年9月13日終値 |
買いの目安 | 9,000円 | キリのよい株価 |
8,676円 | 200日移動平均線 | |
8,000円 | キリのよい株価、過去のレジスタンスライン | |
7,356円 | 200週移動平均線 | |
7,000円 | キリのよい株価 | |
6,963円 | 実績PER(安値)から算出 | |
6,825円 | 過去の安値(直近1年) | |
6,000円 | キリのよい株価、過去のサポートライン | |
5,771円 | 過去の安値(直近3年) |
この表から買いの目安を3つ、売りの目安を2つ選んで、次の表を作成します。
そして、「自分はこう決めたからそれでよい」と割り切り、これを基に売買していきます。
こうすることによって、悩むことなく、心中穏やかな状態で売買でき、かつ、「安く買い、高く売る」を実践していくことができます。
売買タイミングの考え方は人それぞれで、今回お伝えした内容もあくまでもご参考ですが、このようにあらかじめ決めておくことは、一喜一憂しないためにもとても重要だと考えています。売買タイミングに悩まれている方は、ぜひご参考にしてみてください。
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