先週の日経平均
先週末9月17日(金)の日経平均終値は3万500円とキリの良い値段となりました。前週末終値(3万381円)からの上げ幅は119円と小幅でしたが、週足ベースでは4週連続の上昇です。
今週の国内株市場は祝日の関係で3営業日となります。
本来ならば、21日(火)~22日(水)に控えている日銀金融政策決定会合やFOMC(米連邦公開市場委員会)などの金融政策イベントが、大方の予想通り無難に通過できれば、堅調な展開が続きそうというシナリオが想定されていました。
しかし、中国不動産大手の恒大集団(エバーグランデ・グループ)の債務問題が懸念材料として浮上し、国内株市場が休場となっていた20日(月)の香港株市場(上海などの本土株市場は休場)や米国株市場が大きく下落しており、軟調な相場展開の対処を考慮する必要が出てきました。
まずは、いつもの通り、先週末時点の状況から確認していきます。
■(図1)日経平均(日足)の動き(2021年9月17日取引終了時点)
あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、冒頭でも触れたように、おおむね上方向を意識する展開となりました。
週初の13日(月)は利益確定売りに押される場面があったものの、上昇してその日の取引を終え、翌14日(火)には、一段高でこれまでの年初来高値だった2月16日の3万714円を超えて、3万795円まで値を伸ばす場面も見せました。
その後も週末にかけて3万500円をはさんだ推移となっており、前週に続いて、買いの意識がうかがえる推移となりました。移動平均線についても、25日と75日移動平均線の「ゴールデン・クロス」を達成しています。
ただ、16日(木)に出現した大きな陰線が気掛かりです。
前日の15日(水)のローソク足との組みあわせが「抱き線」、翌17日(金)のローソク足との組み合わせは「はらみ線」となっていますが、もともと、株価の天井圏で大きい陰線が出現すること自体が好ましくなく、ローソク足の並びだけで判断すれば、売りが優勢になりやすい状況と言えます。
RCIでみた日経平均
実際に、日経平均のチャートを過去にさかのぼると、天井圏で大きな陰線が出現した後、株価が調整するといった場面がありました(下の図2)。
■(図2)日経平均(日足)とRCIの動き(2021年9月17日取引終了時点)
上の図2を見ると、大きな陰線が出現した後、25日移動平均線あたりまで株価が調整していたことが分かります。
また、図2の下段には、株価と日付の相関関係からトレンドの方向性を探るテクニカル指標の「RCI(順位相関指数)」を表示させています。
RCIは上昇トレンドが強ければ上方向のプラス100%に近付き、下落トレンドであれば、下方向のマイナス100%へ近づいていきます。また、トレンドが続くと、RCIがプラスマイナス100%あたりで張り付きやすいという性質を持っています。
さらに、RCIでは、100%あたりで張り付いたRCIが方向を超えて、プラス80%~マイナス80%のゾーンに入ったところが売買ポイントになるという見方もあります。
上の図2でみれば、プラス100%あたりで張り付いていたRCIが下方向に転じ、プラス80%のゾーンに入ったところが売りポイントになるわけです。
図2のチャートをさかのぼると、RCIの売りポイントと日経平均の下落局面がほぼ一致しており、RCIでみた日経平均は、株価は堅調ながらも「売り待ち」の要素を含んでいる可能性があります。
目先の値動きのメド
足元の日経平均が25日移動平均線との乖離(かいり)を縮めていくのであれば、25日移動平均線の乖離率をボリンジャーバンド化したものが目先の値動きのメドになりそうです。
■(図3)日経平均25日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド(2021年9月17日取引終了時点)
先週末17日(金)時点の日経平均の25日移動平均線乖離率はプラス5.94%で、+1σ(シグマ)を下抜けたところに位置しています。仮に株価が下落していくのであれば、乖離率平均のMAや、▲1σあたりが意識されそうです。
TOPIXの目標値計算
続いて、TOPIX(東証株価指数)についても見ていきます。
■(図4)TOPIX(日足)の目標値計算
上の図4は、前回のレポートでも紹介したTOPIXの目標値計算ですが、先週の値動きによって、VT計算値(2,113p)を達成しました。次の目標値はV計算値の2,181pになりますが、先ほどの日経平均と同様に、目先は下落した場合のシナリオを考えた方が良さそうです。
■(図5)TOPIX(日足)とフィボナッチ・ファン(2021年9月17日取引終了時点)
上の図5は、TOPIXの日足チャート上に「フィボナッチ・ファン」と呼ばれるラインを描いたものです。
見た目では、これまでのレポートでも度々紹介した「ギャン・アングル」と似ていますが、描き方が微妙に異なります。
具体的には、起点となっている10月30日と3月19日の上げ幅の38.2%押し、50%押し、61.8%押しのところを通過する3本のラインを描きます。こうすることで、将来想定されるトレンドラインとなります。
足元のTOPIXは50%ラインに沿って推移していますが、株価が下落すれば当然61.8%ラインに向かっていくことになる一方で、現在上向きの25日移動平均線といずれぶつかることになります。
その時に、25日移動平均線との攻防の行方が最大の焦点になります。ひとまず、50%ラインと61.8%ラインの範囲内での推移がメインシナリオですが、61.8%ラインを下抜けてしまった場合には要警戒です。
今週のポイント
いずれにしても、今週の相場は中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)の動向次第になります。
同社については、利払い日が相次ぐことで警戒感が高まっていますが、デフォルト懸念自体は、中国当局が昨年8月に、経済の不動産に対する依存度を下げ、不動産開発会社の借り入れを制限する方針を掲げたあたりから一部で指摘する声があり、以前からくすぶっていました。
また、最近の中国当局は、IT大手企業やゲーム業界、教育産業、芸能界、カジノ業界とあらゆる分野への締め付けや介入が目立っています。不動産業界もそのひとつなのですが、中国当局のこうした一連の動きの背景には、来年(2022年)の共産党大会に向けた地ならしがあります。
習近平氏は、その党大会で、これまでの「2期10年」の国家主席の任期の慣例を打破し、3期目の就任を目指しており、そのためには、民衆の支持と現体制の維持、正当化や成果をアピールする必要があります。
不動産業界がターゲットになったのも、住宅価格の高騰が所得格差拡大の一因となっているという不満をそらすという意図があるとされています。中国当局にしてみれば、本来のねらいに反して、中国恒大集団の債務問題がここまで大きくなってしまうことは想定外だったのかもしれません。
同社の負債総額は約2兆元(約33.5兆円)とも言われ、中国の名目GDP(国内総生産)の約2%の規模感なのですが、この巨額の債務は、本業の不動産経営だけではなく、同社の無謀な事業多角化と拡大方針が招いた面が大きいとされています。
タイムスケジュール的にも、直近で利払いが相次ぐことや、10月1日の国慶節(建国記念日)も近いため、当局から何らかの対応策が出てくるかもしれません。
仮に、中国当局が同社を救済した場合、国内外の金融市場は早期に落ち着くかもしれませんが、その内容によっては、国内の不満の高まりなど、政治的には色々と禍根を残すことも考えられ、経済的なインパクトだけで片付けられない可能性があります。
そのため、中国をめぐる情勢の不安定さが持続してしまう展開には注意しておく必要がありそうです。
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