日経平均は一気に切り返し、3万円台に
先週末9月10日(金)の日経平均終値は3万381円で取引を終え、大台の3万円に乗せてきました。前週末終値(2万9,128円)からの上昇幅も1,253円と大きく、週足ベースでも3週連続で上昇しています。
わずか16営業日前には年初来安値を更新していたのが嘘のように一気に株価が切り返してきた格好です。
足元の株価上昇が加速した背景には、新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向にあることや、にわかに動き出した国内政治動向による変化への期待が挙げられます。
今週末に控えている自民党総裁選の告示日を前に、経済政策議論が手掛かりとなれば、「まだまだ」上値を試す展開もありそうな一方、日経平均が2月の高値からの下落基調が約半年続いたことを踏まえると、短期間での上昇の反動による「そろそろ」感も意識され始める頃に差し掛かります。
そのため、「まだまだ」と「そろそろ」のはざまで展開を探っていくことになりますが、まずは、いつものように足元の状況から確認していきます。
■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年9月10日取引終了時点)
あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、週を通じて上昇基調が続きました。週初の6日(月)に、「窓」空けで2万9,500円の株価水準を超え、翌7日(火)も「窓」空けで上昇し、3万円台に乗せる場面を見せました。
その後の8日(水)と9日(木)はその3万円台を挟んだ攻防となり、そして、メジャーSQ(特別清算指数)日だった週末の10日(金)には3万円台を上放れする一段高となりました。
とりわけ、10日(金)の上昇は高値引けであるほか、SQ値の推計値が判明した後も上昇基調が続いたこともあり、力強い動きとなりました。
2月16日のザラ場ベースの高値(3万714円)も射程圏内に捉えており、上方向への意識が強い印象となっています。ローソク足の並びを見ても、先週はすべて陽線です。
まずは2月16日の高値が焦点に。その先の上値はどうなる?
まずは、2月16日の高値を超えられるかが今週の焦点になりますが、さらにその先の上値はどのくらいを想定すれば良いのでしょうか?
前回のレポートでは75日移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドを手掛かりに見ていきましたが、今週はテクニカル分析で一般的に用いられている「目標値計算」です。
■(図2)日経平均(日足)の目標値計算
目標値の計算には、「足元の上昇の起点となった地点」「その前につけた高値」「さらに高値に至る起点」の3つを使います。
上の図2で見ていくと、日経平均は昨年の10月30日(2万2,948円)を起点に、今年2月16日の高値(3万714円)まで7,766円の値幅で上昇しました。
その後、年初来安値を更新した8月20日の安値(2万6,954円)まで下落しましたが、その下げ幅は3,760円です。また、10月30日と8月20日の起点どうしの上昇幅は4,006円です。
そして、この3つの値幅を用いて株価の目標値を計算します。計算と言っても単なる足し算なのですが、上の図2では、「VT計算値」、「V計算値」、「N計算値」、「E計算値」を表示させています。
仮に、2月16日の高値(3万714円)を達成できれば、次の目標はVT計算値(3万960円)になりますが、さらにその先のV計算値(3万4,474円)やN計算値(3万4,720円)までには3,500円以上のひらきがあり、上値の「空白地帯」となっています。この空白を埋めるには相当の買い意欲が必要になりそうです。
「アベノミクス相場」時の動きを振り返る
先ほども述べたように、足元の株価上昇は政治的な期待が背景にありますが、同じような理由で大きく株価を上昇させた「アベノミクス相場」の時はどうだったのでしょうか?
■(図3)「アベノミクス相場」開始時の日経平均の目標値計算
上の図3を見ても分かるように、民主党政権下だった2012年11月下旬に衆議院が解散し、その後の自民党への政権交代や経済政策(アベノミクス)への期待によって、日経平均は大相場を形成していきました。
V計算値やE計算値あたりでいったん上昇がストップし、その後は、E計算値の2倍の値幅あたりで天井をつけていたことが分かります。
もちろん、足元の相場が当時と同じ動きを繰り返すとは限りませんが、このまま上昇を続けていった場合には、それぞれの計算値が目安となる可能性があります。
TOPIXの目標値計算
また、同様に、最近は日経平均よりもチャートの形が良いTOPIX(東証株価指数)でも目標値計算をしてみます。
■(図4)TOPIX(日足)の目標値計算
TOPIXの目標値計算は上の図4に示した通りですが、日経平均の目標値とは違い、VT、V、N、Eのそれぞれの計算値が段階的に切り上がっており、目標値のあいだに「空白地帯」がありませんので、TOPIXが目標値をひとつひとつクリアできるかが日本株全体を見ていく上では有効かもしれません。
日経平均・TOPIXの値動きを分足で分析
とはいえ、足元で見られるような相場の急上昇をいつまでも続けるには無理があります。そのため、目標値計算のような大ざっぱな方向性と同時に、日々の値動きについても見ていく必要があります。
そこで、最後に日足では急角度で上昇している値動きを、分足(60分)で細かく見ていきたいと思います。
■(図5)日経平均(60分足)とギャン・アングル(2021年9月10日取引終了時点)
上の図5は日経平均が年初来安値を更新した8月20日の安値を起点にした60分足にギャン・アングルを重ねたものです。
先週の日経平均は2×1ライン上での推移が続いていますが、上昇の初期段階では4×1ラインにタッチする場面があるなど、分足チャートでは、日足チャートの急角度では見えなかった相場の上げ下げの様子(波)が何となく見えてきます。
こうした上げ下げの波を分析する手法に「波動論」というのがあります。有名なものとしては、「エリオット波動」や「三段高下」などがありますが、足元の上昇は、「最後の上昇とされる第5波に入っている」なのか、「まだ第3波が継続している」との2つの解釈ができそうな状況です。
いずれにしても、近いうちに下げの局面の到来が想定されます。その場合、2×1ラインや節目の3万円、そして3×1ラインで下げ止まれるかが注目されそうです。
■(図6)TOPIX(60分足)とギャン・アングル(2021年9月10日取引終了時点)
TOPIXについては、株価が2×1ラインと3×1ラインの範囲内で推移しています。TOPIXの波動分析も、第5波なのか、まだ第3波なのか見方が分かれていますが、しばらくはこの範囲内での推移が想定されそうです。
上値のメドは節目の2,100pや2×1ライン、下値のメドは3×1ラインあたりになります。
日経平均・TOPIXともに、日足チャートでは強い形をたどっていますが、分足チャートで株価が下がった場合、この3×1ラインを下放れするような動きになってしまうと、調整が深くなるシナリオも浮上してくることになります。したがって、今週はTOPIXの動きがカギを握りそうです。
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