上場企業が開示を義務付けられているIR情報とは?
前回(足立武志のIR特集2)のコラムにて、IR資料の中で最も重要である「決算短信」の見方をお話ししました。
では、個人投資家は決算短信さえ見ていればよいのかといえば、決してそんなことはありません。
上場企業の株価形成要因は、もちろん業績が大きな要素を占めていることは事実ですが、それ以外にもファンダメンタルズに大きな影響を与えるものはあります。
そこで、株主や投資家に対して公表すべき重要な情報が法令や取引所ルールにより定められています。
東京証券取引所のウェブサイトを見ると、上場企業が義務付けられている情報開示として、
〇法定開示(法律に基づく開示)
〇適時開示(証券取引所のルールに基づく開示)
の二つがあります。
このうち、法定開示資料としては、有価証券報告書や四半期報告書といったものが挙げられます。
証券取引所のルールに基づく開示事項の内容は?
適時開示は「タイムリー・ディスクロージャー」と呼ばれる証券取引所のルールで、さらに以下の三つに分かれます。
〇決定情報:新株発行や他社との合併など企業自らが意思決定を行った情報
〇発生情報:工場火災や大株主の異動など企業の意思決定によらず企業外で発生した情報
〇決算情報:決算内容・業績の開示や業績予想の修正に関する情報
なお、これらの適時開示情報を見る際は、業績への影響の有無についても確認しておきましょう。業績へ与える影響がない、もしくは軽微であると書かれている場合は、株価への影響はほぼないと考えてよいでしょう。
工場の火災発生などで、業績への影響が不明と発表されている場合は、その後の適時開示情報での追加情報を確認しておくのがよいと思います。
適時開示情報は、東京証券取引所の適時開示情報閲覧サービス(TDnet)で見ることができます。
ただ、適時開示情報はかなり分量が多く、1日当たり500件を超える日もあります。したがって、これらを全てチェックするのは個人投資家には不可能ですから、例えば投資候補銘柄について何か情報が出ていないかを時おり確認する、といった形での利用が現実的だと思います。
個人投資家はどのような情報に注目すべき?
では、私たち個人投資家はどのような情報に注目すべきか、改めてお伝えしますが、次のようなものが挙げられます。
〇決定情報:新株発行や他社との合併など企業自らが意思決定を行った情報
〇発生情報:工場火災や大株主の異動など企業の意思決定によらず企業外で発生した情報
〇決算情報:決算内容・業績の開示や業績予想の修正に関する情報
これらは、将来の企業業績、ひいては株価にも大きく影響を及ぼす可能性がありますから、見過ごしてしまうのはあまりよくありません。
これ以外に、筆者であれば自己株式の取得などに注目します。自己株式の取得により、ROE(自己資本利益率)、PER(株価収益率)といった株価指標が改善するとともに、マーケットに出回っている浮動株を減らして需給が改善する効果が期待できます。その結果、株価が上昇する可能性が高くなるからです。
一般的には、発行済株式総数に占める自己株式取得数の割合が高いほど、株価へのプラスインパクトも高くなります。
企業独自に開示するIR情報にも注目
上記でご紹介した情報は、法令や取引所ルールにより開示が義務付けられているものです。それ以外にも、企業が独自に投資家のために開示している情報も数多くあります。それらは通常、各企業のウェブサイトに掲載されています。
例えば、次のような情報は個人投資家にとっても有用と思います。
〇月次売上高:決算短信よりタイムリーに企業業績の変化に気づける
〇決算についての説明資料:決算内容をより深く理解できる
〇決算説明会の資料・音声等:決算内容や今後の見通しを知ることができる
〇中期経営計画:3年後、5年後会社が何を目指しているかが分かる
IR情報を毎日逐一チェックするのは個人投資家にとっては至難の業です。そこで、投資候補としている銘柄につき、重要なIR情報が発表されているか、適時開示情報閲覧サービスや各企業のウェブサイトを定期的に確認する程度のことはしておいたほうがよいでしょう。
≫足立武志のIR特集1を読む
≫足立武志のIR特集2を読む
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