先週の日経平均は需給要因が足を引っ張り下落

 先週末7月9日(金)の日経平均株価終値は2万7,940円となり、節目の2万8,000円台割れで一週間の取引を終えました。前週末終値(2万8,783円)からの下げ幅も843円と大きくなっています。

 しかし、その後の株価指数先物取引で、日経225先物の終値が大取で2万8,510円、シカゴCMEで2万8,485円と大きく反発して終えているほか、先週は、週末の9日(金)がオプション・mini先物取引のSQ日だったタイミングで、指数連動型ETF(上場投資信託)の分配金の換金売りが重なったことによる需給要因が相場の足を引っ張った面もあります。

 こうした需給の足かせから解放される今週は、買いが入りやすくなると思われ、上昇からのスタートが見込まれます。

 では、今週の日本株はこのまま戻り基調を描けるのでしょうか? まずは、先週の日経平均の値動きから振り返ってみます。

■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年7月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均は、上の図1を見ても分かるように、週初の弱含みの展開から、週末にかけて下げが加速する展開となりました。株価は2つの「窓」空けによって、2万8,500円と2万8,000円の水準を次々と下抜けていき、9日(金)の取引時間中には2万7,419円まで値を下げる場面もありました。

 6月21日の安値(2万7,795円)は下回ってしまったものの、何とか5月13日の安値(2万7,385円)までは下落せずに踏みとどまり、ちょうど、200日移動平均線がサポートとして機能したようにも見えます。また、日経平均の2万7,500円よりも下の価格帯は、PER(株価収益率)の12倍台も見えてくるため、割安感による買いも入りやすいという見方もあるようです。

 さらに、冒頭でも触れた通り、株価指数先物取引が大きく反発していますし、仮に、今週あたまの取引で大取の終値(2万8,510円)まで株価が戻ったとすると、5月終盤からのレンジへの復帰をうかがうところに位置することになります。

 とはいえ、3本の移動平均線(5日・25日・75日)がそろって下向きになっているほか、下段のMACDも下方向へ勢いが出始めつつあるように見えるため、9日(金)時点でのチャートの形は悪くなっています。そのため、週明け12日(月)のローソク足が窓空けで上昇し、いわゆる「アイランド・リバーサル」のように、底打ち感を感じさせる形にできるかがポイントです。

目先の株価メドを確認

 また、目先の株価のメドについては、25日移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドで見ていきます(下の図2)。

■(図2)日経平均の移動平均線乖離率(25日)のボリンジャーバンド

出所:MARKETSPEEDⅡのデータを元に筆者作成

 日経平均の25日移動平均線乖離率(ピンク色の線)は、先週の下落基調によって一気に下降し、週末時点でマイナス2σ(シグマ)を下回ってしまいました。

 ただ、チャートをさかのぼると、5月の株価下落局面でも同様の場面がありましたが、当時はその後プラス2σまで戻していたことが分かります。

 必ずしも歴史は繰り返すわけではありませんが、今回もプラス2σまで戻せるのであれば、9日(金)時点のプラス2σは3.08%、25日移動平均線は2万8,805円ですので、計算すると2万9,692円ぐらいまでは株価が戻ると考えることができます。

 なお、プラス1σであれば2万9,260円、MAで2万8,825円、マイナス1σで2万8,393円、マイナス2σであれば2万7,958円となります。

 これまでのレポートでも指摘してきたように、移動平均線乖離率やボリンジャーバンドの値は今後の値動きで変化しますので、あくまでも現時点でのざっくりとした目安になります。

日経平均は2万7,500円が当面の下値の目安に

 ちなみに、株価が下落してしまった場合には、図1の200日移動平均線を下抜けてしまうことになり、下向きトレンドの色彩がより濃くなってしまいますので、その場合には、より期間を長くした75日移動平均線のボリンジャーバンドが参考になるかもしれません。

■(図3)日経平均の移動平均線乖離率(75日)のボリンジャーバンド

出所:MARKETSPEEDⅡのデータを元に筆者作成

 75日移動平均線乖離率は、MAに抑制される格好で、再びマイナス1σを下回っている状況です。

 こちらも、同じように9日(金)時点の値を元に、それぞれの株価のメドを計算すると、プラス2σで3万168円、プラス1σで2万9,497円、MAで2万8,829円、マイナス1σで2万8,160円、マイナス2σで2万7,492円となります。

 したがって、先ほどのPERによる割安度などと合わせて、日経平均は2万7,500円が当面の下値の目安として強く意識されると思われるほか、今後は株価と200日移動平均線との位置関係がポイントになる場面が増えるかもしれません。

■(図4)日経平均(日足)の動き(2021年7月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 日経平均の日足チャートを長期間で眺めてみると、「株価の底打ちから上昇して、200日移動平均線を超えたあたりでしばらくもみ合いが続いた後に一段高で高値をとり、再び200日移動平均線まで調整」という値動きのパターンは、2016年からの相場でも見られました。

 当時は、その後の株価が200日移動平均線を挟んだ上下を繰り返しながら、再度の高値をつけて、いわゆる「ダブルトップ」で天井圏を形成して、株価が大きく下落する展開となり、以降はしばらく200日移動平均線が上値の重しとなっていきました。

「買い上がり」は難しくても「買い戻し」は進む見込み

 最後に、イベントについても確認します。今週は、国内では15日(木)のファーストリテイリングなど、300を超える銘柄の決算が予定されているほか、米国でもJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーといった大手金融機関の決算があります。

 また、日本銀行の金融政策決定会合や米ベージュブックなど金融政策にらみのイベント、さらに、米6月鉱工業生産や小売売上高、中国でも4-6月期GDP(国内総生産)をはじめ、6月の工業生産や小売売上高、固定資産投資などがまとめて発表されます。

 このように、今週は企業業績・金融政策・景況感への思惑に絡むイベントが相次ぎます。

 また、前回のレポートでも触れたように、最近の日本株は米国株の上昇についていけない場面が増えていました。実際に、先週の米国株は軟調に推移しながらも、週末に上昇し、何だかんだで主要3指数(NYダウ・NASDAQ・S&P500)がそろって最高値(終値ベース)を更新しています。

 好調な米国株市場でも、原油価格の値動きが荒っぽくなったり、中国当局による企業の締め付けをきっかけにした米中関係の悪化を警戒する動きが一部で見られたり、これまで米長期金利の低下を好感してきたIT・ハイテクなどのグロース株が、金利が低下しているにも関わらず売られる場面があるなど、少し不安定さを見せ始めている点には注意が必要です。

 基本的には企業業績を手掛かりに、「とりあえず買えるものを買う」動きは継続すると思われます。

 もちろん、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、オリンピック開催直前に東京都で緊急事態宣言が発令される事態になってしまうなど、あえて日本株を積極的に買いにくい材料もあり、「買い上がり」は難しいかもしれませんが、少なくとも「買い戻し」は進む展開が見込まれそうです。