景気・金利・株価は、密接に連携して動いています。景気が拡大・後退のサイクルを描く中で、金利・株価も一定のリズムでサイクルを描いています。今日は、過去、延々と続いてきた、景気・金利・株価のリズムを解説し、投資に勝つためのアイディアをお話しします。
景気サイクルと、金利・株価サイクルの関係
景気・金利・株価には、一般的に、以下のような関係があります。すべての景気循環で成り立つわけではありませんが、株式運用を考える上で、頭に置いておく必要があります。
景気サイクルと、金利・株価サイクル
日本も米国も、コロナ危機から回復し、景気拡大期に入っているのは確実です。ワクチン接種が遅れている日本の景気回復はやや鈍いですが、米国は好調です。好調すぎて、景気過熱が懸念される状況になっています。日米だけでなく、世界中の国々がコロナからの回復期に入っていると考えられます。
今は日米とも、上の図で黄色の枠で囲んだ「景気拡大の初期から中期」にあると考えられます。日本は景気回復の初期で、米国は拡大中期にあると考えられます。
もし、米景気が過熱し、米国の金融政策をつかさどるFRB(米連邦準備制度理事会)が早期にテーパリング(金融緩和の縮小)を開始せざるを得なくなり、さらに利上げが視野に入ってくると、米国株は「過熱期」に入る可能性もあります。つまり、景気は良くても、金利上昇によって株が上がらなくなる時期です。
今、世界の株式市場の注目点は、米景気がこのまま過熱してしまい、来年は反動で失速するのか、あるいは巡航速度の拡大が2年連続続くのか、見極めることです。
米国株は、このリズムで動いてきた
米国株は過去、景気・金利・株価の「お決まりのパターン」にはまって動いてきたと言えます。もちろん、日本株でも同じパターンは観測されます。ただ、日本では近年、長期金利がゼロに固定されているため、金利サイクルがややわかりにくくなっています。
それでは、2014年以降の、NYダウ平均株価と、米長期金利の変動パターンを見てみましょう。
NYダウと米長期(10年)金利推移(月次):2014年1月~2020年6月(23日)
【1】2014~2016年半ば:景気回復初期
2014~2016年にかけて、米国の景気・株・金利は、「景気回復初期」の動きが延々と続いていました。景気が回復しているにもかかわらず、金利は低下し続けて、株が上昇していたからです。
【2】2016年半ば~2017年:景気回復中期
2016年半ばから2017年にかけて、景気拡大「中期」のパターンに入りました。金利が上昇する中で、株価の上昇が続いたからです。
【3】2018年:景気回復末期
2018年には、金利上昇を嫌気して、株が上がらなくなりました。年末にかけて、NYダウは急落しました。
【4】2019年~2020年3月:景気後退中期
コロナ危機という特殊要因で、景気後退期に入ったため、株価の動きがやや過去のパターンと異なりますが、2020年2、3月の暴落まで見れば、景気が後退する中、金利も株も下がった局面と、とらえることができます。
【5】2020年3~6月:景気後退末期
金利が急低下し、中央銀行がかつてない量的緩和の大盤振る舞いをする中で、株が大きく上昇しています。過去のパターンから読み解くと、景気後退末期の動きです。
【6】2020年7月~:景気拡大初期~中期
米景気が急速に回復する中、量的金融緩和が続けられています。ただ、景気が一気に過熱期に入らないか、懸念が出ているところです。
景気循環に過度にベットすべきではない。「景気1サイクル投資」の勧め
今年も来年も、巡航速度の世界景気拡大が続くと考えるならば、世界的な株高は長期化すると考えられます。ただし、早々に米景気が過熱して、来年にも失速すると、世界景気も腰折れするリスクが出ます。そうなると、世界的な株高は終了時期が近づくことになります。
ただし、景気判断は水物です。将来の景気を正確に予想するのは至難の技です。将来の景気予測が外れることも、よくあります。したがって、景気予測に過度にベット(賭ける)した投資戦略を立てるべきではありません。
それでは、私たちは資産運用において、どういうことに気をつけたら良いでしょうか?
私は、過去25年間、日本株のファンドマネージャーをやり、公的年金や投資信託の運用をしてきました。私が日本株ポートフォリオを組む時にいつも心がけていたのは、「景気1(ワン)サイクル投資」です。
景気が良くなると、いつまでも良い状態が続くと勘違いしがちですが、いつか必ず悪くなります。また、景気が悪くなると、いつまでも悪い状態が続くと勘違いしがちですが、いつか必ず良くなります。
いつ景気が良くなるか、悪くなるか、思い込みで投資して外れると、大けがします。そうならないように、いつでも、景気1サイクル、株を持ち続けるつもりで株の銘柄を選別するのが「景気1サイクル投資」です。
景気が良いときに買った株は、その後、景気が悪くなり、また良くなるまで持ちます。また、景気が悪いときに買った株は、その後、景気が良くなり、また悪くなるまで持ちます。
誰もが景気が良くなる時だけ株を保有し、悪くなる時は株を持っていないようにしたいと思っています。ところが、景気予測は簡単に当たるものではありません。多くのエコノミストが強気のときに、景気は急に悪くなります。みなが悲観の底に沈んでいるときに、突然、景気回復が始まります。
景気を当てて、いいタイミングで売買しようという思いが強すぎると、かえって高値買い・安値売りになります。
私は、ファンドマネージャー時代に投資銘柄を選ぶときは、常に「景気1サイクル」もって、ベンチマーク(東証株価指数)を上回るパフォーマンスが得られると思うものを選んできました。
私は今、日本株は割安で、長期投資で資産形成に寄与すると見ています。個別銘柄を選別することに自信が持てない方は、日経平均インデックスファンドに「景気1サイクル投資」していくだけでも、良好なリターンが得られると予想しています。景気1サイクルですから、今後、景気が一度悪化し、そこから回復するまで持つということです。
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