日経平均は上振れと下振れを見せるもレンジ内にとどまる

 先週末6月25日(金)の日経平均株価終値は2万9,066円となり、節目の2万9,000円台に乗せて週間の取引を終えました。前週末終値(2万8,964円)からは102円高と上げ幅は大きくはないものの、週初に大幅下落していたことを考えれば、かなり頑張った印象です。週足ベースでも3週連続の上昇となりました。

 今週は、いわゆる「月またぎ」で7月相場を迎えることになりますが、月末の国内株市場が下落しやすい傾向があることや、週末の7月2日(金)には、月初恒例の米雇用統計の発表が予定されています。

 普通に考えれば、「米雇用統計待ちの様子見が強まりそう」と考えられますが、ただ、来週7月5日(月)の米国市場が休場というスケジュールのため、株式市場が前のめりで動き出す展開もあるかもしれません。

 まずは早速、いつものように足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年6月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、冒頭でも触れた通り、週初6月21日(月)は大幅下落でのスタートとなりました。「窓」空けで25日移動平均線をまたぐ格好で一段安となっただけでなく、一時2万8,000円台を下回る場面もありました。

 ただし、翌22日(火)からは週末にかけて反発基調を描いていきました。22日(火)は25日移動平均線水準を回復させる大幅高となり、その後もジワリと株価を上げていき、75日移動平均線の上放れを試すところまで戻してきました。

 FOMC(米連邦公開市場委員会)前後で上振れと下振れを見せたものの、結局は5月終盤から続くレンジ内に収まり、中期的な相場の基調自体はあまり変わっていないと考えられます。それと同時に、米雇用統計を控える今週も、FOMCの時と同じように発表前に相場が動き出す可能性もありそうです。

■(図2)日経平均(週足)とMACD(2021年6月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 また、図2は日経平均の週足チャートですが、13週と26週移動平均線との「デッド・クロス」を何とか回避することができました。チャートを過去にさかのぼってみても、両者のクロスがざっくりとした中期的なトレンド転換を示唆していることが分かります。

 そのため、再び13週移動平均線が上を向くことができるかが今後の焦点になります。ただ、下段のMACDがまだ下向きであり、相場に軟調な場面が増えると、トレンド転換のシナリオが浮上してくるため、油断はできない状況です。

強い回復力の米国株市場、上昇基調復活には「買いの継続」がポイント

 同様に、NYダウ平均株価の週足チャートも見ていきます。

■(図3)米NYダウ(週足)ボリンジャーバンドとMACD(2021年6月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 NYダウは、何度か崩れかかる場面がありながらも、「バンド・ウォーク」の上昇基調を長期間継続していることが分かります。

 こうした相場展開は、大きな陰線が出現しても、翌週にはそれを打ち消す大きな陽線が出現することによって維持されてきました。つまり、「回復力」の強さがカギとなっているわけです。足元でも、バンド・ウォークの範囲である+1σ(シグマ)水準を回復させています。

 とはいえ、下段のMACDはこれまでよりも明確に、MACDがシグナルを下抜けており、再び上昇基調に戻すには買いの継続がポイントになります。

■(図4)米NASDAQ(週足)とMACD(2021年6月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 買いの継続については、米NASDAQも同じです。上の図4は前回のレポートでも紹介したのですが、先週のNASDAQは最高値を更新し、「三角もちあい」を上抜けてきました。下段のMACDもシグナルとの上抜けクロスしそうな状況でもあります。

 今週の米国では、6月雇用統計以外にも、4月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数や、6月ADP全米雇用リポート、6月ISM製造業景気指数などの経済指標の発表が予定されていますが、先日のFOMCでFRB(米連邦準備制度理事会)のタカ派姿勢への意識が強まっていることもあり、これらの結果が良好過ぎても、利上げやテーパリング(量的緩和縮小)が早まるとの警戒が強まりやすくなるかもしれません。

 したがって、前回のレポートでも指摘したように、「少し先の金融政策よりも、足元の業績動向」に着目した買いの強さが試されることになります。今週の国内では、7月1日(木)に日銀短観が公表されるほか、ニトリHDやJ.フロント リテイリングなど、小売業の決算も予定されています。

 先週の国内株市場でも、ニトリHDやメルカリ、川崎汽船など、業績観測報道や業績の上方修正を受けた銘柄がしっかりと値を上げていたこともあり、日銀短観の結果が追い風となれば、銘柄物色の動きが活発になることも期待できます。

 ただし、週末の7月4日(日)には東京都議選の投開票日という、読みにくい政治イベントが控えているほか、最高値を更新する米株市場の上昇に日本株がついていけていない面があるのも気掛かりです。

 先週末25日(金)の米国株はNYダウが200ドル以上上昇したほか、S&P500も最高値を更新した一方で、日経225先物の価格は小幅安となっています。

日経平均の価格メドを確認

 最後に、日経平均の価格メドについても確認します。

■(図5)日経平均の移動平均線乖離率(25日)のボリンジャーバンド

出所:MARKETSPEEDⅡのデータを元に筆者作成

 上の図5は25日移動平均線乖離(かいり)率の推移をボリンジャーバンドでみたものです。ここ何回かのレポートでは75日の移動平均線乖離率のボリンジャーバンドを紹介しましたが、先週の日経平均は25日移動平均線を挟んだ動きだったため、今回は25日で見ていきます。

 先週の25日移動平均線乖離率は週初の急落で▲2σまで下落しましたが、その後の株価上昇によって、中心線(MA)あたりまで戻してきました。

 先週末25日(金)時点で計算すると、25日移動平均線は2万8,888円ですので、MAで2万9,078円、+1σで2万9,416円、+2σで2万9,754円となります。反対に、下落に転じた場合は▲1σで2万8,740円、▲2σで2万8,405円へ向かうことになります。

 もちろん、これまでのレポートでも指摘してきたように、移動平均線乖離率やボリンジャーバンドの値は今後の値動きで変化しますので、あくまでも現時点でのざっくりとした目安になります。