≫投資を失敗させる損切りNG思考:「損切り貧乏」回避テク2を読む
損切り貧乏とはいったい何か?
皆さんは、「損切り貧乏」という言葉を聞いたことがありますか。これは、損失が大きくなる前に小さい損失で保有株を売却する「損切り」が積み重なった結果、損失が膨らんでしまうという状況を指します。
このことをもって、損切りに対して否定的な考え方を持つ方も多いようですが、筆者は損切り肯定派です。というより、株式投資で大失敗しないためには、損切りは必須と考えています。
実際、筆者が損切りをしなかった結果、2008年のリーマン・ショックで大失敗を犯しました。もし、適切なタイミングで損切りを実行していたら、極めて小さいダメージで切り抜けることができたのです。
この失敗を乗り越え、筆者が20年以上も株式投資を続けて、利益を上げることができたのは、適切な損切りを実行していたからにほかなりません。おそらく損切りを実行していなければ、今ごろ多額の含み損を抱えた塩漬け株で首が回らなかったでしょう。
損切り貧乏に陥る理由(1)上昇局面以外で手を出す
とはいうものの、確かに「損切り貧乏」に陥ってしまうケースは少なくありません。原因の一つとして挙げられるのがマーケットの環境です。大部分の銘柄が上昇している全面高のときは、損切り貧乏には、まずならないはずです。買った株が次から次へと上昇していくからです。
ところが、株価上昇局面が終わり、下落局面に突入すると、損切りが増えてきます。これも当然の話で、下げ相場で株を買っても株価が下がってしまうので、結局は損切りになってしまいます。
したがって、株価が下がっている途中の下降トレンド銘柄に安易に手出ししないことが回避策の一つになります。月足の株価チャートがとがった山のような形になっていて、株価が天井をつけた可能性が高いと思われる銘柄への買いも控えておくほうが無難です。
また、株価のトレンドが明確に出ておらず、横ばいの動きが続いている状況も同様に、損切り貧乏に陥りやすくなります。
上昇トレンドになったと思って買ったのに、すぐ株価が伸び悩んで下落に転じ、下降トレンドになって損切り…ということが何度も続いてしまうからです。
これを完全に回避するのは難しいのですが、少なくとも現時点で明確なトレンドが出ておらず、横ばいの動きとなっている銘柄への買いを控えるだけでも防止効果はあると思います。
損切り貧乏に陥る理由(2)損切りルールが適切ではない
損切り貧乏になってしまう、もう一つの大きな理由は、損切りのルール設定が適切でないことにあります。
最も危険なのは、損切りのルール設定がない人です。ルールがないと、マーケットの動きにほんろうされてしまい、株価が大きく下落したときに半ばパニック気味に持ち株を売却してしまいます。本来なら株価が大きく下がる前に損切りをすべきなのに、株価が大きく下がってから損切りをすれば、損切り貧乏になってしまうのは当たり前です。
また、よく言われる話として、「購入価格から10%値下がりしたら損切り」というものがあります。
確かに損失の拡大を防ぐために損切りのルールは設けるべきですが、筆者の個人的な感覚としては、「10%のマイナスで損切り」というのは、ちょっとマイナスの割合が大きいように思います。長期的な下落相場であれば、おそらく買ってもほとんどの銘柄が下がってしまいますから、マイナス10%の損切りを繰り返していては、損切り貧乏になってしまう可能性が高いです。
かといって、「マイナス1%」で損切りとか、「25日移動平均線を1円でも下回ったら」損切りというように、バッファーが小さすぎるのも考えものです。ほんのわずかの株価の変動で損切りになってしまい、まさに小さな損が積み重なってしまいます。
筆者は「25日移動平均線からのマイナスかい離が2%程度」で損切りとしていますが、例えばマイナス5%までというように、もう少しバッファーを持った方が余計な損切りを少なくできます。
一方で、バッファーを大きくすると、損切りとなった場合の損失も大きくなりますので、ご自身でしっくりくる水準を決められるといいと思います。
損切り貧乏に陥る理由(3)逆に「損切らない貧乏」になっている
筆者のところにも、個人投資家の方から「損切りが続いて損失が積み重なってしまう」という相談が寄せられます。
また、筆者自身も損切りが何度も続くことがあり、当然ながら気持ち的にもよくありません。
筆者は、損切りが続く時期もある一方、マーケット環境が好転すれば大きな利益を得ることができるため、トータルすれば十分なプラスが期待できることを長年の投資経験から知っています。だから損切りが続いても我慢できます。
でも、株式投資を始めたタイミングが下落相場だったり、横ばいのトレンドだったりすると、いきなり損切りの連続…ということも考えられます。
そんな時にぜひ皆さんに確認していただきたいのが、「もし損切りせず、持ち続けていたらどうなっていたか」ということです。
損切りした結果5%のマイナス、でも損切りせずに持ち続けていたらマイナス20%の含み損…というのであれば、損切りをした結果、マイナスを小さく抑えられたことになります。マイナス20%をマイナス5%で抑えられたのなら、これは差し引きプラス15%と同じ効果を得ているのです。
しかし、損切り貧乏になるからといって、適時に損切りを実行しないと、損失がさらに膨らみ「損切らない貧乏」になってしまうのです。
ところで、損切りした後にその株の株価が上昇しても買い直しをしない方が多いですが、それも損切り貧乏の原因の一つになります。一時的な下落で損切りとなってしまっても、その後株価が切り返して大きな上昇につながるケースも多々あるからです。
したがって、筆者は損切りした銘柄については、損切り後も日々株価チャートをウオッチして、反転上昇に転じたときに買い直しをするようにしています。
さらに次回は、巷(ちまた)で語られている損切り貧乏の解決策が、実際には解決策になるどころか、逆に損失が膨らんでしまう恐れすらあることについて、ご紹介します。
損切り貧乏を恐れて損切りしない、というのは本末転倒です。まずは損切り貧乏になる原因を知り、それをできるだけ回避する方法を知った上で、適切なタイミングで損切りをしていきましょう。
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