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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]日本株:今年は「バリュー優位」来年は「グロース優位」と予想
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 本コラムで、今年はバリュー(割安株)優位が続くと予想を書いていることに対し、読者の皆様から「賛成」「反対」他いろいろなコメントをいただき、ありがとうございます。今日は、「バリュー対グロース(成長株)、どっちが良い?」について、私の考えをまとめてお話しします。

日経平均反発。業績回復が続く期待を反映

 日経平均株価は18日、582円高の2万8,406円と反発しました。日本の景気回復が遅れる懸念から日経平均は売られてきましたが、米景気・中国景気が好調で、日本もその恩恵を受けて業績回復が続く期待があることから、下がったところで押し目買いが入りました。

 以下のチャートをご覧いただくとわかる通り、2月以降、NYダウは堅調なのに、日経平均株価は軟調です。米景気が好調なのに日本の景気回復が遅れる懸念が出ており、日米の景気モメンタム(勢い)の差が、そのまま株価パフォーマンスの差にあらわれています。

NYダウと日経平均の日次推移:2020年10月1日~2021年5月18日(NYダウは5月17日まで)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 私は、年後半、米景気・中国景気拡大の恩恵を受けて、日本の景気回復色も強まると予想していますので、今は「景気敏感バリュー株」の買い場と判断しています。

ここからの日本株上昇をけん引するのは景気敏感バリュー株と予想

 2021年に入ってから、バリュー株の上昇が目立っています。中でも、景気敏感バリュー株の上昇が目立っています。一方、2020年の上昇率が高かったグロース株は、2021年は上値が重くなっています。そのことが、以下TOPIX(東証株価指数)バリュー指数、TOPIXグロース指数の動きを見るとわかります。

TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の日次推移:2020年12月30日~2021年5月18日

出所:QUICKより作成。2020年12月30日の値を100として指数化

 景気敏感バリュー株とは、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が低く、配当利回りが高い、景気敏感株のことです。金融株・資源関連株・製造業に、景気敏感バリュー株が多数あります。

 そのバリュー株が、今年に入ってから買われるようになっています。世界景気回復にともなう米金利上昇で金融株が買われ、原油価格上昇で資源関連株が買われ、製造業の景況改善で自動車・鉄鋼・化学株などが買われています。

 一方、グロース株には、コロナ禍でも業績好調だったIT関連株などが含まれます。

 2017年から2020年まで4年間、グロース株好調・バリュー株不振が続き、グロース株はやや割高、バリュー株がかなり割安となったため、2021年にはグロース株を売ってバリュー株を買う流れが出ています。

TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の次推移:2009年末~2021年5月(18日)

出所:QUICKデータより作成。2009年末の値を100として指数化

今年、バリュー優位が続くと考える2つの理由

 バリュー優位は、今年1年くらい続くと予想しています。その理由は、以下2点です。

【1】バリュー・グロースのバリュエーション格差がいまだに大きい
 2021年に入ってからバリュー優位が続いているとは言え、それはごく短期的なことです。2017年から2020年まで4年、グロース株ばかりが上がりバリュー株が低迷する時期が続いた結果、グロース株はやや割高、バリュー株はかなり割安になっていると判断しています。

 したがって、以下のイメージ図で示した、割安株相場が今年いっぱいは続くと予想しています。

成長株相場から割安株相場への転換(イメージ図)

出所:筆者作成

【2】「20世紀に逆戻り」の経済環境が今年いっぱい続くと予想
 割安な株を買えば、すぐに見直されて株価が上昇するというわけではありません。「バリュートラップ(割安のワナ)」と言って、割安株の割安がいつまでも修正されず、株価低迷が延々と続くこともあります。

 割安株が見直されるには、なんらかのトリガー(きっかけ)が必要です。私はそのトリガーがすでに起こっており、それが今年いっぱい続くと考えています。それが、今年1年、バリュー優位が続くと予想する、もっとも重要な理由です。そのトリガーとは、一言でいうと、「20世紀に逆戻り」の経済環境です。

 今、米国などでリベンジ消費(コロナ禍でできなかった消費がまとめてドンと出てくること)が盛り上がっています。一時にドンと消費が出るため、「モノ」が一時的に不足しています。そのため、資源価格が上昇、インフレが復活、製造業の景況が急激に回復し、米長期金利が上昇しつつあります。

 この環境は、一言でいうと、「20世紀に逆戻り」です。かつて、割安株が活躍した、1980年代後半や、2000年代前半の環境に近くなっています。

 その結果、今年は、私が「3大割安株」と呼んでいる「金融株・資源関連株・製造業」の業績モメンタムが強い年になると予想しています。一時的に、金融株・資源関連株・製造業が活躍する20世紀の経済環境に戻ると考えています。

 過去に、日本株でバリュー株優位が長く続いた時は、いずれもインフレや金利が上昇した時でした。代表的なものに以下があります。

◆1980年代後半のバリュー相場
円高と貿易戦争でグロース株(ハイテク株)がさえない中、内需中心にバブル景気が盛り上がり、バリュー株が活躍。

◆2000年代前半のバリュー相場
金融株や重厚長大産業が、構造改革で復活。ブリックス(中国・インド・ブラジル・ロシア)と言われる新興国の成長加速で、資源価格が急騰、世界的にインフレ懸念が強まり、金利が上昇。

 以上の理由から、今年前半の日本株市場では、景気敏感バリュー株のパフォーマンスが強くなると考えています。これから始まる「業績相場」に備えて、今年増益率が高く、PERが低く、配当利回りが高い「景気敏感バリュー株」を買っていくべきと考えています。

来年、グロース優位に戻ると予想する理由

「20世紀に逆戻り」の経済環境は、今年限りと考えています。来年には、再び、資源価格が下がり、世界的にインフレ率・長期金利が低下すると考えています。そうなると、バリュー株優位は続かなくなると考えています。

 来年は、21世紀の経済環境に戻り、AI(人口知能)・5G(第5世代移動体通信)を活用した第4次産業革命が世界中で加速すると考えています。そうした環境下で、再びIT関連の小型成長株が上昇する環境になると予想しています。

 以下に、私が過去に売買してきた小型成長株の典型的な株価変動パターンを描いたチャートを作りました。こちらをご覧ください。

乱高下する人気の小型成長株:高値づかみすると大変(イメージ図)

出所:筆者作成

 上の例では、成長株の黎明(れいめい)期・急成長期・成熟期の3つのステージがそれぞれ5年続くとしています。それぞれ、以下のようなステージです。

【1】黎明期:利益は出ないが、将来、大きな夢がある時期。
【2】急成長期:実際に売上高・利益が大きく伸びる時期。
【3】成熟期:最高益の更新は続くが、年率5%程度しか増益しなくなる。

 小型成長株を長期で保有すると高いリターンが得られますが、それでも短期的には急落することがあります。上のチャートで赤い星印をつけたところで買うと、ひどい目にあいます。そうならないようにするには、グロースが買われる相場のリズムを理解する必要があります。

 今年は、業績モメンタムの強い、景気敏感バリュー株を買うために、グロース株は売られやすくなっています。ただし、バリュー優位が続く中、将来有望と考えられる小型成長株が、少しずつ株価水準を下げているところです。来年のグロース復活を考えて、少しずつ買いを入れていって良いタイミングに入りつつあると考えています。

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