NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)、つみたてNISAについて、読者の方からいろいろな質問をいただいています。今日は、その中から3つの質問にお答えします。
NISAとつみたてNISA概要比較
まず、最初に制度概要を説明します。NISAとつみたてNISAは、どちらも売買益や、受け取り利息・配当金などの運用益が非課税になるメリットがあります。課税口座(分離課税)で得られた運用益からは20.315%の税金(所得税および住民税、復興特別所得税)が差し引かれますが、NISAやつみたてNISAなどで得られた運用益は非課税です。
NISAには、2014年から始まった従来型「NISA」と、2018年から新たに始まった「つみたてNISA」の2種類があります。1年間にどちらか1つしかできません。両者の大きな違いは、非課税となる期間、年間上限額、そして、対象商品の3点です。
概要は、以下の通りです。
NISA・つみたてNISA概要
これまでNISAやつみたてNISAをやってこなかった方は、今年から、始めるべきと思います。これまで投資してきた方は、継続して投資していきましょう。
現在のNISA制度は2023年まで続きます。2024年から制度内容が改定され「新NISA制度」が始まります。制度内容は少し変わりますが、2024年以降も毎年、NISAまたはつみたてNISAで新規の非課税投資枠が得られることは変わりません。
読者からの質問
今日は、以下、3つのご質問に回答を書きます。
【質問1】NISAとつみたてNISA、どちらか迷う
【質問2】非課税期間が満了するまでに売る必要ある?
【質問3】NISAでは高配当株を買ったらいい?
質問1への回答:NISAとつみたてNISA、どちらを選ぶべき?
NISAかつみたてNISA,どちらか1つしか選べません。NISAを選んだ年は、つみたてNISAはできません。つみたてNISAを選んだ年は、NISAはできません。
NISAは、1年間に120万円まで非課税枠がありますが、5年しか有効ではありません。単純計算すると5年間で、120万円×5年=600万円の非課税枠を使えることになります。
一方、つみたてNISAでは、40万円しか非課税枠が得られないものの、20年間有効です。単純計算すると20年間で、40万円×20年=800万円の非課税枠を使えることになります。どちらが有利とは、一概に言えません。
すでに、120万円の投資資金をお持ちの方は、非課税枠が大きいNISAを選んだ方が良いでしょう。年間40万円くらいしか投資できず、毎月積み立てでコツコツ投資していきたい方は、つみたてNISAの方が良いと思います。
投資対象の違いも考慮に入れる必要があります。つみたてNISAは投資信託だけになります。個別株に投資したい場合は、NISAを選ぶ必要があります。
つみたてNISAは、国の定めた条件を満たした投資信託、またはETF(上場投資信託)しか買うことができません。ただし、手数料が高すぎず、インデックスファンドなど適切に分散投資ができているファンドしか投資対象として指定されていません。
手数料が高すぎる、不適切なリスクを取っている投信を、ついつい買ってしまう人は、つみたてNISAにすれば、その心配がありません。
1年ごとにNISAとつみたてNISAを交互に使うこともできます。2021年はNISAを使い、2022年はつみたてNISAにするといった具合です。
質問2への回答:非課税期間が満了するまでに売る必要ある?
枠を得てからNISAなら5年後、つみたてNISAなら20年後に、非課税期間は満了します。たとえば、今年(2021年)に得たNISA枠は、2025年末で終了します。つみたてNISA枠は2040年に終了します。
NISA口座で投資した株などの金融商品を期間満了前に売る必要はありません。そのまま保有し続ける場合、保有している金融商品は、課税口座に移管されます(注:非課税期間を延長しない場合)。
課税口座に移管される金融商品の簿価(買値)は、非課税期間が満了した年の年末の時価となります。たとえば、NISA口座でA社100株を1,000円で投資したとします。その株が、NISA期間が満了する5年目の年末に1,500円に値上がりしていたとします。すると、課税口座に移管されるA社の簿価(買い値)は、1,500円となります。
したがって、課税口座に移管されたA社株を1,500円で売っても売却益は発生しないので課税されません。ただし、課税口座に移管されたA社株を1,600円で売却した場合には、1,500円からの100円の値上がり分に課税されます。一方、A社株を、1,300円で売却した場合には、1,500円からの値下がり200円分の売却損が発生します。
ここで、1つ注意が必要です。NISA口座で1,000円で投資したB社100株が、NISA期間が満了する5年目の年末に800円に値下がりしていたとします。すると、課税口座に移管されるB社の簿価(買い値)は、800円となってしまいます。
このB社株が1,000円に戻ってから売った場合に、800円から1,000円の値上がり200円に課税されます。もともと1,000円で買った株を1,000円で売るのに、簿価が800円に下がってしまっているために、売却益が発生してしまうわけです。
このように、投資した銘柄が値上がりする場合は、売却しなくても値上がり分が非課税になるメリットがありますが、投資した銘柄が値下がりしている場合は、非課税期間満了時に、簿価が下がってしまうデメリットがあります。
質問3への回答:NISAでは高配当株を買ったらいい?
NISAで株式投資をする場合、配当利回りの高い大型バリュー(割安)株を買っていくのは良い戦略だと思います。もちろん、小型成長株を買って、値上がり益をねらうのも悪くありません。どちらの戦略をとっても良いと思います。
ただし、高リスクの小型成長株に投資すると、大きく値上がりするチャンスもありますが、値下がりするリスクも相対的に大きくなります。値下がりしたままNISA期間が満了してしまうと、質問2で説明した通り、非課税メリットがなくなるだけでなく、簿価が引き下がる問題があります。
堅実に資産形成をはかっていくには、高配当利回り株に投資して、毎年得られる配当金を非課税で受け取っていくのも良いと思います。
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