井上はじめさんのプロフィール

 2007年、手取り月収20万円以下だった新入社員時代から月々10万円を世界経済に連動するインデックスファンドに全力で積み立て投資して大成功。2013年からはその利益の一部で不動産投資なども行い、33歳の若さで資産1億円を達成しました。「自分は投資家ではなく節約家」がモットー。

 ブログは「33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由」。同名の著書(新潮社)を昨年発売しました。

33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由
2020年3月25日発売/新潮社
1,540円(税込)

投資スタイル

 徹底した節約で貯めた資金を毎月インデックスファンドに全力積み立て投資。

金融商品の種類 投資先・銘柄名など 割合
不動産 ―― 40%
インデックス 世界経済に連動するインデックスファンド 30%
仮想通貨 ―― 15%
国内株式 ―― 10%
金・プラチナ ―― 5%

銘柄選びの基準

  • 世界経済の成長に合わせて値上がりしそうなインデックスファンド。販売手数料無料のノーロードタイプで信託報酬が低めのもの。

銘柄を売るときの基準

  • 数年単位で見て上昇相場のときは損益がプラス20%で売却。
  • 数年から10年単位で見て下降相場のときは絶対に売却せず、損益がプラス100%以上になったら売却。

 世界経済は上昇→下落→再上昇という循環を繰り返すという考えから上記ルールを設定。売却後は毎月の積立額を増やして、世界経済に連動するインデックスファンドに再度、積み立て投資。売却資金の一部で、不動産や優待株など他の投資も行う。

初心者時代の体験談

Q:投資を始めて最初の成功体験を教えてください。
A:リーマンショック後の資産低迷に耐えて投信積み立てで1,300万円以上の利益!

 世界経済に連動するインデックスファンドに毎月積み立て投資を始めたのは2007年で、翌2008年にはリーマンショックが発生し、世界的に株価が大暴落する時期でした。

 それから5年以上、積み立て購入していた投資信託の基準価額は下がり続け、2012年までの5年間で積み立てた700万円の基準価額は550万円まで下がりました。でも、景気の回復を信じてコツコツと積み立てを続けていたら、2013年に基準価額が反転上昇。

 総額800万円の積み立て投資で2,000万円を超える資産を築くことに成功しました。不景気の時期こそ、しっかり積み立て続けることが、資産を大きく増やす極意だと感じました。

Q:初心者時代の失敗談を教えてください。
A:株の短期売買にのめり込み、生活を楽しめなくなりました…。

 ブログ、書籍、セミナーなどいろんなところで学び、毎日のように個別株の短期売買をしていたときがあります。でも、のめり込み過ぎてしまい、毎日の食事の際の会話まで株の話が中心になってしまいました。

 株式投資に興味がない妻は相当つまらなかったと思います。大きな損失が出ると、バツが悪くなって急に株の話をしなくなるので、逆に怪しまれました。

 当時楽しみにしていた沖縄旅行の最中に、保有していた株が大幅に値下がりして、せっかくの旅行なのに、気持ち的に楽しめなくなったこともありました。旅の道中も「旅行に来る前にちゃんと売却していたら、その利益でこの旅行代もゼロ円だったのになぁ」とばかり考えていました。

 最初はワクワクして始めましたが、株の短期売買が面白かったわけではありません。短期売買してもうかると思っていただけで、うまくいかなくなると、チャートを見る行為すら苦痛になりました。

 のめり込んでいたときは個別株の値動きを毎日チェックしていましたが、結局4カ月くらいで短期投資はやめてしまいました。

 資産運用で大きな成果を出すなら、何よりも続けることが大切です。どんなに忙しくても、長期的に続けられる投資の方法を模索することの大切さを学びました。個別銘柄の短期売買は、自分には向いていなかったんだと思います。

Q:資金が少なかった時代にやってしまった失敗や、後悔していることなどを教えてください。
A:繰り返しになりますが、短期売買は本当にやらなかったほうがよかったです…。

 少額資金でしたが、短期売買は本当にやらなければよかったな、と後悔しています。5回勝って、1回負けても、その1回の負けが大きくて、5回分の勝ちが全部相殺されて逆にマイナスになることもありました。

 チャートを単に見るだけではなく、しっかりチャート分析することが本当に好きな人にしか短期売買は向いていないんじゃないかな、と思っています。

Q:さまざまな成功・失敗を経て確立した投資手法や投資哲学を教えてください。
A:世界経済の成長を信じてインデックスファンドに毎月、全力積み立て投資。投資の成果は10年サイクルで考えます。

 人口統計データによると2050年まで世界の人口は増え続け、それに合わせて世界の経済も成長することを知りました。

 とはいえ、一直線に右肩上がりで成長するのではなく、長期的に見たらリーマンショックのような不景気だって、この先、何度か起こる可能性があります。これから、どんなふうに株が上がるのか、また、いつ急激に下がるのかも分かりません。

 そうした経験を積んで「購入するタイミングを見極めるようなことはしない。今が好景気なのか不景気なのかを考えることもしない(将来、振り返って初めてわかることだから)」というのが僕の投資哲学になりました。

 その上で以下の3つのことを守っています。

  • 世界経済の成長に合わせて価格が上昇するインデックスファンドに毎月、全力の金額で積み立て投資しながら、いつか来る暴落に備えて自分が決めた売却ルールはしっかり守る。
  • 売却して得たお金は、10年に分けて毎月の積立金額に上乗せして、再度、投資に回す。
  • 10年に分けると、しばらくの間は積み立てに使わないお金が出てくるので、5年以上積み立てに使わないお金は個別株、金、仮想通貨、不動産などに振り分けて、新たな投資に使う。

井上はじめさん流・少額ポートフォリオ

1,000円~10万円で投資するなら?

銘柄名 商品の種類 割合
世界経済に連動するインデックスファンド インデックスファンド 100%

●この銘柄を選んだ理由

 1,000円、1万円、3万円、10万円まで、すべて同じ「世界経済に連動するインデックスファンドに100%」というポートフォリオを選びました。

 具体的には全世界株式に連動するインデックスファンドですが、全世界の株式に投資できていれば、その他の金融商品でポートフォリオを組む必要がなく、1つのファンドだけで究極の分散投資ができている理想的な状態だと思うからです。

 米国株オンリーや個別株投資に比べると、世界中に広く分散投資しているのでお金の増え方はゆっくりかもしれませんが、少額で始める投資初心者の方にとって一番大切なのは、始めたばかりの最初の投資では失敗しないこと!

 僕の中では、「全世界に分散されたインデックスファンドに毎月積み立て投資することが、最も失敗する確率が低い」と思っているので、どの金額で行う場合も(たとえ1,000万円でも)、「世界経済に連動するインデックスファンドで100%」を選定します。

●この銘柄の売り時はいつ?

 上記に書いた通り、数年単位で見て上昇相場のときは損益がプラス20%で売却、数年から10年単位で見て下降相場のときは絶対に売却せず、損益がプラス100%以上になったら売却と考えています。

 売却するタイミングが来たら、そこで1度、成功体験をしっかり身につけた上で、売却後に積み立て投資を再開しながら、他の金融商品への投資についても考えていくのがいいと思います。

つみたてNISA枠またはNISA枠で投資するなら?

銘柄名 商品の種類 割合
世界経済に連動するインデックスファンド インデックスファンド 100%

 上記回答と同じです。

投資ビギナーへのアドバイス

Q:初めて買った銘柄を売るときのタイミングや気を付ける点について教えてください。
A:自分が納得できる売買ルールを作る。そして、それを守ること。

 投資は心理的な負担が大きいものです。売買ルールを曖昧にしていると、予期せぬ値動きをしたときに、どうしたらいいか分からなくなり、心理的に大きな負荷がかかると、場合によっては本業にも影響を及ぼしてしまいます。

 だから、投資で一番大切なことは、自分なりに納得できる売買ルールを作ること。そして、それを守ること。

 それ以外にないと思っています。

Q:少額での投資が大きな利益を生んだのはどんなタイミングでしたか?
A:毎月10万円を全力積み立てしたからこそ、景気回復の大波に乗って人生が好転するほど成功できました。

 僕の場合、世界経済に連動するインデックスファンドに積み立て投資を始めた社会人1年目から「毎月10万円」と決めていました。僕が投資をする理由は、将来をいい方向に導きたいからであり、そのためには毎月の積立額が少額すぎると、成果も少ないと思っていたからです。

 100万円積み立てて、それが200万円になっても「将来安心か?」と聞かれると、首を縦には振れません。10年20年かけて1,000万円くらい積み立て、それが2,000万円以上といった大金になって初めて、将来がいい方向に向かうのだと思っています。

 世界経済への投資は、僕にとって銀行預金のような感覚です。1つの会社や1つの国ではなく、全世界に分散投資しているので、すべてが倒産する心配もしていません。分散している分、値動きは緩やかですが、世界の人口が増え続ける限り、将来的に確実に値上がりが見込める、と考えています。

 だからこそ、会社員生活で手取り月給が最大22万円でも、節約生活を実践し、生活費を除いて毎月10万円を全力で積み立てました。それを社会人1年目から8年間続けたおかげで、人生が大きく好転しました。

Q:「投資は怖い」という気持ちがなくなったのは、どんな経験をしてからですか?
A:リーマンショック後に低迷した世界経済が再び持ち直して、積み立て投資の成果が出たときです。

 僕は株価の暴落や世界経済が不景気になることを「怖い」とは思いません、逆に「チャンスだ」と考えます。

 なぜなら、僕の資産が大きく増えたのも、2008年のリーマンショック後の経済回復の時期だったからです。

 2021年現在は、売却後の積み立てルールも踏まえて、毎月50万円を世界経済に連動するインデックスファンドに積み立てていますが、これからさらにコロナによって大きく値下がりしても構いません。

 ずっと積み立て続けるだけじゃなく、売却ルールがあることで、毎月全力の積立額でも、心穏やかに投資を続けていられます。

 コロナ禍でも世界の人口は確実に増え続けています。そして資本主義社会が続く限り、人はお金を求めるもの、と思います。僕だって、手取り22万円以上に稼げるならもっと稼ぎたいですし…。

 しかしそれは、企業も国も同じです。その結果がGDP(国内総生産)になって、世界全体で見たGDPも成長し続けるんだ、と気づいたことが、僕の人生最大の発見です。

Q:毎月の投資額を増やすために気をつけていることは?
A:我慢ではなく「工夫」して節約することで、できるだけ、たくさんのお金を投資する。

 僕は投資によってお金を増やすことができましたが、自分自身は「投資家」ではなく「節約家」だと思っています。

 僕の節約術は、ここですべてを語ることはできませんが、大切にしていることは、我慢ではなく「工夫」するということ。

「節約=我慢」と感じる人も多いみたいですが、携帯電話、公共料金、保険、習い事や会員費、サブスクなどの契約を少し見直すだけで、毎月の支出額をかなり減らすことができます。

 自分にとって本当に必要なものなのか。欲しいものはどのサイトで、どうやって支払うのが一番お得か。お金の使い方に関しては、常に最善のルートを考えています。

 自動販売機のジュースやコンビニのスイーツなども買いますが、毎日の自分へのご褒美とかではなく、自分がそれを買ったら本当に幸せだと感じられるときだけ買うようにしています。

 先ほども言ったように、投資といっても、お金の預け先を銀行ではなく、世界経済に変更しているだけです。それ以外は無駄遣いせず、しっかり節約しておけば、より確実にお金を増やすことができます。

 少額の投資でもしないよりはしたほうが絶対にいいと思います。しかし、どうすれば投資額を増やすことができるか、ぜひ「工夫」してみてくださいね!

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