★今回の記事『鮎川義介に学ぶ、資産運用での成功の近道:資産運用で人格を磨く(10)』のオンライン解説を、5月22日(土)17:00~17:30に行います(参加費無料)。
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鮎川義介というと、「日産自動車」「日産コンツェルン」というワードが浮かぶ人も多いでしょう。私にとって、鮎川義介と「渋沢栄一に学ぶ、企業経営者の人物観察法:資産運用で人格を磨く(8)」で取り上げた渋沢栄一の2人は別格の人物です。格が違うのです。それは、この2人は私財を蓄えることを考えずに、日本の産業を強くすることと国民大衆の繁栄に人生を賭けた人物だからです。
鮎川義介は、東京帝国大学時代に、「自分は絶対に金持ちにはならない。ただし、大きな仕事はしてやろう。できれば誰もやることができないような、しかも社会公益に役立つ方面を切り拓いていこう」と誓います。そして、それを体現したのが、「日産コンツェルン」です。
日産コンツェルンとはどのようなものだったかを聞かれると「う~ん…」となる人も多いのではないでしょうか?
鮎川義介の目指した「国民の産業投資信託」と日本産業
日産コンツェルンは、公開持株会社である日本産業を中心として、その傘下に、日本鉱業(現:ENEOSホールディングス)、日立製作所、日産自動車、日本化学工業(現:日産化学)、日本油脂(現:日油)、日本水産、日本ビクター(現:JVCケンウッド)、日産火災海上保険(現:損害保険ジャパン)といった蒼々たる企業が並ぶ、1つの企業集団でした。日立製作所が日産コンツェルンを構成する一企業だったことに驚かれる方もいるでしょう。
中心となる日本産業は、「株式を一般公開して国民大衆から資金調達し、事業から得た利益を安定的に株主である国民に還元していく国民の産業投資信託になる」という構想のもとにスタートしました。
そして、その構想どおり、株式を公開し、国民大衆から資金調達して、その資金で既存企業の買収や新規事業に進出していきました。買収した既存企業においては株主割当て増資を活用して、さらに資金調達し、事業の再編も行い、機会を見て、その会社の株式公開・売出しも行っていきました。
一般大衆から調達した資金をもとに、産業を拡大させていく「国民の産業投資信託」を実現し、10数年後には、三井、三菱、住友といった財閥を上回る企業集団となっていったのです。
なぜ、鮎川は株式公開をしたのでしょうか? 当時、三井や三菱、住友といった財閥は株式公開しておらず、同族が封鎖的に所有・支配し、富を集中させていた構造がありました。鮎川はそれに反発するように、国民大衆に株式を公開して、大衆とともに栄える理想を目指したのです。
鮎川は、次のようなことも言っています。
「天体の運行が自然法則のもとに動くように、経済も自然の摂理に従って推移する。そうであるとすれば、事業を行っていく上で最も大切なところは、真理の王道にあると信じる。我利(自分だけの利益を考えたり)、背徳(道徳に背いたり)、圧制(権力を行使して抑圧する)などが横行する覇道では、万が一にも事業を行っていった先に成功するのは絶対に不可能である。」
大切なことは、利他の精神、道徳心をもって、人々や社会の幸せ、国家の繁栄、国際社会の平和に貢献していくことです。
利他の精神、道徳心の視点から投資先を選ぶ
私は投資をする上で、次のようなことができると思っています。
鮎川が「我利、背徳、圧制では事業を行っていった先の成功はない」と言っているとしたら、経営者の我利、圧制が強く出てしまっている企業(例えば、役員報酬が極めて高く、従業員の給料は低い企業)、道徳に反している企業(収益優先が行き過ぎていて、人としての心が欠けている企業)には投資をしないことです。
逆に利他の精神で道徳心をもち、従業員を抑圧していない企業であれば、成功していくということにもなるので、そのような企業に投資をすることです。それが結果として、資産運用の成功につながることになります。
1つ見極めるポイントをお伝えしましょう。もし、経営者が「私の会社」という発言をしていたら、それは自我が強いと言えるでしょう。利他の精神が強ければ「私の会社」という発想にはそもそもならずに、「うちの会社」「私たちの会社」もしくは「みんなの会社」という言い方になっているでしょう。
私は、鮎川義介のような崇高な念い(おもい)をもった経営者が増えれば、世の中はより良くなっていくと信じています。私は、我利ではなく利他の精神、道徳心をもち合わせた企業が大好きです。たまに、上場企業の経営者の方とお話をする機会がありますが、利他の精神、道徳心をもち合わせた方と会うとものすごく感動しますし、心がとても清らかになり、すがすがしい気分になります。
投資をする上で、単に自分が儲かるかだけではなく、その企業が鮎川義介のような念いをもった企業か、利他の精神、道徳心をもった企業かという視点も加えて選んでみるのも良いのではないでしょうか? 私は、それが資産運用での成功の近道だと思っています。
参考文献:
『日産の創業者 鮎川義介』 著者:宇田川勝(吉川弘文館)
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