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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]景気敏感バリュー株「買い」の理由 オールド産業復活?
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 先週(4月12~16日)の日経平均株価は、1週間で84円下がり、2万9,683円となりました。3万円手前でやや膠着しつつあります。

 景気・企業業績の回復期待を背景に昨年11月以降、上昇ピッチを速めてきた日経平均ですが、上昇ピッチがやや速すぎることから、2月以降は上値が重くなっています。確かに業績回復のモメンタム(勢い)がここから強くなっていくことを見極める間、日経平均はスピード調整が必要と考えられます。

日経平均推移:2020年10月1日~2021年4月16日

出所:楽天証券経済研究所が作成

ここからの日本株上昇を牽引するのは景気敏感バリュー株と予想

 2021年に入ってから、バリュー株(割安株)の上昇が目立っています。中でも、強かったのが「景気敏感バリュー株」。ところが、そのバリュー株が3月中旬から、利益確定売りに押されて下がってきています。

 一方、2020年の上昇率が高かったグロース(成長株)は、2021年は上値が重くなっています。そのことが、以下、TOPIXバリュー指数、TOPIXグロース指数の動きを見るとわかります。

TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の動き:2020年12月30日~2021年4月16日

出所:QUICKより作成。2020年12月30日の値を100として指数化

 景気敏感バリュー株とは、具体的には、株価バリュエーションの低い金融株、資源関連株、製造業などが該当します。世界景気回復にともなう、米金利上昇で金融株が買われ、原油価格上昇で資源関連株が買われ、製造業の景況改善で自動車株などが買われていました。

 一方、グロース株には、コロナ禍でも業績好調だったIT関連やバイオ株などが含まれます。2021年に入ってから、その逆の流れが出ています。

TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の動き:2020年1月6日~2021年4月16日

出所:QUICKデータより作成。2020年1月6日の値を100として指数化

今年はオールドインダストリーの業績モメンタムが強くなる展開

 バリュー株優位の展開は終わり、ここからはグロース株が復活すると考える人もいます。私は、そうは思いません。バリュー株優位の展開が、今年の秋くらいまで続くと予想しています。それには、2つの理由があります。

【1】 バリュー・グロースのバリュエーション格差がいまだに大きい
 2021年に入ってからバリュー優位が続いているとは言え、それはごく短期的なことです。もっと長い目で見るとグロース株ばかりが上がり、バリュー株が低迷する時期が10年近く続いてきました。

 その結果、グロース株は全般的にバリュエーションが高くなりすぎている一方、バリュー株はバリュエーションが低すぎるものが多くなっていると考えています。割安なバリュー株を見直す流れがまだ続くと予想しています。

【2】今年は、オールドインダストリー復活の年に
 今年は、私が「3大割安株」と呼んでいる「金融株、資源関連株、製造業」の業績モメンタムが強い年になると予想しています。中国と米国の景気が急激に回復するからです。

 これにより、一時的にモノや資源が不足し、一時的にインフレが復活、米長期金利が上昇すると考えています。つまり、一時的に、金融株、資源関連株、製造業が活躍する20世紀の経済環境に戻ると考えているわけです。

 過去に、日本株でバリュー株優位が長く続いた時は、いずれもオールドインダストリーが活躍した時でした。代表的なものに以下があります。

[1]1980年代後半のバリュー相場:
円高と貿易戦争でハイテク株がさえない中、内需中心のバブル景気が盛り上がり、オールドインダストリーが活躍

[2]2000年代前半のバリュー相場:
金融株やオールドインダストリーが構造改革で復活。さらに、BRICs(中国、インド、ブラジル、ロシア)と言われる新興国の成長加速で、世界的に重厚長大産業が復活

 以上の理由から、今年前半の日本株市場では、景気敏感バリュー株のパフォーマンスが強くなると考えています。

 これから始まる「業績相場」に備えて、今年増益率が高く、PER(株価収益率)が低く、配当利回りが高い「景気敏感バリュー株」を買っていくべきと考えています。

 投資の参考銘柄については、以下、著者オススメのバックナンバーをご参照ください。

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