毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄:インテル(INTC、NASDAQ)TSMC(TSM、NYSE ADR)

1.メモリ市況と半導体製造装置市場についての補足

1)DRAM市況は一服感も出てきたが、なお高水準

 今回は、半導体セクターの最近の重要トピックスである半導体不足と、インテルの新しい成長戦略について考察します。その前に、メモリ市場と半導体製造装置市場の最近の動きを概観します。

 DRAMのスポット価格は一服感が出てきましたが、高い状態が続いています。大口価格は上昇トレンドに転換したと思われますが、もともとスポット価格に比べると動きが鈍いため、現在もスポット価格は3ドル/個を上回り、大口価格は3ドルを下回る状態になっています。そのため、ある程度の数量を確保したいのであれば、大口価格で調達することが有利になっており、これがDRAM市況全体を押し上げる要因になっていると思われます。

 NAND型フラッシュメモリ市況は横ばいが続いていますが、5Gスマホ、高性能パソコン、高性能サーバー用の高性能CPUが大量出荷されているため、それに付随するメインメモリ(DRAM)とストレージ(HDDからSSD(NAND)へ転換中)が大容量高速化する過程にあります。そのため、DRAMで起きているような需給の緊張は、いずれNANDでも起こる可能性があります。

 CPU、GPUには一部のGPUボードを除いて価格の上下が乏しいため、半導体需給のひっ迫度合いをみるためには、DRAMスポット価格の動きを見るのが良いと思われます。この動きを見る限り、今の半導体不足は簡単には収まりそうにありません。

グラフ1 DRAMのスポット市況

単位:ドル、小口渡し、現金、出所:日本経済新聞主要相場欄より楽天証券作成、注:2018年6月29日までは4ギガビットDDR3型、それ以降は同DDR4型

グラフ2 DRAMの市況

単位:ドル、国内大口需要家渡し、4ギガビット(2018年6月26日までDDR3、それ以降はDDR4)、出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成

グラフ3 NAND型フラッシュメモリの市況(2017年5月29日から)

単位:ドル、国内大口需要家渡し、TLC(注:2017年5月30日付で従来の多値品がTLCに変更された)、出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成

2)2021年2月の北米製半導体製造装置販売高は前年比32.0%増、好調持続

 半導体製造装置の動きも見てみます。前回の楽天証券投資WEEKLYで、2月の日本製半導体製造装置販売高が前年比8.8%増、前月比3.7%増と順調に推移していると指摘しました。その後、北米製半導体製造装置販売高の数字がでましたが、2月は前年比32.0%増、前月比3.2%増と好調でした。

 グラフ4を見ると、日本製よりも北米製のほうが大きな成長が実現しています。これは、日本よりも北米のほうが半導体製造装置メーカーの企業規模が大きいこと(特に投資規模が大きい前工程でこのことが言える。北米製前工程の大手はアプライドマテリアルズ、ラムリサ―チ、KLAなど、日本製は、東京エレクトロン、レーザーテック、SCREENホールディングスなど)、北米の半導体製造装置メーカーは日本の半導体製造装置メーカーよりも中国向けに積極的であることによると思われます。中国向けには、10ナノから先の微細化プロセスに対応する半導体製造装置は事実上輸出できなくなっていますが、10ナノ台から古い世代(14ナノ、28ナノ、40ナノ、90ナノなど)向けの製造装置については、許可を得て輸出すれば問題ないはずです。

 過去のトレンドを見ると、日本製半導体製造装置販売高にとって北米製の動きは先行指標となっています。そのため、遠からず日本製販売高も高成長に戻ると思われます。

表1 日本製、北米製半導体製造装置の販売高(3カ月移動平均)

単位:日本製は百万円、北米製は百万ドル、%
出所:日本半導体製造装置協会、SEMIより楽天証券作成

グラフ4 日米半導体製造装置販売高

単位:日本製は100万円、北米製は万ドル

表2 大手半導体メーカーの設備投資

出所:各社会社資料、報道より楽天証券作成
注:1ウォン=0.09円、1ウォン=0.0009ドル。

2.半導体不足はいつまで続くのか

 今回の世界的な半導体不足は、もともと半導体を組み込んでいる最終製品の需要が好調で(特に5Gスマホ、高性能パソコン、インターネットデータセンター用高性能サーバー)、それに中国やアメリカの景気回復に伴って、自動車、家電、産業機器の生産が回復してきたことが原因です。

 供給面では、半導体産業の中で、半導体の開発、設計、生産、マーケティング、販売を通貫して行うIDM(Integrated Device Manufacturer)に代わって、半導体の開発、設計、マーケティング、販売は行うが生産部門を持たないファブレス(Fabless)と、半導体の生産のみを行うファウンドリ(Foundry、半導体受託生産業者)が主流になってきたことも半導体不足の一つの要因です。特にファウンドリの存在は重要性を増しています。半導体は開発、設計するよりも生産することがはるかに難しいのです。そして、10ナノ、7ナノ、5ナノと言った微細化が進んだ最先端半導体から10ナノ台から以前の汎用半導体まで、台湾のTSMCがファウンドリとして大きな生産シェアを担い、そのあとをサムスン以下のファウンドリが追う形になっています。

 更に2020年10-12月期から最先端ロジック半導体向けのシリコンウェハが不足し始めました。また、自動車向けの急回復によって汎用半導体向け200ミリウェハも不足しています。このようなシリコンウェハ不足も各分野で半導体が不足している要因です。

 シリコンウェハ不足は今後一層強くなっていくと予想されます。後述のようにインテルの設備投資増加、ファウンドリ事業への参入という半導体需給を緩和する材料もありますが、シリコンウェハ不足が進行するであろうことを考えると、半導体不足は見通せる限り2021年だけでなく、2022年、2023年まで続く可能性があります。

表3 ファウンドリ市場上位5社

単位:百万ドル
出所:TrendForce2021年2月24日付けプレスリリースより楽天証券作成

3.半導体不足が日本企業へ与える影響を考える。自動車向け半導体の不足は、発注側にも問題があると思われる。

 次に、自動車向け半導体の不足については考えてみます。2020年1-3月期に新型コロナウイルス感染症の世界的流行が始まり、自動車生産が大きく落ち込んだ時に、日系、海外系ともに自動車メーカーが生産目標を引き下げ、TSMCにあった自社の生産枠を縮小してしまいました。

 ところがその後、中国の自動車生産が急回復し、アメリカも回復するに至って、自動車向け半導体需要も急回復しましたが、TSMCは5Gスマホや高性能パソコンなど自動車以外の向け先で繁忙になってしまったため、自動車向けの生産は増えませんでした。

 それに加えて、今年2月にアメリカ・テキサス州で起きた大寒波の影響で電力不足が起き、同地にある自動車向け半導体の大手、NXPセミコンダクターズとインフィニオン・テクノロジーズの工場が停止になりました。ただし、この2工場とも既に操業を再開しています(NXPは2月15日に停止、3月13日に再開。インフィニオンは2月15日に停止、3月19日に再開)。

 また日本では、昨年秋に旭化成の半導体子会社「旭化成エレクトロニクス」(自動車向け、音響機器向け半導体)の工場が火災を起こし、生産停止となりました。この工場は今も復旧していません。

 更に、3月19日にはルネサスエレクトロニクスの主力工場である那珂工場で火災が発生しました。300ミリラインのメッキ装置からの出火であり、被害もクリーンルームの一部に止まったため、他の200ミリラインの稼働は続けていますが、300ミリラインは停止しています。会社側は1カ月以内の生産再開を目標としていますが、製造装置の調達等に不透明感があります。

 テキサスで起きた大寒波による操業停止は、天候要因なので仕方がありませんが、もともと今回の自動車向け半導体の不足は、各国自動車メーカーの自動車需要予測が甘かったことが要因と思われます。ただし、日本で起きた半導体工場の火災については別の要因がありそうです。問題は、日系自動車メーカーの自動車向け半導体の発注単価が低いことにあると思われます。

 ルネサスエレクトロニクスの2020年10-12月期の営業利益率は9.0%、同業のNXPセミコンダクターズは18.5%、インフィニオン・テクノロジーズは12.6%となります。実は、自動車向けのみを取り出すとルネサスの自動車向けセグメント利益率は16.2%で、インフィニオンの16.1%と変わりませんが、本社経費等の共通経費を考慮して全社営業利益率を見ると、同業2社よりも低くなるのです。この要因は、歴史的に見てルネサスが日系自動車メーカーとの取引関係が多いことにあると思われます。

 全くの私見ですが、日系自動車メーカーから日本の自動車向け半導体メーカーへの発注単価が低すぎるため、生産現場へ回る投資資金が少なくなり、本来ならありえない事故が起きた可能性があります。半導体工場は、微細化の程度にかかわらず、化学工場、機械工場、電気・電子工場の側面を持っています。有毒ガスと高圧電流を使い、しかもクリーンルームがあるため、火気、煙は厳禁です。

 にもかかわらず相次いで半導体工場で火災が起きたのは、日本のロジック半導体生産技術が低下しているためであり、その原因は自動車向け事業の採算が悪いことによると資金不足のせいではないかと思われるのです。

 報道によれば、今年年初からルネサスが自動車向け半導体について数%の値上げを打ち出しているもようです。また、NXPも10~20%の値上げを顧客に提示したもようです。TSMCも自動車向け中心に最大15%の値上げを検討しているもようです。もしこれを自動車メーカー側が拒否するようであれば、長期的な可能性ですが取引停止もあり得ると思われます。また、日系自動車メーカーが他の半導体メーカーに調達先を拡大しようとしても、従来の価格や納期で受けてくれる半導体メーカーはないと思われます。

 結局のところ、今回の自動車向け半導体の不足は、日系自動車メーカーについては、半導体に対する無知が引き起こしたものと言えなくはないと思われます。今更どうにもならないことですが、半導体の重要性が増す限り、半導体不足の悪影響は日系自動車メーカーにとって長引く可能性があります。

4.ゲーム機向け半導体も不足。家庭用ゲーム市場は今以上に拡大しない可能性がある。

 家庭用ゲーム機にも半導体不足の影響があると思われます。プレイステーション5(以下PS5)、Xbox series X/S(以下新型Xbox)ともに、各国で入手困難な状態が続いています。ニンテンドースイッチも昨年末に日本とヨーロッパで入手しやすくなりましたが、今は日米欧で入手困難な状態にあります(最も入手しやすいのは任天堂が供給を最優先しているアメリカです)。

 この要因も半導体不足にあると思われます。ソニー、マイクロソフトはAMDに対してPS5、新型Xbox用CPU、GPU (AMDの7ナノCPU、GPUのカスタマイズ)を発注し、AMDがそれらをTSMCに発注していると思われます。ニンテンドースイッチの場合は、任天堂がエヌビディアにニンテンドースイッチ用SoC(一つのシリコン基板にCPU、GPU、その他の半導体を一緒に置いたもの)を発注し、それをエヌビディアがTSMCに発注していると思われます。

 これらゲーム機メーカーの発注のやり方には共通点があり、年度ごとあるいは暦年ごとに、保守的な需要見通しに従って発注し、不足すると追加発注するというやり方をしていると思われます(外から見るとそう見えます)。このやり方だと需要が不振でも大きな在庫を抱えなくて済みますが、ブームが来た時には乗り遅れます。

 今の家庭用ゲーム機3社がまさにその状態であり、ビジネスチャンスを失い続けている状態になっています。家庭用ゲーム機は3機種合わせても年間推定6,000~7,000万台の出荷台数しかないため、年間出荷台数13~14億台のスマートフォン(4G、5Gを含む)、同じく3億台以上のパソコンに比べて使う半導体の数量で見劣りがします。最初に思い切って大量発注すればよいのですが、各社とも在庫を恐れてそうしません。任天堂、ソニーが行うゲーム機の需要予測の精度が悪いということになりますが、家庭用ゲーム事業がこの2社の中核事業であることを考えると驚くべきことです。

 これも、自動車同様今更どうにもなりません。TSMCにとっては任天堂、ソニー、マイクロソフトは最終顧客なので無視はしませんが、優先もしていないと思われます。ソニー、マイクロソフトにとっては、今年2021年のクリスマス商戦に新型機が充足することは難しく、2022年のクリスマス商戦にようやく需要にミートする台数が出荷できたとしても、5ナノCPU搭載パソコンだけでなく、おそらくアップルが投入するであろう3ナノCPU搭載パソコンとPS5、新型Xboxが競合することになると思われます(パソコンゲームの愛好家は世界的に増えています)。PS5と新型Xboxは「旬」を逃がすことになる可能性があります。

 任天堂も、ニンテンドースイッチ事業が2022年3月期中にピークを打つ可能性がでてきたと思われます。

5.インテルの新しい成長戦略

1)インテルの「IDM 2.0」

 2021年3月23日(火)、インテルは新CEO、パット・ゲルシンガー氏によるウェブキャスト「Intel Unleashed: Engineering the Future」を公開し、新戦略「IDM 2.0」を説明しました。

 IDM 2.0は、インテルの半導体製造において、1.インテルの自社生産、2.外部ファウンドリ(TSMCのようなファウンドリ)の利用、そして3.外部に向けたファウンドリサービス(インテル自身が行うファウンドリ事業)の3つを組み合わせるものです。その中身は次の通りです。

  1. インテルの自社生産:約200億ドル(2兆1800億円)を投じてアリゾナ州に2棟の新工場を建設します。2024年に稼働開始の計画です。プロセスノード(微細化世代)は不明ですが、EUV露光装置を導入できるラインを整備します。EUV露光装置を使う場合は7ナノ以下のプロセスノードになります。
  2. 外部ファウンドリの利用:インテルは今後も大部分のインテル製品を自社工場で製造し続けるとしていますが、外部ファウンドリ(半導体受託生産業者)も利用するとしています。それによって、製品のコストや性能、開発スケジュールなどを最適化でき、より柔軟で拡張性のある対応ができるようになるとインテルは考えています。
  3. 外部に向けたファウンドリサービス:インテル自身もファウンドリサービスを手掛ける計画です(インテル・ファウンドリ・サービス、IFS)。TSMC、サムスンと競合することになります。先端パッケージング技術とプロセス技術を組み合わせること、米国と欧州で生産能力を拡大すること、CPUコア、グラフィックス、AI(人工知能)、ディスプレイなど多くのIP(知的財産権)ポートフォリオを顧客が選択できるようにすることで、TSMCなどの競合と差別化したいとしています(半導体の設計・開発から、生産までを一貫して支援する)。

2)5ナノ、3ナノへの進出はどうなるのか

 インテルが発表した「IDM 2.0」はインテルの新しい方向性、新しい成長戦略を示したものであり、今後の再成長に期待を抱かせるものです。特に、約200億ドルを投じて2棟の最新鋭工場を建設するということは、TSMC、サムスンが巨額投資を続ける中で評価してよいと思われます。ファウンドリ事業を行うことについても、有望な分野なのでこれも評価してよいと思われます。

 ただし、不透明な点もあります。パソコン市場では既にアップルが5ナノSoC「M1」搭載パソコンを昨年11月に発売しており、大きなヒットになっています。アップルでは2022年秋までに全パソコンにM1を搭載する予定であり、その後、おそらくは2022年秋に3ナノSoC搭載パソコンを発売すると思われます。AMDも2021年または2022年に5ナノCPU、GPUに進出すると思われます。

 この中で、インテルはどうするのか。年初にある調査機関が出したように、TSMCの生産によって5ナノCPUを2021年後半に、3ナノCPUを2022年後半に投入するのか、それともこの話はなくなったのか。ファウンドリ事業で競合することになるTSMCが5ナノ、3ナノのような戦略製品をインテルに出荷することがありうるのか、この点は今のところわかりません(インテルは2023年以降、パソコン向け、データセンター向けのコア製品の調達が出来ることを期待しているとしています)。ただし、インテルの7ナノCPUは5ナノ相当の能力を持っているとインテルは言っており、最初の7ナノCPUが投入されるのが2021年4-6月期になったことは大きな進歩です。また、アリゾナ新工場の稼働開始は2024年の計画です。微細化競争は気になりますが、一方でインテルが大きな生産能力をもつようになることは評価してよいと思われます。

 このあたりのことは、今後確認していくしかないと思われます。

3)インテルは2021年12月期業績ガイダンスを公表した

 インテルは、「IDM 2.0」を発表した3月23日に2021年12月期の業績ガイダンスを公表しました。それによれば、2021年12月期は、売上高765億ドル(前年比1.8%減)、売上総利益率54.5%(2020年12月期は56.0%)、税率19%(同16.7%)、EPS4.00ドル(完全希薄化発行済み株式数から計算すると当期純利益は約165億ドル(前年比21.0%減)になる)となる見込みです。

 パソコン需要は好調でCPU出荷も好調ですが、一部部材の品不足によってインテルの業績が抑えられるだろうとしています。また、2021年12月期の設備投資計画は190~200億ドル(前年比33.2~40.3%増)となっており、大型投資による償却負担も予想されます。

 このガイダンスを見て、楽天証券の2021年12月期、2022年12月期業績予想を表4のように下方修正します。2021年12月期を前回の売上高770億ドル(前年比1.1%減)、営業利益230億ドル(同2.9%減)から、今回は売上高765億ドル(同1.8%減)、営業利益204億ドル(同13.8%減)へ修正します。前回予想よりも営業減益幅が拡大すると予想されます。

 また2022年12月期は、前回の売上高825億ドル(同7.1%増)、営業利益255億ドル(同10.9%増)を売上高825億ドル(同7.8%増)、営業利益230億ドル(同12.7%増)へ修正します。大型設備投資が続くと想定してその負担を考慮しました。

 今後6~12カ月間の目標株価は前回と同じ80ドルを維持します。楽天証券の2022年12月期予想EPS4.52ドルに今後の再成長期待を考慮して想定PER15~20倍を当てはめました。今後の成長戦略が示されたことを評価したいと思います。

 引き続き中長期の投資妙味を感じます。

表4 インテルの業績

株価  62.02ドル(2021年3月25日)
時価総額  253,910百万ドル(2021年3月25日)
発行済株数(希薄化後)  4,119百万株
発行済株数(希薄化前)  4,094百万株
単位:百万ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。

表5 インテル:セグメント別業績(通期)

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

6.半導体関連各社の目標株価を維持する。各社とも中長期で投資妙味を感じる。

 今後6~12カ月間の半導体関連各社の目標株価は変更しません。

 今回のインテルの「IDM 2.0」はインテルの新たな成長戦略を示しはしましたが、TSMCの優位性はこれでは崩れないと思われます。逆に、今後のファウンドリ市場ではインテルという選択肢が出来ることによって、ファウンドリ市場でTSMCに発注が集中することにリスクを感じて自社生産を続けている半導体メーカー(例えばルネサスエレクトロニクスなど)が、自社生産を縮小するか止めて、ファウンドリへの発注を増やす可能性があります。このため、楽天証券ではTSMCの目標株価を変更しません。TSMCに対しては引き続き中長期での投資妙味があると思われます。

 また、インテルの2021年設備投資計画が190~200億ドル(前年比33.2~40.3%増)となったことで、半導体製造装置の需要には弾みがつくことになると思われます。アリゾナ新工場の完成が2024年になることから、2021年、2022年に続き2023年、2024年も半導体製造装置市場にとって重要な年になると予想されます。前工程のアプライドマテリアルズ、ASMLホールディング、東京エレクトロン、SCREENホールディングス、検査装置のレーザーテック、KLA、後工程のアドバンテスト、テラダイン、ディスコなどの主要な半導体製造装置メーカーにとって、大きなブームが続くと予想されます。

 なお、日本とアメリカ上場の半導体関連企業の決算発表日を下に示します。

今後6~12カ月間の目標株価

東京エレクトロン      5万5,000円
アドバンテスト       1万2,000円 
レーザーテック       2万円
ディスコ          4万6,000円
SCREENホールディングス  1万1,000円
TSMC(NY ADR)      170ドル
インテル            80ドル
AMD             100ドル 
エヌビディア        640ドル
マイクロン・テクノロジー  110ドル
アプライドマテリアルズ   150ドル 
ASMLホールディング     750ドル     
KLA              370ドル
シノプシス           310ドル

半導体関連企業の2021年1-3月期決算発表スケジュール

(現時点で決算発表日が公表されている企業のみ。特に記載がない場合は日本企業は3月決算、アメリカ上場企業は12月決算)。

マイクロン・テクノロジー(2021年8月期2Q) 3月31日(水)
TSMC                    4月15日(木)
ASMLホールディング             4月21日(水)
ラムリサーチ                    4月21日(水)
インテル                    4月22日(木)
ディスコ                    4月22日(木)
AMD                       4月27日(火)
アドバンテスト                   4月27日(火)
信越化学工業                  4月28日(水)
東京エレクトロン                4月30日(金)
レーザーテック(2021年6月期3Q)       4月30日(金)
SCREENホールディングス            5月11日(火)
SUMCO(2021年12月期1Q)         5月11日(火)
アプライドマテリアルズ(2021年10月期2Q)   5月20日(木)

本レポートに掲載した銘柄:インテル(INTC、NASDAQ)TSMC(TSM、NYSE ADR)