FOMC結果発表、2023年までゼロ金利予想。NYダウ最高値

 17日(日本時間では18日午前3時)、米国の金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が発表されました。FRB(米連邦準備制度理事会)は、経済成長見通しを上方修正したものの、金融政策の変更を行いませんでした。

 つまり、FF(フェデラル・ファンド)金利の誘導水準を、0.00~0.25%(実質ゼロ金利)で維持しました。

米政策金利(FF金利)の推移:2000年12月~2021年3月(17日)

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所作成

「政策変更なし」は、事前予想通り、当たり前のことで、市場に何の影響もありません。市場が注目していたのは、先行きのガイダンスです。

 米景気の回復期待が強まり、米長期金利(10年国債利回り)が1.6%まで上昇する中でいつまでゼロ金利を維持できるのか、FOMCメンバー17人(金融政策決定に投票権を持つ17人)の「腹の内」を読み取るのが重要でした。

米FF金利と長期金利、NYダウ推移:2004年1月~2021年3月(17日)

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所作成

 17人の腹の内を読むのに重要とみなされるものが2つあります。1つは、ドットチャート(FOMCメンバー17人による政策金利の先行き予測)、もう1つはパウエルFRB議長の記者会見です。

 ドットチャートでは、2022年、23年に利上げを予測する人数が増えたものの、予測中央値で「2023年まで利上げなし」の見通しが維持されました。

 米景気が年後半に過熱する見通しも出る中、「2023年に利上げあり」の見通しが示されるとの見方もあっただけに、予想以上にハト派のドットチャートが、株式市場に安心感を与えました。

 パウエルFRB議長の会見は、事前予想通り、ハト派色(金融緩和の縮小に否定的)を再確認する内容でした。

 FRBのハト派スタンス維持が再確認されたことを受け、17日のNYダウは、前日比189ドル高の3万3,015ドルと、史上最高値を更新しました。

ドットチャート、パウエル議長会見でもハト派

 ドットチャート、パウエル会見ともに、「すぐに緩和縮小はない」と市場に安心感を与える内容でした。

【1】ドットチャート
 以下の通り、金融緩和とゼロ金利が2023年まで続くとの期待を維持する内容でした。

出所:FRB、前回とは2020年12月16日のこと

 上の表で、2021年末から2023年末まで、FF金利の予測(17人の中央値)は0.125%です。これは現在のFF金利誘導水準0.00~0.25%、つまり実質ゼロ金利が2023年末まで維持されるという予測となります。

 ただし、「その考えに賛成しなかった人が、17人中で何人いたか」に市場は注目していました。2021年中の利上げ予測は1人もいません。2022年末までに利上げがあると予測した人は1人から4人に増えました。2023年に利上げありと予測した人は5人から7人に増えました。

 利上げ時期が早まる見通しが出たものの、予測中央値で「2023年まで利上げなし」は維持されました。大多数のメンバーが2023年末まで利上げなしとの考えを維持していることがわかり、市場に安心感を与えました。

【2】パウエル議長の記者会見
 パウエルFRB議長は、マーケットに友好的に、つまりハト派(金融緩和の長期維持)色を前面に出して発言すると思われていました。その中に、少しでも先行きテーパリング(金融緩和の縮小)を示唆するワードが混じっていないか、市場は注目していました。

 今回の記者会見では、引き続き、長期的な金融緩和の必要性を強調するもので、市場の期待通り、ハト派だったと言えます。

今後の注目点

 今回のFOMCは、FRBのハト派色に変更なしと、市場に安堵を与える内容でした。しかし、これで、米長期金利上昇への不安が払しょくされたわけではありません。今年の後半、米景気が過熱するリスクもあるからです。

 ワクチン効果で米経済が正常化に向かうタイミングで、1.9兆ドル(約200兆円)の財政出動が行われると、米景気が過熱するリスクを指摘する声もあります。

 過熱リスクがさらに高まれば、米長期金利やインフレリスクの上昇を通じて、金融緩和に終了圧力がかかる可能性はあります。引き続き、米長期金利の変動から目が離せません。

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