コロナリベンジ消費への期待は健在

 緊急事態宣言が解除されました。再延長時に理由とされた東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県で病床使用率が減少傾向にあることが主因です。一方、現実的な人の動きが解除を待たずにすでに活発化していたことは、多くの人が認識しているでしょう。

 2月22日公開記事「コロナリベンジ相場に期待、外食関連10万円株」では、参考銘柄として「レジャー」「外食」「旅客」に関連した銘柄を取り上げました。

 その背景は、首都圏1都3県の緊急事態宣言が解除され人の流れが正常化するのでは? という予想でした。その後、予想に反して緊急事態宣言は再延長されましたが、それでも、文中で取り上げた銘柄は堅調な動きを見せました。

2月22日終値→3月16日までの高値(カッコ内は高値の日付)

1,110円→1,252円(3月9日)

1,747円→1,975円(3月16日)

2,195円→2,433円(3月16日)

5,850円→5,990円(3月16日)

7,625円→8,499円(3月16日)

3,625円→3,745円(3月16日)

 このことから、1都3県での緊急事態宣言再延長によっても「コロナリベンジ消費」への期待は消失しなかったということがわかります。それを裏付ける要素として、「家計貯蓄率」が高水準で推移しており、緊急事態宣言解除をきっかけに消費行動が活発化する可能性が十分にあり得る、という見方があります。

「家計の貯蓄率」は内閣府がGDP(国内総生産)統計に基づき、家計の可処分所得や貯蓄率を四半期ごとに推計し発表しているものです。直近の推計は1月29日に公表された2020年7-9月期の家計貯蓄率ですが、11.3%(季節調整値)と引き続き高水準でした。

 比較可能な1994年以降で最高だった2020年4-6月期の21.8%からは下がったものの、過去5年間の貯蓄率は大半の期間0~1%台で推移しており、2桁%が異例の高さであることに変わりありません。

 コロナ禍を受けて政府が配った1人10万円の特別定額給付金や、コロナによる個人消費減少が貯蓄率を押し上げたと見られます。

ユニクロ実質値下げもアパレル株への関心を喚起する?

 4月から税込み表示が義務化されることを受け、ファーストリテイリングが運営する衣料品の「ユニクロ」「GU」では、先駆けて3月12日に価格表示を変更しました。

 それまでの税抜き本体価格をそのまま税込み価格としたことから、実質9%の値下げとなった格好です。税込み価格表示は実際の支払額がわかりやすくなる半面で、消費者が価格を一目見たときに割高と感じてしまう可能性もあり、同社は上記の対応をしたものです。

 もちろんこの効果がどう出るかは未知数で、すべての事業者が同様の対応(実質値下げ)をするわけではないでしょうが、国内アパレル最大手企業の動きに併せる企業も出てくると予想されます。

 加えて、実質値下げがこの先の「コロナリベンジ消費」に弾みをつける可能性もありそうです。株式市場でここまであまり話題にされていない「アパレル株」への注目度が高まるかもしれません。参考として国内アパレルの5大企業を挙げておきます。

ファーストリテイリング(9983・東証1部)

「ユニクロ」、「GU」の運営企業です。世界展開に積極的です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

しまむら(8227・東証1部)

 低価格の実用・ファッション衣料を展開しています。2020年10月に自社EC(電子商取引)サイトを開設。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

青山商事(8219・東証1部)

 紳士服業界首位、郊外型紳士服専門店チェーンの草分け企業です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ワールド(3612・東証1部)

 婦人、紳士、子供服主力の老舗アパレル。ショッピングセンターへの出店に特長があります。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

オンワードホールディングス(8016・東証1部) 

「23区」、「組曲」などの中価格帯ブランドを百貨店向け中心に展開しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

「ファーストリテイリング」、「しまむら」など例外はあるものの、アパレル企業は総じてコロナ禍の悪影響を強く受けた業界です。退店やブランド廃止などを耳にすることが多い印象です。

 この先、コロナが落ち着くとともに事業環境が正常化に向かい、投資家が見直し始めると、株価インパクトが強くなるかもしれません。

 以下ではアパレル関連株の中から10万円で投資可能な銘柄を取り上げます。

アパレル関連10万円株

 株価データは2021年3月17日終値ベース。

AOKIホールディングス(8214・東証1部)

 郊外型の紳士服専門店で業界2位。主力の「AOKI」は不採算店の撤退を進めています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

TOKYO BASE(3415・東証1部)

 実店舗とECを展開。独自ブランド「UNITED TOKYO」を手掛けています。

・1年日足チャート 

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ライトオン(7445・東証1部)

 郊外ショッピングセンターを軸に、ジーンズカジュアルチェーンを全国展開しています。 

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

キング(8118・東証1部)

 ミセス向け中価格帯アパレルメーカーです。不動産賃貸事業も展開しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

千趣会(8165・東証1部)

 カタログ誌「ベルメゾン」で通販事業を手掛けます。「暮らす服」ブランドで実店舗も展開しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

著者によるこの記事の解説音声はこちら(soundcloudサイト/8分13秒)