結論:これだけ覚えておいてください

 今日のレポート内容は、中上級者向けです。初心者の方は、以下の結論だけお読みください。

<結論>

◆日経平均先物(3月限)は、3月11日まで日中、日経平均とほぼ同値で推移する。

◆日経平均先物(6月限)は、3月12日から3月29日まで日中、日経平均よりも約190円低い水準で推移する。先物が190円低くても、それは先安感を表すものではなく、理論値通りに値がついているだけである。

◆日経平均先物(6月限)は、3月30日以降、日中、日経平均とほぼ同値で推移するようになる。

 今日は、先物の値動きが上記のようになる理由を、解説します。「なぜ、そうなる?」まで、きちんと勉強したい方は、以下をお読みください。

日経平均先物の夜間取引は、翌日の日経平均を先取りすることもある

 朝、東京証券取引所が開く前に、「シカゴ(CME)日経平均先物が(前日の日経平均終値と比べて)大幅安」というニュースを聞くと、ヒヤリとします。その日の日経平均が大幅に下がって始まることが多いからです。

 逆に、「シカゴ(CME)日経平均先物が大幅高」と聞くと、期待が高まります。その日の日経平均が大幅に上昇して始まることが多いからです。

 通常、日経平均先物(期近)の理論値は、日経平均とほぼ同値です。したがって、「CME日経平均先物が、(前日の日経平均終値より)190円安い」と聞くと、「今日の日経平均は190円くらい下がって始まる可能性がある」と解釈する人が増えます。普通は、その解釈で問題ありません。

 例外として、3月12日(3月のSQ後)から3月29日(3月の権利つき最終売買日)の間に、日経平均先物(6月限)を見る場合だけ、見方が異なります。「約190円下でCME日経平均先物(6月限)の値がついていれば、当日の日経平均は上がりも下がりもしないで始まる可能性が高い」と解釈できるようになります。

日経平均先物(3月限)は日経平均とほぼ同値で推移

 まず、参考まで、3月9日(火)の、日経平均と日経平均先物(3月限)の動きを示した、以下3つのチャートをご覧ください。

<日経平均と日経平均先物(3月限)の日中足:2020年3月9日8:45~15:15>

◆3月9日・日経平均

◆3月9日・日経平均先物(3月限)

◆3月9日・日経平均および日経平均先物(3月限)

(出所:上記3つのグラフはすべて、楽天証券経済研究所作成)

 ご覧いただくと分かる通り、株式現物と日経平均先物の売買が両方ともできる時間帯(9時~11時30分、12時30分~15時)、日経平均と日経平均先物(3月限)は、ほぼ同値で動いています。

 日経平均先物(3月限)の理論値が日経平均とほぼ同値なので、当然です。ただし、日経平均先物(3月限)が売買できるのは、3月11日までです。日経平均先物(3月限)は3月12日に計算されるSQ値によって清算されて消滅します。

 3月12日以降は、「日経平均先物」といったら日経平均先物(6月限)のことを指すのが普通となります。日経平均先物(3月限)が売買されている間は、出来高も少なく注目されませんが、3月限が消滅する3月12日からは6月限が主役(中心限月)となり注目を浴びます。

3月29日まで、日経平均先物(6月限)は、日経平均よりも約190円低い水準で推移する

 それでは、まだ注目されていない日経平均(先物)の3月9日の値動きを、日経平均と一緒にご覧ください。

<日経平均と日経平均先物(3月限)の日中足:2020年3月9日8:45~15:15>

(出所:楽天証券経済研究所作成)

 ご覧いただくと分かる通り、株式現物と日経平均先物の売買が両方ともできる時間帯(9時~11時30分、12時30分~15時)、日経平均先物(6月限)は、日経平均よりも常に約190円低い値がついています。

 これを見て、「日経平均先物(6月限)に日経平均の先安感が表れている」という誤った解釈をしないようにしてください。先物(6月限)は、理論値通りに値がついているだけです。

 3月12日以降、日経平均先物(3月限)が消滅すると、日経平均先物(6月限)が主役(中心限月)に躍り出ます。3月11日まで、日経平均先物といったら日経平均先物(3月限)のことです。ところが、3月12日からは、日経平均先物といったら日経平均先物(6月限)を指すことになります。

 3月12日から、日経平均先物(中心限月)がいきなり日経平均よりも約190円下で動くようになります。それを見て、「先物に先安感が表れている」と勘違いしないようにしてください。

 日経平均先物(6月限)が日経平均より約190円下で推移するのは、3月29日までです。3月30日以降は、日経平均とほぼ同値で推移するようになります。3月29日まで、日経平均先物(6月限)の理論値は日経平均より約190円下ですが、3月30日以降、理論値は日経平均とほぼ同値になります。

これだけ覚えてください!2つのポイント

 少し難しくて、分かりにくい話になっているかもしれません。すみません。難しい理屈はどうでもいいですが、とにかく、以下2つのポイントだけ、覚えてください。

 以下2点だけ頭に入れていただければ、後半の説明はやや難解ですが、分からなくても問題ありません。

<ポイント1>日経平均先物6月限の理論値は、329日までは、日経平均の値を約190円下回る。その間、先物が日経平均より190円低い水準にあっても、それは、先安感を表しているのではない。理論値通りに値がついているだけである。

<ポイント2>日経平均先物6月限の理論値は、330日以降は、日経平均とほぼ同値となる。330日以降は、先物と日経平均は、ほぼ同じ価格で取引されることになる。

3月決算の配当金の権利落ち(予想額)は190円

 3月29日まで、日経平均先物(6月限)は、日経平均よりも約190円価値が低いわけです。その理由は、3月期末決算での配当金にあります。

 日経平均(現物)を保有していると、3月決算の配当金の権利落ち日(今年は3月30日)に、配当金を受け取る権利が確定します。ところが、日経平均先物(6月限)を保有していても、3月配当金を受け取る権利は得られません。

 3月末基準の配当金は、約190円と予想されています。したがって、日経平均先物(6月限)は、日経平均(現物)よりも、190円低い値段が付くのです。

 ところが、3月30日以降は、日経平均と先物(6月限)は、ほぼ同値で売買されることになります。3月29日までに日経平均(現物)を買えば、3月末基準の配当金が得られますが、権利落ち日の3月30日以降に買っても、配当金は得られないからです。先物を持っていても、現物を持っていても、3月末基準の配当が得られないのは、同じです。

 したがって、3月30日から6月10日(先物6月限の最終売買日)まで、日経平均先物(6月限)を保有しても、日経平均を保有しても、どちらも3月配当金が得られないという点で、同じになります。したがって、3月30日以降は、両者はほぼ同値で推移することになります。

<参考>日経平均先物(6月限)の理論値の計算方法

 詳しい説明は割愛します。概算値を出す計算式を掲載します。

(日経平均先物6月限理論値)=(日経平均の値)-(6月10日まで日経平均現物を保有することで得られる配当金予想額)+(日経平均現物を購入するのに必要な現金を6月10日まで短期金融市場で運用した時に得られる利息)

 現在、短期金利はほぼゼロなので、金利要因は無視しても大丈夫です。配当落ちは、3月・9月が特に大きいです。6月や12月にもあります。

 東京市場の取引時間中は、日経平均先物が理論値から大きくかい離することはありません。かい離すれば、裁定取引が入り、先物は常に理論値の近くに維持されます。ただし、東京市場の現物取引時間が終了すると(15時以降)、日経平均先物は理論値からかい離して動くようになります。裁定取引が入らないので、大引け後のニュースに反応して、日経平均の理論値から離れて動くわけです。

 今日の説明は、分かりにくくてすみません。途中に掲載した「これだけ覚えてください!2つのポイント」だけ、頭に入れていただければOKです。

▼著者おすすめのバックナンバー
2020年9月24日:「日経平均先物」教室:9月28日まで先物は日経平均より155円低い水準で推移する