中国株に関心を持つ個人投資家が多くなっている!
ここ1~2年、中国株に関心を持つ個人投資家が多くなっているようです。実際に、2020年に楽天証券で中国株の取引を始めた人の数は前年(2019年)と比べて約4倍に増え、その傾向は2021年になっても続いています。
中国株といえば2000年代の頭にもブームがありましたが、当時の中国は北京の夏季五輪(2008年)や上海万博(2010年)といった一大イベントを控え、GDP(国内総生産)が毎年2ケタ成長を続けるなど、「エマージング市場の雄」として輝きを放っていました。
その後は、リーマン・ショック(2008年)と、その直後に打ち出された、いわゆる「4兆元」の経済政策による副作用(債務問題など)への懸念や、チャイナ・ショック(2015~2016年)を経て意識され始めた成長スピードの鈍化、そして、米トランプ政権時からは米中対立への警戒など、ネガティブな面も目立つようになり、中国株への熱気も冷めていきました。
それが、ここに来て再び中国株が注目され始めているわけですが、それはなぜなのでしょうか?
その背景について整理してみます。
中国株に熱視線!その背景1:何だかんだで成長期待がある
確かに、中国の経済成長スピードはかつての勢いからは鈍化しています。ただ、従来の「輸出・投資主導」による急成長に限界が見え始め、すでに世界2位の経済大国となった今の中国からすれば、経済構造を内需主導による安定成長へと志向するのは当然の流れともいえます。鈍化したとはいえ、このままの成長ペースを持続すれば、そう遠くない未来にGDPで米国を抜く日が来ると見込まれています。
また、中国は多くの人口を抱えているが故に国内市場の規模が大きく、国内市場だけでも他国には存在し得ないビジネスチャンスに恵まれているという利点があるほか、「一帯一路」や「中国製造2025」などのように、国家主導による経済政策の方針や目標が定期的に示されるといった分かりやすさもあります。
もちろん、経済格差の是正をはじめ、超高齢化社会を控えて社会保障をどうするのかなど、多くの社会的問題を抱えているほか、中国当局が主導する経済発展モデルに対して海外諸国から警戒感を招いていることや、香港・ウイグル自治区などにおける人権抑圧、強硬的な外交姿勢などでも批判を受けており、これらが米中対立の一因にもなっています。
そのため、必ずしも中国の将来は視界良好というわけではありませんが、それでも中国が最大の貿易相手となっている国の数が米国を上回っているなど、経済的な存在感は否定し難く、何だかんだで成長期待を想起させやすいと言えます。
中国株に熱視線!その背景2:民間企業の台頭
さらに、中国では国内の巨大な消費市場を生かして急成長を遂げる民間企業も次々と誕生しています。
特に、検索サービス大手の百度(Baidu:バイドゥ)や、ソフトバンクグループが出資していることで知られるEコマースの阿里巴巴集団(Alibaba:アリババ)、そして、SNSでダントツの騰訊控股(Tencent:テンセント)などは、それぞれの頭文字をとって「BAT」と呼ばれ、ネット環境の整備やスマートフォンの爆発的な普及もあって、モバイル決済やオンラインゲーム、動画サービス、自動運転などのさまざまなサービスやビジネスに進出し、国内外での知名度を獲得しています。
これらの企業はAI(人工知能)などの先進技術や、新たなビジネスモデルを持つスタートアップ企業に積極的に投資し、中国の起業家や投資家の資金も巻き込んでいます。世界全体の「ユニコーン」(企業価値10億ドル超えのスタートアップ企業)のうち、約3分の1が中国企業といわれているほどになっており、今後も注目の企業が続々と台頭してくることが考えられます。
中国株に熱視線!その背景3:「コロナ対応力」の優位性と「分散投資」の選択肢
世界中を襲っている新型コロナウイルスの猛威ですが、中国は2020年のGDPが主要国の中で唯一プラスを維持するなど、事の真偽をめぐる議論は抜きにして、「新型コロナ感染拡大の抑制に成功し、経済の回復が順調に進んでいる」というのが現時点での認識となっています。日本の国内企業が製造業を中心に業績が急回復しているのも、こうした中国の恩恵を受けている面があります。
また、早い段階で新型コロナの封じ込めに着手した中国などは、コロナ禍の影響を軽減させるよりも、経済復興や再成長へ多くの資金を投じることができ、日本や米国・欧州などのように、いまだに感染抑制やワクチン接種、景気下支えに財政のウエイトを置いている状況と比べても優位性があるといえます。
そもそも、期待のワクチンについては供給が追いつかずに奪い合うような構図となっていて、思ったよりも時間が掛かる可能性もあり、こうした積み重ねが次第に「コロナ対応力」の差として出始めてくることも考えられます。
さらに、コロナ対応の差だけでなく、金融緩和によってもたらされた日米の株高についても、今後の調整局面や、株高の持続性に対する警戒感もくすぶっていることも踏まえると、分散投資先として中国株を保有する動きもあるようです。
中国株に熱視線!その背景4:中国株の投資環境の整備が進んだ
そして、中国株に投資する手段と選択肢が増えたことも要因として挙げられます。
以前は取引ができなかった上海A株などの本土株市場については、海外投資家への門戸が開かれ、徐々に取引できる銘柄が増えてきましたし、先ほども紹介した「BAT」銘柄については、米国株市場や香港株市場などで取引が可能となっています。BATに限らず、中国企業が米国株市場にADR(米預託証券)を通じて上場するというケースも珍しくなくなってきました。
また、ETF(上場投資信託)についても、日本・香港・米国などの市場で取引できますが、あらゆる中国株指標を対象とするETF銘柄が増えているだけでなく、レバレッジ型ETFやインバース型ETF、そしてIT関連やバイオ関連といったセクター別ETFなども登場しています。
このように、投資スタイルに応じた品ぞろえが充実してきた一方で、「アリババは米国市場と香港市場で取引できるが、百度(バイドゥ)は米国株市場でしか取引できない」とか、「ChiNext100のETFは米国株で取引」といった具合に、取引したい銘柄やETFがどこの市場で取引できるのかを確認する必要があり、ちょっと複雑になっています。
投資対象の一つに中国株は意義あり
今の中国は、「継続的な成長が見込める消費市場」と、「ITなどの分野で米国と競い合うほどの技術力」を軸に、世界的な存在感を着実に強めており、多くの投資家の注目を集めています。
中国に対しては、政治イデオロギー的な面などで複雑な思いを持っている方も多いですし、また、超長期的には中国悲観論が高まってもおかしくはない不安要素も抱えています。
とはいえ、日本株や米国株に投資している投資家も、その投資成績に中国の動向が影響を与える場面が増えているのも事実です。そのため、投資対象の一つとして中国株を選択する意義は十分にあるといえます。
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