※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]金利上昇ショックで世界株安 景気敏感バリュー株「押し目買い」好機と判断
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日経平均・NYダウとも高値、米金利上昇が新たな不安材料に

 2月最終売買日(26日)の日経平均株価は、前日比1,202円(4%)下落して、2万8,966円となりました。米国の長期金利が25日に一時1.61%まで上昇したことを受けて、「金融相場が終わる」懸念から米国株(ナスダック総合指数・NYダウ)が急落、世界的に株が売られました。その流れで、2月26日の日経平均も急落しました。

 一時1.61%まで上昇した米長期金利は、米国株急落を受けて1.43%まで反落しました。

米長期金利(10年国債利回り)の推移:2020年1月2日~2021年2月26日

出所:著者作成

日経平均・ナスダック総合指数・NYダウの動き比較:2019年末~2021年2月26日

出所:著者作成  注:2019年末の値を100として指数化

 米国で、コロナワクチン接種が進み、年後半にコロナが収束に向かう期待が出ています。そうなると、年後半「リベンジ消費」(コロナ禍で抑えられていた潜在消費がまとめて出る)が盛り上がる可能性もあります。そこにバイデン政権が実施する1.9兆 ドル(約200兆円)の巨額財政出動が重なると、年後半に米国景気が過熱する懸念が出ています。こうした懸念を受けて、米長期金利は短期的に予想以上のピッチで上昇しました。

 中国・米国の景気回復期待を反映し、原油・銅・ニッケル・鉄鉱石・穀物・海運市況が一斉に上昇し、インフレ懸念が出始めていることも、長期金利上昇につながりました。

金融相場から業績相場への移行期と判断

 米金利上昇の世界株に及ぼす影響について、私の意見は、先週月曜日のレポートで述べた通りです。まだ金利上昇で株高が終わることを心配するのは時期尚早と考えています。景気回復の終盤で、金利上昇が株安のきっかけになることがありますが、まだその段階に入っていないと考えています。今は、景気回復初期、金利上昇初期で、金利上昇と株高が両立する局面と判断しています。

 したがって、今の株安局面は、押し目買いの好機と判断しています。株価バリュエーションの高いグロース株よりも、これから業績モメンタムが強くなってくる景気敏感バリュー(割安)株の方が、良いと思います。

 景気・金利・株価は、密接に連携して動いています。景気が拡大・後退のサイクルを描く中で、金利・株価も一定のリズムでサイクルを描いています。

 景気・金利・株価には、一般的に、以下のような関係があります。

景気サイクルと、金利・株価サイクル

出所:筆者作成

 私は、現時点の米国景気は、上記の景気拡大初期―中期にあると考えています。まだ、金利上昇と株高が両立する局面と判断しています。

 年後半、もっと米国・中国の景気が回復し、世界景気の回復がはっきりしたとき、米長期金利が2%に近づく、あるいは超えた時に、世界的な株高が終わることを心配する必要が出ると思っていますが、まだその時期ではありません。

 2004年以降、上記の景気拡大中期(金利上昇と株高が両立する局面)に当たるのは、2004~2006年、および、2016~2017年です。以下をご参照ください。

米長期金利とFF金利推移、NYダウと比較:2004年1月~2021年2月(26日)

出所:著者作成

 それでは、株が金利上昇を無視できなくなるのはいつでしょうか。景気が過熱し、好景気の持続性に疑問が出ると株は下がります。2007~2008年や、2018年がその時期に当たります。

 今年についていえば、米長期金利が2%に近づく、あるいは超える時は要注意と考えます。その時は、株の上昇サイクルが終わる可能性が高まると思います。

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