日経平均3万円超え。週末のチャートは上下両にらみの状態
先週の国内株市場ですが、日経平均株価がついに1990年8月以来となる3万円台に乗せてきました。週末19日(金)時点の終値も3万17円と3万円台をキープしている他、前週末終値(2万9,520円)からは497円高と3週連続の上昇となっています。
歴史的な節目を突破したことで、「さらなる上昇を目指す新たな相場局面入りとなる」という見方が出てきている一方、足元の急ピッチな上昇に対する目先の調整も警戒されます。そのため、2月最終週となる今週はやや神経質なムードで迎えることになります。
まずは早速、いつもの通り足元の状況から確認していきます。
■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年2月19日取引終了時点)
あらためて先週の日経平均を振り返ると、週初15日(月)の取引でいきなり3万円台を超えてきました。上の図1を見ても、ローソク足が大きな陽線になっています。そして翌16日(火)には一時3万714円まで上昇する場面もありました。
前回のレポートでは、「早い段階で日経平均が幻のSQ値(2万9,718円)を超えることができれば3万円の上値トライも」と指摘していましたが、思っていたよりも強い動きになったというのが正直な印象です。
続く17日(水)と18日(木)は3万円台をキープするものの、上値が重たくなり、週末19日(金)には3万円台の節目を挟んだ攻防となりました。この日のローソク足は実体が短く上下のヒゲも同じぐらいの長さの「コマ足」と呼ばれる形である他、3万円台を維持できたことで、上にも下にも向かえる両にらみの位置取りとなっています。
今週の株価が上方向に向かった場合は、先週の高値(3万714円)を超えられるか、反対に下方向に向かった場合には25日移動平均線近辺で下げ止まれるかが焦点になるというのが一般的なセオリーとなりますが、ここで注目したいのが下段のMACDです。
赤い線のMACD、青い線のシグナルのクロスについては、これまでのレポートでも度々紹介してきましたが、今回注目するのは、MACDとシグナルの差を棒グラフで表したヒストグラムです。MACDがシグナルより上回っているとプラス、下回るとマイナス方向に棒が伸びていくわけですが、足元ではプラスのヒストグラムが段々と短くなっており、このままマイナスへ向かっていくことも考えられます。
図1のチャートを過去にさかのぼると、昨年12月にヒストグラムがマイナスに転換する場面がありましたが、この時の日経平均は横ばいのもみ合いを続けながら、25日移動平均線のキャッチアップを待つ「時間調整」の展開となりました。当時は2万3,000円台から2万7,000円台をうかがうところまで一気に上昇した直後でしたが、ちょうど2万9,000円台・3万円台と大きく上昇してきた足元の状況に似ている面があります。
日経平均のトレンドライン:今週は方向感があまり出ない?
次に、日経平均のトレンドについても見ていきます。
■(図2)日経平均(日足)の動き(2021年2月19日取引終了時点)
上の図2は、コロナショック時の底値(3月19日)を起点に、押し目となった下値を結ぶトレンドラインをシンプルに描いたものです。
足元の株価は、(1)~(3)の3本のトレンドラインのうち、(2)のラインのところに位置していることが分かります。昨年11月からの上昇局面では、このライン(2)のところが上値の目安として機能していたため、ライン(2)から上方乖離(かいり)しつつあった先週の値動きはやや行き過ぎているため、ライン(2)まで押し戻されて様子を見ているという印象があります。
今後の日経平均がこのライン(2)に沿って上昇していくと仮定した場合、先週の高値(3万714円)とぶつかるのは、14営業日後あたりになりますので、株価変動の大きさを考慮して1~3週間の時間調整があってもおかしくはなさそうです。したがって、日経平均だけの状況を見れば、今週はやや値動きは荒っぽくなるものの、方向感はあまり出ない展開が想定できます。
TOPIXは弱含み。日銀ETF買い入れの条件を満たすも実施せず
ただし、気がかりなのはTOPIX(東証株価指数)の方で、こちらの状況はあまり芳しくありません。
■(図3)TOPIX(日足)とMACD(2021年2月19日取引終了時点)
週足ベースで3週連続の上昇となった日経平均とは異なり、先週のTOPIXは下落に転じています。
とりわけ、18日(木)と19日(金)の2日間の下落が目立っており、再び上昇基調に戻すには、直近高値同士を結んだ「上値ライン」を超える必要があります。
また、下段のMACDはまだシグナルとのクロスにはなっていませんが、線の傾きは下を向いており、必ずしも状況は良いとは言えません。こちらも、先ほどの日経平均と同じく、昨年12月の時のようにもみ合いに入るという想定もできますが、先週末にかけての株価失速が日経平均よりも大きいため、時間調整ではなく、このまま25日移動平均線へと向かう「値幅調整」の可能性も出てきています。
ちなみに、先週のTOPIXの弱含みの動きについて、日銀のETF(上場投資信託)買い入れが一部で話題になっています。というのも、2月は先週末時点で日銀のETF買いが一度も行われていないからです。
もちろん、最近までの株高基調を踏まえれば、ETF買いがなくても別におかしくはないのですが、先週末の株価下落の場面において、日銀がETF買いを行うとされていた、「TOPIX前場の下落率が0.5%を下回る」という条件を満たしたにもかかわらず、買い入れを行いませんでした。
折しも、日銀はこれまでの金融緩和政策の点検・検証を行っていて、3月19日の金融政策決定会合で何らかの発表があるとされています。その中にはETF購入方針の見直しも含まれているのではと思われていたタイミングだったことも重なって、色々な憶測を招いたようです。
そのため、今週は日銀のETF買いの有無も注目されることになります。買い入れが行われれば、あっさりとこの話題は萎んでいくと思われますが、買い入れが行われなかった場合は、その時の値動きの状況にもよりますが、さらにさまざまな思惑が絡んでいくかもしれません。
米株市場が軟調な展開となった際は要注意
最後に米国株市場についても見ていきます。
■(図4)米NYダウ(日足)とMACD(2021年2月19日取引終了時点)
最近のNYダウ平均株価は最高値を更新するなど、株価水準自体は堅調なのですが、チャートで値動きをたどると、積極的に上値を伸ばしているわけではありません。
実際に、ローソク足の形を見ると、実体が短く、ヒゲが長いものが多くなっており、「上昇しては5日移動平均線まで押される」、「下落しては5日移動平均線まで買い戻される」といった具合に、5日移動平均線を意識する展開が目立つようになっています。かといって、5日、25日、75日、200日のすべての移動平均線が右肩上がりとなっているため、何だかんだで上昇基調が続いています。
株価材料面での背景としては、米追加経済政策の動向待ちや、米長期金利上昇への警戒、米国南部を襲った寒波による経済・生活への影響の見極めなどが挙げられますが、引き続きこれらの動向に振り回される場面がありそうです。
■(図5)米NASDAQ(週足)の動き(2021年2月19日取引終了時点)
NASDAQについては、チャート(週足)の見た目の印象では順調そのものに見えますが、先週と前週のローソク足の組み合わせが「包み足」となっています。
天井圏での「包み足」や「はらみ足」には注意が必要で、上の図5のチャートをさかのぼると、昨年の10月と9月には「包み足」、2月と1月には「はらみ足」がそれぞれ出現しましたが、その後に調整局面を迎えていたことが分かります。
今週は国内の経済指標や企業決算などの発表が少なく、米国株市場の動きに引っ張られやすくなりそうなため、米株市場が軟調な展開となった際には注意が必要です。
もっとも、相場を取り巻くムードはかなり先高観が強く、目先のネガティブな状況や不安よりもその先にある明るい未来の方に視線が向いています。先週のオプション取引市場では、3万9,000円や4万円といった、これまでの最高値(3万8,915円)を超える権利行使価格のコールオプションが約定するなど、少し気の早い動きも出てきています。
今後も中期的な実体経済の正常化の流れは続くと思われますが、実際のそのスピード感と、足元の相場ムードのテンションの高さとのあいだで温度差も生じています。株価の下落は押し目買いの好機となりますが、目先の下落が調整局面入りとなることも想定されるため、買いを入れるのは底入れから反発するタイミングを待つのが良いかもしれません。
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