日経平均は上方向の意識強まる

 祝日を挟んで4営業日となった先週末12日(金)の日経平均終値は2万9,520円で取引を終えました。前週末終値(2万8,779円)からは741円高で2週連続の上昇、そして節目の2万9,000円も突破し、2万9,500円台に乗せて、約30年ぶりの株価水準となっています。そして、15日の午前9時台、ついに日経平均は3万円にタッチしました。

 果たして、日経平均はこのままの勢いが続くのでしょうか? 早速、いつものように、足元の状況から確認します。

■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年2月12日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、週初の8日(月)に大幅上昇し、その後もジワリと上値を伸ばし、週末の引けにかけて失速気味となる展開でした。とりわけ、8日(月)の動きが週間の相場の動向を決したと言えます。前回のレポートでも触れた通り、先週末に上値ラインを超えたことで株高の「のろし」が上った格好です。下段のMACDもシグナルを上抜けており、上方向への意識が強い状況と言えます。

 今後の値動きを考える上でポイントになるのは、週末12日(金)のローソク足です。前日より高く始まったものの、引けにかけて下げる陰線になっています。

 前日のローソク足との組み合わせが、いわゆる「かぶせ線」と呼ばれる形のようにも見えますが、かぶせ線とは、当日の陰線が前日の陽線の実体(白い箱の部分)の半分以下まで食い込む状況を指しますので、厳密にはかぶせ線になっていません。そして、2万9,500円水準を維持して取引を終えているため、そこまでの警戒サインではありません。

 とはいえ、この12日(金)は、オプション・mini先物取引のSQ日でもありました。そのSQ値は2万9,718円だったのですが、この日の高値(2万9,650円)はSQ値に届いておらず、「幻のSQ」となっています。幻のSQとなった翌週以降の相場は弱くなることが多いとされているため、警戒しておく必要があります。

今週、日経平均がSQ値を超えれば上値トライの動きも?

 次に上昇の勢いについても見ていきます。

■(図2)日経平均(日足)と移動平均乖離率(25日)(2021年2月12日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図2は日経平均(日足)と25日移動平均線との乖離(かいり)率の推移を表したものです。

 昨年11月以降の日経平均は25日移動平均線をサポートにして、上げ下げを繰り返しながら上昇基調を描いているわけですが、それぞれの高値をつけたところの移動平均乖離率を見ると、次第に乖離率が切り下がっており、上昇の勢いが弱まっているように感じられます。

 したがって、今週の日経平均は、幻のSQや移動平均乖離率といった、上昇一服のサインを跳ねのけられるチカラの有無が焦点になります。今週の早い段階で日経平均がSQ値を超えることができれば上値トライの動きも出てくると思われます。

TOPIX優位の展開続く。株式市場の先高感は強い

 続いて、TOPIX(東証株価指数)の動きについても見ていきます。

■(図3)TOPIX(日足)とMACD(2021年2月12日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 前回のレポートでは、「TOPIX優位の展開が続き、それにけん引される格好で日経平均も上昇していく展開を想定」していましたが、実際に、上値の目安としていた「N計算値」、つまり、前回の25日移動平均線割れから反発した12月下旬からの上昇幅を元に計算した1,936pを達成しました。

 次の目標となるのは、1月14日高値と2月1日安値の下げ幅を元に計算した「V計算値」、具体的には1,964pになります。

 ちなみに、12日(金)時点のNT倍率(日経平均÷TOPIX)である15.2倍で日経平均の目標値を算出すると、N計算値で2万9,620円、V計算値で3万50円となります。先週の日経平均の週間高値が2万9,650円でしたので、N計算値と同じぐらいとなりました。

 そのため、引き続きTOPIXが上値をトライする展開となれば、日経平均が3万円を超えてさらに進むシナリオがあってもおかしくはないわけですが、今週は個別物色の手掛かりとなっていた企業決算の発表が週初の15日(月)でピークを超えることもあり、株価の先高期待と過熱感の綱引きになる展開も想定されます。

 もっとも、足元の株式市場を取り巻くムードは、経済正常化に伴う景気・企業業績の復調をはじめ、金融緩和の継続観測、米追加経済政策への期待などの他、懸念されていた長期金利の上昇についても、景気回復に伴う「良い金利上昇」であれば、ある程度の金利上昇は許容できるという見方になりつつあり、先高感は強いと言えます。

 となると、株価が下落したところでは押し目買いの好機となるわけですが、今後は「売りの質」を見極めることが重要になってくると思われます。つまり、「下がる」と考える人の売りをこなす局面から、「もういいだろう」と考える人の売りが出始める局面への変化です。

 前者の局面では、強気派と弱気派のせめぎ合いの中で、時折株価が下落するも、最後は買いが優勢になって、売り方の買い戻しを巻き込んでさらに株価が上昇していきます。

 例えば、最近市場を揺るがせた「ゲームストップ株の乱」も、米個人投資家が連携して同社株の買い手となり、売り手のヘッジファンドを締め上げていきました。買いが優勢になると、乗り遅れまいとする投資家の買いも加わって、さらに株価が上昇していき、市場内の勢力図は買い手が多数派になります。

 ただし、その後は買い手の中から売りが出てきて、「今日の友が明日の敵」となっていきます。すると利益確定を急ぐ動きが殺到し始めて後者の局面に入り、株価下落のピッチが早まりやすくなります。現在の状況はまだ前者の局面と思われますが、そろそろ後者の局面を意識しておいても良いかもしれません。

 もっとも、こうした局面の変化を探るのは難しいですし、これといった明確なサインもないのですが、特に大きな材料もなく株価がある程度大きく下がった日には注意かもしれません。市場が「利益確定のまとまった売りに押された」「急ピッチな上昇による調整」程度の受け止めで楽観ムードが継続しているあたりが、後になって「あれが相場の転換期だった」ということがよくありますので、いつでも逃げられる準備をしておく必要がありそうです。