※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]利回り4~5%:高配当バリュー株の強気継続く

 今日は、昨日のレポートの続きです。昨日のレポートをお読みでない方は、以下よりお読みいただけます。

2021年1月19日:利回り4~5%!高配当バリュー株の強気継続(その1):割安・成長株のトレンド循環

米金利上昇・原油価格上昇・世界景気回復が、高配当バリュー株上昇に寄与

 昨日のレポートで、1月に入ってから、大型・高配当利回り株のパフォーマンスが良くなっていることをお話ししました。以下、昨日のレポートにつけた表を再掲します。

1月の大型・高配当利回り株の株価上昇率、日経平均株価の上昇率と比較:1月18日まで

コード 銘柄名 配当
利回り
1月の
株価
上昇率
8306 三菱UFJ FG  5.1% 7.7%
8591 オリックス 4.3% 10.6%
8058 三菱商事 5.0% 4.8%
5020 ENEOS HD 5.3% 12.8%
7751 キヤノン 3.7% 10.3%
  日経平均株価 1.6% 2.9%
出所:楽天証券経済研究所が作成。配当利回りの根拠は下記の表

配当利回りの根拠

コード 銘柄名 配当
利回り
1株当たり
配当金
18日
株価
8306 三菱UFJ FG  5.1% 25 491.2
8591 オリックス 4.3% 76 1,752.5
8058 三菱商事 5.0% 134 2,662.0
5020 ENEOS HD 5.3% 22 417.9
7751 キヤノン 3.7% 80 2,182.0
注:配当利回りは1株当たり配当金を1月18日終値で割って算出。1株当たり配当金は会社予想ベース。キヤノンは2020年12月期、他は2021年3月期

 これら大型・高配当株は、昨年のパフォーマンスがきわめて不振でしたが、昨年11月以降、上昇ピッチが速くなってきています。

日経平均と、上記5銘柄の株価推移比較:2019年12月30日~2021年1月19日

注:2019年12月30日の値を100として指数化

 配当利回りが高いことが評価されていると言えますが、それだけが原因ではありません。投資環境の変化が重要な役割を果たしています。具体的には、米長期金利の上昇、原油など資源価格の上昇、世界景気の回復期待が強まっていることが、これら高配当株の上昇を引き起こしています。

三大割安株:金融株・資源関連株・製造業に注目

 三大割安株とは、私が勝手にネーミングしたものです。金融株・資源関連株・製造業に、株価指標で見てきわめて割安な銘柄が多いので、この3セクターをまとめて三大割安株と呼んでいます。さきほど、1月にパフォーマンスが好調な割安株として例に挙げた5銘柄も、三大割安株からピックアップしています。三菱UFJとオリックスが「金融株」、三菱商事とENEOSが「資源関連株」、キヤノンが「製造業」です。

 この3セクターには、配当をしっかり出しているにもかかわらず、株式市場で不人気で株価低迷が続いてきた銘柄が多数あります。そういう銘柄が、高配当利回り株の投資候補となります。
ただし、ただ配当利回りが高いだけでは、株価の上昇は見込めません。なんらかの環境変化がない限り、割安の修正は始まりません。現在、始まっている株価の反発は、それぞれ固有の環境変化に起因しています。

【1】金融株は、ドル長期金利に連動
 金融株は金利連動株です。ドル長期金利が下がると将来の収益が低下するというイメージがあるため、株価が下がる傾向があります。ドル金利が上がると、将来の収益が増加するイメージから、株価が上昇します。

 すべての金融株の収益が、金利に依存しているわけではありませんが、株式市場ではほぼすべての金融株がドルの長期金利に連動する傾向があります。銀行・損害保険・生命保険・リースなどが、金利低下で売られ、金利上昇で買われます。

 それは日本だけでありません。欧米でも同じことが起こっています。世界的な金利低下が嫌気されて、金融株は世界中で売られてきました。その結果、低金利下でもしっかり利益をあげている金融株は、株価指標で見て割安なバリュー株となります。今後も金融株の反発が続くか否かは、米長期金利の上昇が続くか否かによって決まります。

米長期金利の推移:2004年1月~2021年1月(19日)

出所:楽天証券経済研究所作成

 私は、今年の後半、米景気の回復色が強まるとともにドル長期金利が2%に近づくと予想しています。バイデン政権が巨額の財政出動を実施し、米国債の発行が大幅に増加することも、長期金利上昇につながると考えています。

 予想通り、米長期金利が上昇すると、今年は、金融株のパフォーマンスが高くなると考えられます。

【2】資源関連株は、原油など資源価格に連動

 資源関連株は、資源価格に連動する傾向があります。コロナショックで大幅に下落した原油や銅などの資源価格が反発してきていることが、最近の資源関連株の上昇に寄与しています。

WTI原油先物(期近)の推移:2000年1月~2021年1月(19日)

出所:楽天証券経済研究所作成

【3】製造業の業績は、世界景気次第

 出遅れ製造業の株価が急速に回復してきたのは、世界景気回復期待が高まったことによります。年後半、世界景気の回復が続けば、製造業バリュー株の上昇も続くと考えられます。

 ドル金利の上昇も、原油価格の上昇も、製造業の回復期待も、すべて世界景気の回復期待に基づくものです。今年、世界景気の回復が続くか否かが鍵を握っています。

 私は、メインシナリオで今年後半、世界景気の回復が加速すると考えています。したがって、今年は、高配当バリュー株のパフォーマンスが良くなると予想しています。