日経平均株価は2週連続で大幅高

 1月最初の週の日経平均株価は、1週間(1月4~8日)で694円上昇して、2万8,139円となりました。787円上昇した12月最終週(12月28~30日)に続いて2週連続の大幅高です。

 世界景気の回復期待に基づいて、「世界景気敏感株」である日本株を外国人が買い戻す流れはまだ続いていると考えられます。

日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と日経平均先物の合計):2020年1月6日~2021年1月8日(外国人売買2020年12月30日まで)

出所:東京証券取引所データより楽天証券経済研究所が作成。外国人の売買動向は、株式現物と日経平均先物の合計

 ご覧いただくとわかる通り、日経平均の動きを決めているのは、いつも外国人投資家です。昨年年初(2~3月)の急落は、外国人による巨額の売り越しによって起きました。昨年11月以降の急騰は、外国人の巨額の買い越しによって起きたものです。

 昨年11月、外国人投資家が、株式現物と日経平均先物を合わせて2兆3,802億円も日本株を買い越し、日経平均を15%も急騰させました。新型コロナ・ワクチンの開発成功および米大統領選に勝利したバイデン氏への期待で世界的に株高となった流れを受け、日本株にも外国人の買いが増えました。

 第一弾の買いは11月でいったん終了しました。12月に入り、クリスマス休暇に入る外国人の買いが減少すると、日経平均は上値が重くなりました。12月25日にかけて外国人売買が少なくなるにつれて、日経平均の値動きは小さくなっていきました。

 ところが、12月最終週から、日経平均の動きが再び大きくなりました。12月最終週(28-30日の3営業日)、外国人は日経平均先物を957億円買い越しています。株式現物は74億円の売り越しでしたが、先物と株式現物を合わせると、3営業日で883億円の買い越しでした。11月の第一段の買いほどの勢いはありませんが、外国人投資家の先物買いが続いています。後段で説明する「踏み上げ」が起こっている可能性があります。1月第1週の売買データは発表されていませんが、日経平均の大幅高が続いたことを見ると、外国人の買いが続いていたと推定されます。

日経平均先物に「踏み上げ」が起こっている

 12月最終週も、外国人投資家が日経平均先物を買い越しているのは、いわゆる「踏み上げ」【注】が起こったためと、推定しています。

【注】踏み上げ
日経平均が下落すると予想して日経平均先物の売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していく中で、損失拡大を防ぐために日経平均先物の買い戻しを迫られること。

 それが、東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の推移から読み取れます。詳しく説明すると難解になるので、説明は割愛して結論だけ述べます。東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れます。

 売り建てが増えると裁定売り残が増え、売り建てが減ると裁定売り残が減ります。以下をご覧ください。

日経平均と裁定売り残の推移:2018年1月4日~2021年1月8日(裁定売り残は2020年12月30日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 外国人投資家は、過去3年間、日本株を大量に売り越してきました。株式現物だけでなく、日経平均先物の売り建ても増やしてきたことが、裁定売り残高の増加からわかります。

 ところが、外国人の先物売り建ては、成功していません。2019年10~12月には、日経平均が上昇する中で、先物の踏み上げが起こっています。2020年に入り、コロナショックの急落過程で、先物の売り建てを大幅に増やしましたが、その後の急反発局面で、また踏み上げが起こりました。

 まず2020年5~7月の急反発局面で、先物の踏み上げが起こりました。日経平均が上昇する中で、外国人投機筋は、日経平均先物の買い戻しを余儀なくされました。次が、2020年11月からの日経平均急騰局面です。ここでも、先物の踏み上げが起こっています。

 昨年末時点で、裁定売り残高は1.3兆円まで減ってきました。今しばらく踏み上げによる先物買戻しが続く可能性がありますが、いずれ裁定売り残が1兆円を割れるあたりから、買戻し圧力は減少していく可能性もあります。

 先物の踏み上げについて、もう少し詳しく知りたい方は、以下の(参考)をお読みください。

【参考】日経平均先物で投機筋が売り越し(イメージ図)

 日経平均先物市場では、売り建て残高(合計)と、買い建て残高(合計)は、必ず一致します。なぜならば、誰かが1枚先物を売るとき、他の誰かが先物を1枚買わないと、売買が成立しないからです。

 投機筋が先物を買って、先物が現物対比で割高になると、裁定業者が先物を売って株式現物を買います(裁定買い)。投機筋が先物を売って、先物が現物対比で割安になると、裁定業者が先物を買って株式現物を売ります(裁定解消売り)。裁定業者が、投機筋の先物売買の相手方になるイメージです。

 通常、投機筋の先物ポジションは、買い建てが売り建てを大幅に上回ります。以下のような状態です。

日経平均先物・投機筋が買い越しの状態(イメージ図)

出所:筆者作成

 ところが、まれに投機筋が先物の買い建てを縮小し、売り建てを大幅に拡大することがあります。投機筋が、下げを予測して、ポジションを張った状態です。それが、今の状態です。イメージ図で示すと、以下のような状態です。

日経平均先物・投機筋が売り越しの状態(イメージ図)

注:筆者作成

 今、日経平均先物市場では、珍しく投機筋(主に外国人)が売り建てを積み上げた状態です。日経平均上昇の勢いが止まらないので、その外国人が先物を買い戻さざるを得ない「踏み上げ」が起こっていると考えられます。

日本株の投資方針

 私は、メインシナリオとして、今年、ワクチンの供給によって世界経済が正常化に向かい、世界景気の回復が続くことを想定しています。その場合、外国人の買いが続き、日経平均は年内に3万円をつけると考えています。

 ただし、足元の上昇ピッチが速かったので、1~3月には一時スピード調整がある可能性もあります。

 いずれにしろ、日本株は割安で、長期的に買い場との見方は継続します。時間分散しつつ、配当利回り4%超えている、割安な大型高配当利回り株に投資していくことが長期的な資産形成に寄与すると思います。

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