税金の基本:株式を売却して生じた利益や損失の税金の取り扱い、どうすれば?
明けましておめでとうございます。
本年も、公認会計士・税理士かつ個人投資家として、実際に株式投資、資産運用をしているからこそお伝えできる知識・情報の提供に努めてまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
さて、早いもので2021年になり、2020年分の株式投資の確定申告の準備を始める時期となりました。
ただ、特に株式投資を始めたばかりの方からは、株式投資の税金は難しくてよく分からない…という声をよく聞きます。
そこで今回は、株式を売却して利益や損失が出た場合の税金の取り扱いの基本についてまとめてみようと思います。
株式投資の取引口座は4つある
個人投資家が株式投資をする際に用いる口座は、主に次の4種類になります。
- NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座
- 一般口座
- 特定口座(源泉徴収なし)
- 特定口座(源泉徴収あり)
まずは、これらのうち、NISA口座以外の口座での2020年の株式投資で生じた損益を計算、把握することがスタートになります。
【NISA口座】生じた売却損益は何もしなくてOK
NISA口座で生じた売却損益を把握する必要がない理由は、そもそもNISA口座で保有している株を売却して生じた利益は非課税、損失は切り捨てになり、いずれも確定申告が不要だからです。
【一般口座】「損益を自分で計算」+「確定申告」
一般口座で売却した株がある場合、ご自身でまずやらなくてはならないのが、売却した株の損益を計算することです。
特に、同じ株を複数回買って、その中の一部を売却する、というような場合、「総平均法に準ずる方法」により取得費を計算し、売却価格から差し引いて利益を計算するという少しややこしい作業が必要になります。
計算方法については、国税庁のパンフレットも参考にしてください。
計算の結果、利益が生じたら確定申告をして税金を納付する必要があります(ただし、後述しますが、確定申告不要な場合もあります)。
また、損失が生じた場合も確定申告をすれば、3年間にわたり損失の繰り越し控除ができ、将来の利益と相殺して税額を減らすことができます。
特定口座は2種類ある
特定口座には「源泉徴収なし」と「源泉徴収あり」があります。国税庁のパンフレットなどでは、前者を「簡易申告口座」、後者を「源泉徴収口座」と表記していますが、その表現だと分かりにくいので、本コラムでは前者を「源泉徴収なしの特定口座」、後者を「源泉徴収ありの特定口座」として解説します。
特定口座は、売却損益の計算を投資家自身が行うのではなく、証券会社が代わりに行ってくれるという非常に便利なものです。
【源泉徴収なしの特定口座】特定口座年間取引報告書で確定申告
源泉徴収なしの特定口座は、1年間の売却損益の計算結果が記されている「特定口座年間取引報告書」を使って、確定申告をします。
確定申告については、上記の一般口座の場合と同様です。
【源泉徴収ありの特定口座】基本は申告不要。でも誤解しやすいポイントがある
対して、源泉徴収ありの特定口座の場合は、株式売買により生じた売却損益を証券会社が計算して特定口座年間取引報告書を発行してくれるだけにとどまらず、税金の納付も天引き(源泉徴収)という形で済ませてくれます。
ですから、売却により利益が出ている場合でも、確定申告をする必要はありません。過去の繰り越し損失と利益を相殺するためなど、確定申告をすることもできます。
もし、売却により損失が生じてしまった場合は、一般口座や源泉徴収なしの特定口座と同様、確定申告をすることにより3年間損失を繰り越すことができます。
誤解しやすいポイント:源泉徴収ありの特定口座
この点、特に誤解されがちなのが、「源泉徴収ありの特定口座=利益が出ていても損失が出ていても証券会社が勝手に処理してくれる」と思っている方が非常に多いです。
過去の損失と利益を相殺したり、損失を3年間繰り越すための処理は、証券会社では一切行いません。これらをしたいのであれば、たとえ源泉徴収ありの特定口座から生じたものであっても、確定申告は必ず行うようにしてください。
【確定申告が不要な場合がある!】一般口座・源泉徴収なしの特定口座
最後に、一般口座や源泉徴収なしの特定口座で売却により利益が出たにもかかわらず確定申告をしなくてもよい場合をご紹介します。
一般口座や源泉徴収なしの特定口座においては、売却による利益は確定申告をするのが原則です。
しかし、例えば下記の場合は確定申告をしなくてもよいことになっています。
(1)一般口座や源泉徴収なしの特定口座で生じた売却益と、それ以外の所得を合計した金額が、基礎控除(所得税48万円、住民税43万円)に収まる場合
(2)会社員など年末調整で所得税の納税が済んでいる方で、一般口座や源泉徴収なしの特定口座で生じた売却益と、それ以外の所得(給与所得・退職所得除く)の合計が20万円以下の場合(所得税のみ確定申告不要。住民税は必要)
(3)公的年金が年間400万円以下の年金受給者の方で、一般口座や源泉徴収なしの特定口座で生じた売却益と、それ以外の所得(年金の所得除く)の合計が20万円以下の場合(所得税のみ確定申告不要。住民税は必要)
(2)については意外と奥深いので、以前書いた下記のコラムも参考にしてください。
「確定申告」会社員の20万円問題(その1):副業・配当で申告が必要な人
「確定申告」会社員の20万円問題(その2):確定申告をしたら損をする人・得する人
いろいろな手間暇や、メリット・デメリットなどを考えると、筆者としては源泉徴収ありの特定口座をお勧めしますし、筆者自身も使用しています。
特定口座の申し込みはいつでも可能ですし、年内に取引を行う前であれば源泉徴収なしからありへの切り替えもできます。この機会にぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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