信用取引では、相場の過熱感を抑えるために取引が制限されることがあります。

 例えば、株価の上昇(下落)に伴い、信用取引の買い(売り)が急増することで、「さすがに行き過ぎなのでは?」という株価水準をつけることはよくありますし、さらに、積み上がった信用買い(売り)残高がいずれは返済されることになるため、今度は将来の売り(買い圧力)として意識されやすくなります。

 このように、信用取引の売買が急激に変動すると、株価に与える影響が大きくなりやすいため、投資家の予想外の損失拡大を防ぐ、もしくは要注意である旨を周知するために実施されるのが信用取引規制になります。

 ひとくちに規制といっても様々な種類がありますが、「誰が規制をかけているのか」、「どんな規制なのか?」の視点を切り口にすると整理しやすくなります。以下に主なものを表にまとめました。

主な信用取引の規制

規制する主体 規制の内容 詳細
取引所 「日々公表銘柄」に指定 「日々公表銘柄」に指定されると、通常は週1回公表される信用取引残高が毎営業日公表されます。実際の取引は制限されず、取引が過熱していることを投資家に周知するものです。
「増し担保規制」の実施 委託保証金率が通常の30%から引き上げられる規制措置です。引き上げと同時に一定の比率で現金の保証金が求められます。(例)委託保証金率50%(うち現金20%)、委託保証金率70%(うち現金40%)など
証券金融会社 「貸株注意喚起銘柄」に指定 「日々公表銘柄」と同じく、この段階では取引の制限はありません。貸株(売建て)が増加していることを周知し、逆日歩の発生や、新規売建て禁止への警戒を促します。
貸借取引の利用制限
「新規売り建て禁止」
「現引き禁止」
「買い方の転売禁止」
「貸株注意喚起銘柄」に指定された後も状況が改善しない、悪化してしまった場合に、新規売り建て、現引き、買い方の転売の3つのうち、全部もしくは一部が禁止されます。
証券会社 新規建て停止(買い・売り)、増し担保、保証金評価(代用掛目)の引き下げなど 証券会社が独自に規制をかけることもあります。そのため、同じ銘柄でも証券会社によって信用取引の可否や条件が異なることが起こり得ます。また、値動きの激しい株式銘柄などの保証金評価(代用掛目)を引き下げることが多いようです。

 この他にも、取引所がすべての銘柄に対して行う「全面規制」などがあります。全面規制の内容は増し担保規制や株式の代用掛目変更が中心ですが、この全面規制が実施されることはあまりありません。基本的には銘柄ごとに行われる「個別規制」がほとんどになります。ちなみに、取引所が行った全面規制の詳細は日本取引上のサイトに掲載されていますので、参考までに覗いてみるのも良いかもしれません。

 また、信用規制絡みで多い質問が「増し担保規制」です。上の表にもある通り、増し担保規制とは、委託保証金率が30%から引き上げられる規制措置です。

 例えば、取引金額300万円の信用新規建てに必要な保証金は、委託保証金率30%の90万円です。この銘柄が増し担保規制の対象となり、委託保証金率50%(うち現金20%)となった場合は、必要な保証金が150万円に増えるほか、うち60万円分は必ず現金で用意しないといけないことになります。

 増し担保規制には、新規建てのハードルを引き上げて相場の過熱感を抑制しようというねらいがあります。実際に、増し担保規制によって新規の建玉が増えにくくなるわけですから、これまで勢いよく上昇(下落)していた株価が急におとなしくなったり、反転するケースが多く見られます。

 なお、増し担保規制はあくまでも規制実施後の新規建てが対象となるため、規制が実施される前に保有している建玉に対しては委託保証金率の引き上げは行われません。

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