※このインタビューは2019/02/12に公開した記事となります。
会社員時代にユニクロ株などで資産を築き、2003年から専業投資家として活躍するアイルさんのインタビュー中編をお送りします。今回は投資銘柄の見つけ方や買い増しのポイントなどについて聞きました。
素人にもチャンスあり!身近な企業を見逃すな
──アイルさんは、自分にとって身近なところで成長しそうな会社を探して投資するとのことですが、具体的にはどのようにして投資先を見つけるのですか。
ユニクロのときのように「町を歩いていてふと目に止まって…」ということはけっこうあります。「最近この店よく見るなあ」とか「いつも行列ができているなぁ」と思ったら、とりあえずどんな会社が運営しているのか調べてみます。もちろん、ネットで知って興味を持つとか、人との会話のなかで出てきて調べてみようと思うとか、そういうこともよくあります。
──行列を見て「この店、美味しいのかな」と思うだけではダメなんですね(笑)。
要は、何でも投資家目線で見るクセをつけるといいと思いますよ。ただ漫然と町を歩くのでなく、新しい店ができていないか、人の流れが変わっていないかなどと気を配るようにする。テレビやネットを見ているときも、どこかの会社が新技術を開発したとか、最近売れている商品があるとか、そういう話題になったら聞き漏らさない。そうしたクセをつけることが大事だと思います。
──なるほど。
あと、「自分にいい会社なんて見つけられるわけがない」と思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。「世の中には投資のプロが山ほどいるのに、素人の自分に磨けば光る原石が探せるわけがないだろう」と。でも、探せるわけがない!という思い込みが、銘柄発見のチャンスを見逃すことに繋がっているような気がします。そう決め付ける必要はないんですよ。
──投資のプロよりも早く見つけることもできると?
はい、身近なジャンルであれば可能性はあります。自分が関心がある分野なら、いろんな情報が入ってるくるし、自分が住んでいる地域のことならよその人より詳しいでしょう? それらは大きなアドバンテージです。
──たしかにアイルさんは、今、名古屋でどんな店が流行っているかとか、東京の人より詳しいでしょうからね。
そういうことです。僕がユニクロ株を発掘できたのも当時、北九州に住んでいたからですし。
──実際、名古屋の会社には投資しているんですか。
もちろん。保有株すべてというわけではないですが、名古屋証券取引所に上場しているときに買い、何年かして東京証券取引所に上場して一気に株価が上がるということもあります。近い将来、東証に上場しそうな銘柄を狙ったりもします。
──ともあれ、地元の有望企業を探すのは手だと?
はい、それは間違いありません。
毎年6月には株主総会周りを行う
──町を歩いていて繁盛店を見つけたら、どんな会社なのかを調べてみる。それで順調に売上げが伸びていたりしたら、すぐに株を購入するのですか。
いえ、今後も成長するかどうかを自分なりに検証します。一時的なブームで終わってしまうこともよくありますから。
──具体的には何を検証するのですか?
まずはビジネスモデルを検証します。今後も成長できる仕組みがきちんとできているかどうか。それと、とくに中小中堅企業の場合、トップがどんな人物なのかも重要なので、経営者についてもチェックします。
──それで購入をやめることも多い?
はい。いくらいい会社でも株価が割高だったら手を出しにくいので、買いたいけど買えないというケースも当然あります。そのような時は楽天証券のお気に入り銘柄に登録して、定期的に業績や株価の推移を確認します。
──最初はどれくらい買うのですか?
これもケースバイケースですが、1単元100株から買うことが多いですね。まずは少額買って四半期決算の推移を見たり、株主総会に参加して経営者を自分の目で確認したりして、成長ストーリーに対する確信が高まったら買い増ししていきます。
──その判断も難しいですよね。
そう、だからこそ、買った後の経過観測が大事になります。四半期毎に決算が出てくるので、成長ストーリーから外れていないか、定期的に確認します。あまり短期思考になってしまうのは良くないですが(笑)。株主総会にも継続して参加するようにしています。
──株主総会に参加するようになったきっかけは何だったのですか?
まだ会社に勤めていた頃、当時、株を持っていたスクウェア(現スクウェア・エニックス・ホールディングス)の株主総会に行ってみたんです。休日開催で、たまたま東京出張のスケジュールと重なったので、一度どんなものかのぞいてみようと。
ゲーム好きの僕にとっては、発売前の新作ゲームを体験できる、という期待も大きかったわけですが(笑)。そしたら、とてもなごやかな雰囲気で、すごく楽しかったんです。しかも、質疑応答で直接経営者に質問することもできる。それで、退職後はいろんな会社の総会に行くようになりました。
──得るものは大きいのですね。
その会社のトップや役員の話を直接聞けますし、個人投資家がトップに質問できる機会は限られますからね。最近はIR関係のサイトなどで社長インタビューを見たりできますが、生で見るとぜんぜん印象が違ったりします。表情や仕草からわかることもありますし。
──質疑応答は重要ですか?
私はそれが一番重要だと思います。株主の質問にどう答えるかからもいろんなことが見えてきます。はぐらかすように話したり、核心に触れようとしなかったら、ちょっと怪しいな、あまり自信がないんだなと感じます。
──今もよく行かれるのですか。
地元・名古屋の会社の株主総会はもとより、東京にもよく行きます。株主総会って6月が多いじゃないですか。だから、毎年6月に10日間くらい東京にホテルを取り、総会回りをするんです。10日間で20社から30社くらい回ります。
──お知り合いの投資家の方々で、行く方も多いのですか?
以前と比べると株主総会に参加する投資仲間が増えてきた感じはしますね。得られるものは大きいので、個別株投資を行っている人なら一度は出席してみた方が良いと思います。
PER10倍の成長銘柄を探すのは困難
──アイルさんは信用取引は基本しないとのことですが、その理由を教えてください。
10年スパンの長期投資なので、基本的に現物投資ですね。株価はリーマン・ショックのように暴落することもあるので、暴落時にも耐えられる現物投資としています。暴落時に強制的に決済される信用取引は、長期投資には向かないと考えています。買いたい銘柄が見付かったのに、すぐに売れそうな株がない場合は、つなぎで信用買建てをすることもありますが、レアケースですね。
──最近は割安株が見つけにくいとおっしゃっていましたよね。実際、そうなんですか。
ここにきて株安が続いていますが、アベノミクス以降、何だかんだいって株価水準が上がっていますからね。例えばリーマン・ショック後、景気が戻ってきた頃とか、PER(株価収益率)10倍を切る割安成長株がごろごろしていました。でも、最近はそのレベルの銘柄を見つけるのは難しくなっています。
──とはいえ、探せば見つけられますか?
はい。しかし、よくよく調べたら「ワケあり」だったりするんです。リーマン・ショック後は、業績がいいのになぜか割安なまま放置されている銘柄がたくさんありました。だから、買う価値があったんです。でも今は、何かしらのマイナス要素があるから安いというケースが多いんです。
──単純に「割安」とは言えないのですね。
はい。ですから、あまり割安ということにこだわらないほうがいいのかなと。もちろん、本当にお買い得の割安成長株が皆無というわけではないので、いろんな手を尽くして探す努力はします。でも、ある程度は妥協というか、基準を下げることも必要かなということです。
──基準を下げても成長幅が大きければ利益を上げられるわけですしね。
その通りです。最も重視すべきは成長するかどうかですから。
──今後また割安株がごろごろしている時代がくる可能性はありますか。
期待したいですね。リーマン・ショック級とまではいかなくても景気がどん底まで落ち込んだら当然、株価は急落するでしょうから。
──それはそれで困りますね(笑)。では、次回は現在どんな銘柄を保有しているのかをお伺いします。
後編:大幅高株の発掘が投資の楽しみ!5つ主力銘柄の入れ替え方法は? を読む!
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