※本記事は2020年7月31日に公開したものです。

人気投資ブロガーに聞く割安株の投資戦略!

 株式には、成長株(グロース)、割安株(バリュー)を狙って投資する戦略がある。どこに狙いを定めるべきか。百戦錬磨の投資ブロガーが自らの投資戦術を余すことなく紹介する。

 今回は、IPO(新規公開株)セカンダリー投資で年率30%の投資成績、資産2億円を達成した弐億貯男(におく・ためお)さんが、投資術の秘けつを語った。

低PER・増収増益銘柄を起点にIPOセカンダリー投資で大成功 

 人気ブロガーはどんな手法で、割安成長株投資に成功しているのか? 会社員の中でも超多忙な営業職からのセミリタイアを夢見て、投資を始めた弐億貯男さん。

 株を始めた初心者が最初に学ぶ株価指標といえば「PER(株価収益率)」。企業が1年間に上げた利益を発行済みの株式1株あたりで換算し、これより現在の株価が割安かどうか測る指標だ。弐億貯男さんも「PERを活用した割安株投資は、投資初心者にもとっつきやすかったので、株式投資を始めた頃から取り入れていました。増収増益の続く好業績の銘柄なら、短期的、一時的に株価が下がることがあっても、業績成長に応じてPERが下がり、やがては株価も株主配当金も底上げされるという期待もあったことから、自然と割安成長株投資を意識した投資を始めるようになりました」という。そしてポリシーは「割安になるまで待つ。妥協して買ったら後悔します!」というもの。

 と、ここまではオーソドックスな割安成長株の考え方だが、弐億貯男さんが独特なのは、主な投資対象を「IPOのセカンダリー」に絞ったこと。

 IPOセカンダリー投資とは、新規公開株が株の公募・売り出し上場後、誰もが自由に株式市場で売り買いできるようになったところで、その株を買うこと。上場直後のIPO株は、成長期待や多くの投資家の参入もあって、ストップ高を連発するなど株価が乱高下しやすいが、弐億貯男さんは、「直近IPO銘柄の中で、株価が公開価格と比較して調整(株価が横ばい・下落)気味の銘柄を拾っています」と言う。「成長銘柄を手っ取り早く見つけるのにはIPO銘柄を洗ってみるほうが全銘柄の中から成長株を見つけ出すよりも簡単です」という投資戦略は、日頃、会社員としても忙しい毎日を送る中で生まれた効率重視の発想が、資産大躍進の原動力になった。

株価低迷IPO株を狙って資産2億円達成! 

 確かに約3,800銘柄近くある上場企業すべての中から探すより、年間100銘柄にも満たないIPO株の中から有望株を探すほうが、効率が断然、いいのは確か。弐億貯男さんは2012年に上場したものの、当初は利益が上がらず株価低迷が続いた介護施設関連株のチャーム・ケア・コーポレーション(6062)を長期保有し、見事テンバガー(株価10倍)を実現した。

「2012年6月の上場から数年は施設の新設による費用が先行して、売上高は伸びるものの、利益が上がらない状況が続いていました。しかし、社長が介護施設関連はストックビジネス。一定の稼働率を維持できれば、施設が増えた分だけ売り上げ・利益が比例して伸びると、インタビューで語っていたことを信じて継続保有。読み通り、施設の新設費用を、既存のホームからの売り上げ・利益で吸収できるようになり、業績が増収増益傾向に転換しました。株価上昇の過程で順次、利益確定を進めて、6,100万円という投資歴の中でも最大の利益を獲得できました」(弐億貯男さん)

 簡単なように見えるが、IPOの2012年から株価が急上昇を始めた2016年以降まで、その将来性を信じて長期保有を続けた弐億貯男さんの忍耐強さや信念があったからこその成功と言える。まさに割安成長株で成功するお手本といっていい。

 IPO投資の世界は、マザーズなどに新規上場する時価総額の低い小型株の人気が高い。少しの買いで株価2倍、3倍も当たり前の派手な値動きが特徴だ。その一方、東証1部に直接、新規上場するような大型案件は、IPOの際に公募売り出しされる株数も多く、上場直後の株価急騰が見込めないので人気が薄い。弐億貯男さんがその傾向を逆手にとって成功したのが、丸紅系のマンション向け光通信接続サービスで業界トップのアルテリア・ネットワークス(4423)だ。

「大型株ということで初値が公開価格を割り込んだため購入し、独占禁止法に抵触するかもしれない行為があったということで社長が辞任し、ストップ安になった局面で買い増ししました。その後、5G(第5世代移動通信システム)関連ということで評価が見直され、買い値の2倍で利益確定できました」と振り返る。まさに「割安になるまで待つ」という姿勢を貫いたゆえの勝利だった。

「新規設備投資や出店加速」と利益成長のタイムラグを狙う! 

 IPOセカンダリー投資以外でも、紙おむつ向け不織布のハビックス(3895)の場合は工場の新設・拡張予定の情報を目にして、製造能力拡張後の売上高の伸びに期待して先回り投資。見事、990万円の利益獲得に成功した。

 福証銘柄のホテルチェーン・アメイズ(6076)は、社長が打ち出した年率15%成長で30年後に売上5,000億円という長期目標と、ロードサイドの低コスト小型ホテルという独特なビジネスモデルに共感して購入。出店ペースが鈍化して出店コストが減り、一時的に利益が伸びて株価が上昇したタイミングで手堅く810万円の利益を確定した弐億貯男さん。

「設備投資」や「出店ペースの加速」は当初、利益の圧迫要因になって株価下落につながるものの、その後、新規投資が実を結べば利益躍進、株価上昇の原動力になる。そのタイムラグを利用して、用意周到に先回り投資するなど、将来の業績変化に対する読みの鋭さが弐億貯男さんの武器。

 一方、「株の売り時に関しては一律の基準は決めていません。銘柄ごとにこの銘柄なら2倍になれば満足、5倍まで狙えるかも、30%上がれば十分…などと想像して保有しています」と語るように、買い時も売り時も、機を見て敏なる独特の着眼点が勝利の秘けつのよう。

 数少ない投資失敗例も「創業者の予期せぬ不祥事」や「保有直後の大幅減配発表」など「事故」に近いものばかり。しかも、スパッと見切り売りをして損失を最小限に抑えている点はさすがと言える。

 そんな弐億貯男さんは投資未経験者に向けて、「株式投資に興味がある人は、いろいろ勉強してから始めるというのではなく、まずは証券口座を開設して、株式を買ってみることが何より重要。実践する中でいろいろ失敗も経験して学んでいったほうが早く上達できると思います」とアドバイスする。

 さらに自身の経験も踏まえて、「今の相場が過熱していて違和感があるという方は、妥協して買って後悔するかもしれませんので、株式市場が調整するまで辛抱強く待つという選択肢もありだと思います。相場に乗り遅れまいと追いかけるなら、念のために買付余力は多く残しておいたほうがいいと思います」と語る。

 コロナ・ショック後の株価回復局面では、マザーズやジャスダック市場に過熱感があるため、弐億貯男さんは「もう一度、調整する局面を待っている状態」と言う。さすが「妥協して買ったら後悔します」と繰り返し語るように、株価が割安になるまでじっと我慢して待つ、という忍耐力も、株で成功するための重要な秘けつのようだ。

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弐億貯男(におく・ためお)さんプロフィール

9月発売の著書は早くも話題!

会社員をしながらの株式投資によって、100万円を17年間で2億円に増やした現役会社員の投資家。割安成長株の中長期投資の手法で、運用益は年率30%キープ。現在は、Twitter(6万フォロワー)や投資ブログ「サラリーマンが株式投資でセミリタイアを目指してみました。」で、個人投資家への助言や注意喚起も発信し大人気に。

さらに、9月に刊行予定の書籍『10万円から始める! 割安成長株で2億円』(ダイヤモンド社刊)が、すでにネット書店人気ランキングで上位に上がるなど、注目を集めている。