※このインタビューは2020年3月19日に実施し、2020年4月24日に初回掲載したものです。
中学2年で株式投資を始め、昨年、累計利益4億円を達成、人気ブログ『かぶ1000投資日記』を運営するかぶ1000さんインタビューの中編をお届けします。
今回は、なぜバリュー投資を始めるようになったのか、どのようにして投資銘柄を決めているのかなどについてお伺いしました。
バリュー投資の真髄を教えてくれた1冊の本とは?
──ここからはかぶ1000さんの投資手法についてお伺いしたく思います。
初めに、どういう基準で銘柄を選んでいるのか教えて下さい。
その会社本来の実力に比べて、明らかに株価が安いと思える銘柄です。過小評価されている銘柄といってもいいかもしれません。
過小評価されているわけですから、適正に評価されれば、当然、株価の上昇が見込めます。
──いわゆるバリュー投資(割安株投資)ですね。
はい、株式投資の王道の1つです。高成長が期待できる企業に投資するグロース投資(成長株投資)とよく比較されます。
──グロース投資よりバリュー投資のほうが勝ちやすいのですか。
それは何とも言えません。人によって考えが分かれるところです。
僕は、安定した利益を目指すにはバリュー投資がベストだと思っています。
──中学の頃からバリュー投資派だったのですか。
いえ、それはありません(笑)。当時は割安かどうかなんてまったく意識していませんでした。
というか、僕が株を始めたのは好景気に沸いていた時代だったので、割安株なんてほとんどなかったんです。
──いつ頃からバリュー投資を実践しているのですか。
20代半ばの頃、1998年にアジア通貨危機というのがあり、株が大暴落したんです。1部上場の中にも50円以下まで下がる銘柄が数百銘柄ありました。
それで、これらの企業は本当に50円以下の価値しかないのか、経済環境が変われば元の値に戻るのではないか、だとしたら割安株を狙うのは有効ではないか、などと考えていました。
そのときは自分の考えに確信を持つには至らなかったのですが、それからしばらくしてある本を読み、その思いが確固たるものへと変わったんです。
──何という本ですか。
ベンジャミン・グレアムという米国の経済学者が書いた『賢明なる投資家』という本です。グレアムさんは、かのウォーレン・バフェットの師匠であり、「バリュー投資の父」などと呼ばれているのですが、その人が「割安な銘柄に投資することが長期的な好パフォーマンスをもたらす」と明言していたんです。
──これまででいちばん影響を受けた本ですか。
そうですね。僕は人の意見に左右されるほうではないのですが、この本だけは別です。これを読んでいなかったら、今の僕はなかったかもしれません。
資産バリュー投資家を目指すなら「ネットネット株」に注目!
──かぶ1000さんはご自身のことを「バリュー投資家」ではなく「資産バリュー投資家」と呼んでいますよね。これはどういうことですか。
株をやっている人には説明するまでもないですが、その銘柄が割安かどうかを知る指標の1つにPER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)があります。前者はその名の通り、その会社の収益に対して株価が高いか安いかを示す指標で、後者はその会社が所有する資産に対して高いか安いかを示す指標です。
つまり、ひと口に「割安」といっても、収益に対して割安な場合と、資産に対して割安な場合とがあるわけです。
──かぶ1000さんは収益より資産を重視されている、ということでしょうか。
はい。
──それはなぜですか。
収益というのは1年間の業績のことであり、今年よくても来年は悪化するかもしれません。
それに対して資産は、その会社が所有している土地や建物、株式、現金などのことです。長い間の企業活動によって築いたものであり、ある日突然、半分になってしまうようなことは考えにくいです。
ある程度、長期保有する前提で考えると、収益より資産をベースにしたほうが確実性が高いわけです。
──なるほど。でも、例えば赤字が続いて所有資産を売却…なんてこともありますよね。
はい。だから、僕もPBRだけで判断するわけではありません。
これはバリュー投資でもグロース投資でも一緒ですが、投資というのは、1つの見方だけで買いか売りかを決められるわけではありません。いろんなことを総合的に見ないといけないんです。そこは正しく理解してもらいたいポイントです。
──だからこそ、難しいのですね。
そうですね。
──資産ベースで割安かどうかを判断するのも、ベンジャミン・グレアムの教えによるものなのですか?
グレアムさんは『賢明なる投資家』の中で、資産に対して割安かどうかをより正確に判断する手法を提案しています。かなり専門的な話になるので、細かい説明は省きますが、簡単に言うと、その会社を買収してすぐに清算したときに、買収した金額以上のお金が残る銘柄を推奨しています。
彼はそういう銘柄を「ネットネット株(※)」と呼んでいるのですが、僕もその論理にもとづいて、銘柄分析を行ったりしています。
※ネットネット株…株価が割安で、資産価値が高い銘柄。
(正味流動資産-負債総額)×66.7%(3分の2)>時価総額 があてはまるとされる。
──資産バリュー投資家を目指すならネットネット株のことは知っておくべきでしょうか。
それは間違いないでしょう。僕はツイキャスなどでネットネット株のことを詳しく話しているので、興味のある人はぜひ聞いてみて下さい。
『会社四季報』で3年後に上がる銘柄をみつける
──どんな投資法にも長所と短所があると思うのですが、バリュー投資の短所はどういう点ですか。
過小評価されている銘柄を買って、値上がりするのをじっくりと待つというのが僕らのスタンスですが、当然、待てど暮らせど上がらないこともあるわけで、そこが短所といえば短所ですね。
──いわゆる「バリュートラップ」でしょうか。
はい、バリュー投資家なら誰でも経験することです。
──かぶ1000さんは、何年くらい待つことを想定して買うのですか。
何年待つと決めてはいませんが、目安としては3年くらいですね。3年以上先のことを予測するのは困難ですし。
でも、7年売らずに持っていて報われたケースもあります。
──つまり、PBRなどを指標にして割安株を見つけ、それらの中から3年以内に上がりそうな銘柄を買う、ということでしょうか。
はい、そういうことです。
──となると、3年以内に値が上がる銘柄をどうやって見分けるかがポイントになりますね。
かぶ1000さんはどうやって見分けているのですか?
ひと口に言うのは難しいですね。それが簡単に分からないのが投資の難しさだと思います。
ただ、1つ言えるとしたら、僕は『会社四季報』を隅々まで読んで、その材料を探します。
──四季報は頼りになりますか。
もちろんです。上場企業すべてのデータが掲載されているし、年4回発行されるのである程度の鮮度も保証されています。投資家にとっては必需品でしょう。
ただ、四季報で何もかもわかるかというとそうではなく、僕もネットで調べたり、株主総会に出向いて情報を収集したりもします。
──昔から読んでいるのですか。
はい、中学の頃から読んでいます。年4回欠かさず購入してすべて保存していますから、今、うちには100冊近くあります。
──なるほど。それでは、次回は実際、どのように四季報を活用しているのかをお伺いします。
※このインタビューは2020年3月19日に実施し、2020年4月24日に初回掲載したものです。
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