日経平均上昇の勢いは落ち着く。天井圏への意識というより「ひとまず様子見」

 12月相場入りとなった先週末12月4日(金)の日経平均終値は2万6,751円でした。週足ベースでは5週連続の上昇となったものの、前週末終値(2万6,644円)からの上昇幅は107円とさほど大きくはなく、11月の月間15%上昇と比べるとやや勢いが落ち着きを見せたような印象になっています。

 今週末11日(金)にはメジャーSQが控えており、需給面での区切りを迎えるわけですが、その後のクリスマス休暇や年末前の薄商いが見込まれるだけに、今週の相場は派手に動く可能性があります。一気にピークをとりにいくのか、それとも調整含みの値固めにいくのか、今週は年末年始に向けた上昇相場の継続を占う上で天王山になるかもしれません。

 そこで、まずはいつもの通り、足元の状況からチェックしていきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年12月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の値動きを振り返ると、一応高値を更新する場面を見せたものの、一気に2万7,000円台を目指すような動きにはなりませんでした。値動きが大きくなった11月30日(月)と高値を取りにいった12月2日(水)のローソク足はともに陰線になっていることからも11月のような勢いは出なかった格好です。

 とはいえ、5日移動平均線はキープしていますので、天井圏への意識というよりは、「ひとまず様子見」感の方が強いと思われます。

 先週の値動きは、前回のレポートでも指摘した通り、月足チャートにおける、日経平均最高値(1989年12月の3万8,957円)から安値(2008年10月の6,994円)の下げ幅の「61.8%戻し」である2万6,747円や、日足チャートにおける、直近の上昇トレンドからの目標V計算値の2万6,689円辺りで推移していたため、ひとまず様子見するには手頃な株価水準だったのかもしれません(下の図2と図3)。

■(図2)日経平均(月足)の動き(2020年12月4日取引終了時点)

出所:Bloombergデータ等を元に筆者作成

■(図3)日経平均(日足)の動き その2(2020年12月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

ボリンジャーバンドは「バンドウォーク」継続中

 また、ボリンジャーバンドにおいても、株価が+2σ(シグマ)と+1σの範囲内で推移する、「バンドウォーク」が継続中です(下の図4)。

■(図4)日経平均(日足)のボリンジャーバンド (2020年12月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末の4日(金)時点の日経平均は+1σのライン近くに位置しています。11月の半ばにも同様の場面がありましたが、当時は+1σラインを下抜けることはありませんでした。今回も同じように+1σで反発できるかが週初の注目ポイントになります。

 11月時の値動きは、「一気に上昇して2万6,000円台にタッチし、達成感で利益確定売りが出たものの、すかさず買いが入って本格的に2万6,000円台を上抜けしていった」格好で、株価が鋭角的な軌道を描いていきましたが、今回は「2万7,000円台を試しそうではあるものの、タッチすることができず、やや丸みを帯びた軌道で上値が抑えられた」格好であるため、2万7,000円台乗せのためには、上昇に勢いをもたらすきっかけ、もしくは口実が必要になりそうです。

 これまでの日本株上昇の主な原動力として、(1)「ワクチン開発による経済正常化期待」をはじめ、(2)「追加金融緩和への期待」から、(3)「売り方の買い戻し」、そして(4)「日本株への再評価」などが挙げられます。

(1)については、米ファイザー社開発のワクチンが米国で緊急使用の認可が今週中に下りる予定であるほか、英国では接種が開始されつつあるなど、現実の動きになっています。(2)については、10日のECB(欧州中央銀行)理事会と来週のFOMC(米連邦公開市場委員会/15日~16日)で結論が出ますし、(3)については冒頭でも触れた通りメジャーSQが予定されており、(4)を除く要因は今週と来週でヤマ場を迎えることになります。

 足元のコロナ感染拡大が気になるところですが、先週末のNYダウは3万ドル台を超え、過去最高値を更新しています。同日発表された米11月雇用統計の結果は市場予想を下回ったものの、これがかえって追加の金融緩和や経済対策への期待を高めたことが背景にあります。つまり、ワクチン接種普及によるコロナ克服期待と、足元の状況悪化による政策期待の「いいとこ取り」の面があると言えます。こうした見方に変化が生じない限りは、日本株も米国株にけん引される形で2万7,000円台トライの場面がありそうです。ちなみに4日(金)時点の+2σは2万7,786円です。

 もちろん、日経平均が+1σを下抜けてしまった場合には、上昇一服が強く意識されることになり、下方向への動きが強まることも想定されます。その場合、目先のメドとなるのはボリンジャーバンドの中心線になりますが、こちらは4日(金)時点で2万5,430円です。

TOPIXも「コロナ克服の先」のゾーンに入れるか?

 また、今週はTOPIX(東証株価指数)の動きにも注目かもしれません。

■(図5)TOPIX(日足)の動きとギャンアングル(2020年12月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図5は、これまでに日経平均について何度か紹介したことのある2つのギャンアングルです。

 3月17日を起点とする「コロナショック後からの戻りトレンド」の赤いギャンアングルと、昨年8月26日を起点とする「コロナショック前のトレンド」の青いギャンアングルの2つが描かれています。

 ここで注目するのは青いギャンアングルの8×1ラインです。青いギャンアングルはコロナショック前のトレンドの線ですので、ここを「コロナ克服」のラインとして考えることができます。

 日経平均については、すでにこの青いギャンアングルの8×1ラインを上抜け、上値を伸ばす動きとなっていますが、TOPIXについては、8×1ラインのところでもみ合っているように見えます。つまり、TOPIXはまだコロナ克服から先のゾーンに入り切れていないことになります。

 もっとも、今週末はメジャーSQが控えているため、先物取引の値動きにつられるかたちで、日経平均だけが大きく動くという展開も想定されますが、TOPIXも8×1ライン超えを達成することができれば、足元の相場の強さを再確認することができるため、年末相場に向けて強気の見方が優勢になってくると思われます。反対に、TOPIXが調整含みだと、先行していた日経平均が下げ始めることも考えられるため、今週はTOPIXの動きがカギを握ることになりそうです。