外国人投資家が、買い転換

 11日の日経平均株価は、前週末比638円高の2万6,165円で、29年ぶりの高値をさらに更新しました。これで11月に入ってから日経平均は3,188円(13.9%)も上昇しています。

 これだけ派手な上昇は、過去の経験則通り、外国人投資家の買いによって引き起こされました。外国人は、今年に入ってから10月までほぼ一貫して日本株を売り越してきましたが、11月はついに買い越しに転じました。

外国人投資家の日本株式現物および日経平均先物の売買動向と、日経平均騰落率:2020年1月~11月(13日まで)

出所:東京証券取引所データより楽天証券経済研究所が作成。売買動向で、青は買い越し、赤は売り越しを示す。11月のデータは日経平均上昇率まですべて13日まで

 11月は、13日まで株式現物・日経平均先物とも外国人は大幅に買い越しています。まだデータが出ていませんが、11月24日までで見ると、外国人はさらに買い越し額を膨らませていると考えられます。日経平均の大幅上昇が続いているからです。

 外国人は、8月にも小幅に買い越していますが、それ以外の月はほぼ一貫して売り越しを続けてきました。今年1月から10月までで通算すると、株式現物を5兆3,995億円、日経平均先物を1兆1,695億円も売り越してきました。11月に入って、やっと買いに転換したところです。

 外国人が日本株に突然強気になったとは、現時点で考えられません。10月まであまりに大量に日本株を売ってしまったので、少し買い戻さざるを得なくなったのだと思います。

 日経平均先物についていえば、大量の売り建てを持っていたが、日経平均の上昇が続くので、売り建て玉の含み損が拡大するのを避けるため、買い戻さざるを得なくなったと考えられます。

 つまり、日経平均先物には、「踏み上げ」【注】が起こったと考えられます。

【注】日経平均の踏み上げ
日経平均株価が下落すると予想して日経平均先物の売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していく中で、損失拡大を防ぐために日経平均先物の買い戻しを迫られること。

 上記の日経平均先物の売買動向と日経平均騰落率に注目してみていきましょう。

【1】1~3月:外国人売りで日経平均急落
外国人は13月、日経平均が急落する中で、日経平均先物を大量に売っています。外国人の売りが日経平均を急落させたことが、わかります。

【2】4~5月:外国人の売り続くも日経平均は急反発
4-5月、日経平均が急反発する中でも、外国人は先物売りを続けています。

【3】6~8月:外国人は先物買い戻し
68月になると、外国人は先物を合計約1.2兆円も買い戻しました。ここで、「踏み上げ」が起こったと考えられます。じりじりと上昇が続く日経平均を見て、先物空売りを積み上げていた外国人が、買い戻しを迫られたと考えられます。

【4】9~10月:外国人が再び先物を売り越し
910月に外国人は再び先物を売り越しています。日経平均の上値が重くなってきたので、再び、日経平均下落を期待して先物の売り建てを増やしたと考えられます。

【5】11月:外国人が先物買い戻し
11月に入り、日経平均がさらに上昇したため、外国人は先物を買い戻しました。「踏み上げ」が発生したと考えられます。

裁定売り残に表れる、投機筋の日経平均先物「空売り」の動向

 東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の推移から、日経平均先物に「踏み上げ」が起こっていることが読み取れます。

 詳しく説明すると難解になるので、説明は割愛して結論だけ述べます。東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れます。

 売り建てが増えると裁定売り残が増え、売り建てが減ると裁定売り残が減ります。以下をご覧ください。

日経平均と裁定売り残の推移:2018年1月4日~2020年11月24日(裁定売り残は2020年11月13日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 11月13日時点で、裁定売り残は、1兆7,589億円もあります。投機筋(主に外国人)が、日本株に弱気で、日経平均先物の売り建てを積み上げていることがわかります。

 ただし、11月に入ってからは減少してきています。投機筋(主に外国人)が少し先物を買い戻していることがわかります。

 注目いただきたいのは、上のグラフに、矢印を書き込み「踏み上げ」と書いてあるところです。3カ所あります。2019年1012月と、2020年68月、2020年11月です。

 すべて、日経平均が大きく上昇した後、裁定売り残高が減少しています。ここで、「踏み上げ」が起こっています。

 日経平均が下落すると予想して売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していくため、損失拡大を防ぐために先物の買い戻しを迫られたと考えられます。

日本株は買い場の見方を継続

 投機筋(主に外国人)の先物売り建てはまだ高水準なので、日経平均先物の買い戻し圧力がかかりやすい、つまり「踏み上げ」が起きやすい状況が続いています。ただし、今、述べているのは、投機筋のポジション分析だけです。

 株は、短期は投機筋の売買で動きますが、長期はファンダメンタルズ(景気・企業業績)で動きます。最後は、ファンダメンタルズによって日経平均の向かう方向は決まります。

 私は、来年にかけて世界景気の回復色がさらに強まると予想しています。そうなれば、投機筋だけでなく、実需(欧米年金基金や国家資金ファンド)による日本株の買いも増えると予想しています。

 日本株は、配当利回りなどから評価して「割安」との判断は、日経平均2万6,000円でも変わりません。予想配当利回り4%以上の大型高配当利回り株を中心に時間分散しながら日本株の投資を増やしていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

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2020年11月12日:日経平均上昇の陰に「踏み上げ」?「裁定残」で予測する投機筋の動き