ブームを起こしてきたテーマ型ファンド。批判もあるが…

 特定の業種やテーマに沿った銘柄を組み入れる投資信託は、一般的に「テーマ型」と呼ばれます。これまで日本の投資信託市場でも、IT、資源、環境と、数々のテーマ型ファンドが設定され、都度ブームを巻き起こしてきました。しかし、テーマ型は相対的にコストが高く、また、テーマそのものが株式市場で一過性のブームに終わった例も少なくなく、多くのファンドに対して厳しい目が向けられてきたことも事実です。

 果たしてテーマ型ファンドは、「悪い商品」なのでしょうか。

 筆者はそうは思いません。テーマ型の投資自体は、株式取引でも一般的な投資手法です。市場平均(インデックス)よりも高いリターンを狙いたいなら、むしろテーマ型の投資は有効です。それなのに、テーマ型ファンドのハードルが高くなってしまうのは、1年程度の短期間で結果を出そうとするあまり、値動きに翻弄(ほんろう)された「タイミング投資」になってしまうからだと思われます。

 ここからは、テーマ型ファンドで失敗しないためのポイントについて見ていきます。では、早速ですが、クイズです。

クイズ長期投資に貢献する、優良なテーマ型ファンドを見極める際に重要なポイントを挙げた次の3つの文章中の、カッコ内のどちらか正しいと思う方に〇を付けてください。
  1. 運用成績は(直近1年・3年以上)を見た方がよい
  2. 信託報酬の水準は(最初・最後)に確認した方がよい
  3. 具体的な組み入れ銘柄は(確認した方がよい・確認しなくてもよい)

1:運用成績は(直近1年・3年以上)を見た方がよい

解答:3年以上

 まず、長期投資に貢献する投資テーマの選び方で重要なのは、短期の相場変動に左右されにくい、産業構造の変化が期待できる「成長産業型」のテーマを選ぶことです。

 最大のポイントは、「そのテーマ、または産業そのものが、目覚ましい技術革新によって、今後の人々の生活や産業構造を変える存在になりうるか」という点です。基本的に、一度進んだ技術が後退することは考えにくく、こうした成長産業は、長い目で見れば大きな成長の余地が残されています。一時的に株式市場の調整局面を経験したとしても、産業全体の成長余地が大きければ再び上昇軌道に乗るのも早いのです。

 こうした投資テーマが産業構造や社会構造に影響を及ぼすまでには、相応の時間がかかります。新たに設定されたテーマ型ファンドの基準価額が、半年や1年で10~20%上昇したからといって、テーマそのものの盤石さや持続可能性を意味するわけではありません。むしろ、たまたまタイミングが良かっただけだと思った方がよいでしょう。投資テーマは株式市場において、時に一過性のブームに終わってしまうこともあります。このため、テーマ型ファンドもやはり、最低でも2~3年程度の運用実績があるものから選ぶことをおすすめします。

2:信託報酬の水準は(最初・最後)に確認した方がよい

解答:最後

 まず申し上げておきたいのは、コストは長期投資に貢献する優良な投資信託を見極める際に大切な指標であり、決して「軽視してもよい」ということではありません。しかし、テーマ型ファンドに関しては、必ずしも信託報酬の低いファンドがよいファンドであるとも限りません。市場平均を目指すインデックス投資ではなく、あえてテーマ型ファンドを選ぶのですから、「安かろう悪かろう」では意味がないのです。

 重要なのは、あくまでも結果としてのリターンです。以前、本連載の「アクティブ投資にはコツがある?」でも解説しましたが、投資信託の信託報酬は、基準価額の計算時に投資信託財産から日々支払われています。つまり、毎営業日公表される基準価額と、その基準価額をもとに算出されるリターンには、すでに信託報酬が反映されています。最初から信託報酬の水準でスクリーニングをしてしまうと、肝心の良好なリターンを獲得しているファンドを見落とすことになるため、参考程度に確認するにとどめた方がよいでしょう。

3:具体的な組み入れ銘柄は(確認した方がよい・確認しなくてもよい)

解答:確認した方がよい

 実は、筆者がテーマ型ファンドを評価するにあたって最も注目しているのは、この組み入れ銘柄と銘柄選定の根拠です。例えば、アマゾン、マイクロソフト、グーグル(アルファベット)などの米国の巨大IT企業は、今や数多くのアクティブファンドに組み入れられている定番の銘柄ですが、これらは幅広い投資テーマに当てはまってしまう「オールマイティー型」の銘柄でもあります。

 こうした銘柄の組み入れ自体を否定するわけではありませんが、インデックスファンドでも間接的に投資できる銘柄群をあえて組み入れる理由がどこにあるのか。この点は銘柄選定の根拠とともに慎重に評価しています。投資信託の魅力の一つは、個人で発掘することが難しい企業の株式にも投資できる点にあります。テーマ型ファンドは、相応のコストをかけて運用するからこそ、付加価値を提供してしかるべきなのです。

 運用会社が毎月作成・公表する月次レポートには、ファンドの組み入れ上位銘柄が掲載されています。レポートのフォーマットは運用会社によって異なりますが、最近は組み入れ銘柄の紹介や、運用担当者のコメントを掲載する例も増えているので、ぜひ参考にしてみてください。

 以上をまとめると、テーマ型ファンドを選ぶ際は、「成長産業型」のテーマを掲げたもので、かつ、運用開始から最低でも2~3年程度の年月が経過したものの中から絞り込んでいくのがよいでしょう。

 十分な運用実績のない、新しいファンドがどうしても気になるという場合は、運用開始1カ月後をめどに公表される組み入れ上位銘柄は最低限確認するようにしてください。キャッチーなファンド名に飛びつかないことも、投資信託選びで失敗しないためのコツです。