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米大統領選通過で株高、29年ぶりの日経平均2万5,000円台回復へ

 ここ1カ月間(10月14日~11月13日)の日経平均株価は7.6%の上昇となりました。米国の大統領選挙を控える中で様子見ムードも強まり、10月末までは上値の重い動きが続きましたが、11月に入って、8月中旬以降続いていたボックス相場を完全に上放れる展開となっています。

 11月6日には1月につけた年初来高値を更新し、10日には1991年以来29年ぶりの2万5,000円台回復を果たしました。

 米国の大統領選挙通過によるイベントリスクの払しょくが、株価のトレンドを変える形となりました。大統領選挙は当初、トランプ大統領が想定以上の健闘を見せて激戦となりましたが、次第にバイデン候補優位の流れとなりました。

 一方、上院議会選挙では共和党が優勢となったことで、大規模インフラ投資への期待感は残る中、バイデン氏の掲げるキャピタルゲイン課税やハイテク企業に対する規制強化などの政策は、警戒されたほど進まないとの見方が強まる形になりました。

 その後、米ファイザーが新型コロナウイルスワクチンの良好な試験結果を発表したことで、早期の経済正常化への期待も高まる状況となっています。

 個別では、本格化する7-9月期の決算発表が主な手掛かり材料となりました。フジクラ(5803)カシオ(6952)ダイキン(6367)アドバンテスト(6857)パナソニック(6752)などが、想定以上の好決算発表で大きく上昇しています。

 バイデン氏の政策関連として、再生エネルギー関連事業を手掛けるレノバ(9519)なども目立った株価上昇となりました。

 一方、EC(電子商取引)関連や菅新政権関連などコロナ禍で株価パフォーマンスの高かった銘柄群には利益確定の動きが目立ってきています。こうした銘柄群は、好決算発表が出尽くしと受けとめられる流れにもなっているようです。

年末にかけて2021年の景気浮揚・株高期待を先取る動きも

 11月中旬から年末にかけての株式市場は比較的堅調な展開が続くと見込まれます。今年最大の注目イベントであった米大統領選を通過し、トランプ大統領の徹底抗戦の影響、上院での勢力確定先送りなど不透明要因は残しますが、ひとまずはリスク低下によって株式投資への安心感は強まりやすいと考えます。

 また、新型コロナワクチンの開発進展は、2021年の景気浮揚、ならびに株価上昇に対する期待感への高まりにもつながりそうです。加えて、なにより、一段の感染者拡大に伴う先行き警戒感を抑制させるものにもなります。

 さらに、今年は年末商戦への期待も高まる見通しです。新型コロナウイルスの影響による旅行自粛などの反動が強まるものとみられ、12月にかけての株式市場の期待材料とされそうです。とりわけ、EC関連やゲーム関連などには関心が高まりやすいでしょう。

 一方、国内では足元で感染者数が急拡大してきています。今年の冬シーズンにはワクチンの供給は間に合わず、目先では営業活動自粛要請の広がりなども想定されます。銘柄によってはストレートにネガティブ反応も予想されるため、現段階では、コロナ禍での収益拡大が見込める銘柄に再度、資金シフトの流れを想定すべきでしょう。

 年末にかけての堅調相場は期待されるものの、短期的には過熱感の反動も想定されるため、コロナ禍での高パフォーマンス銘柄の押し目買いなどに注目すべきでしょう。

 また、バイデン新大統領の大規模インフラ投資などを織り込んで、米長期金利が上昇傾向にあります。一段の上昇にはインフレ率の上昇も必要となりますが、金利上昇局面では高パフォーマンスとされる高配当利回りや低PBR(株価純資産倍率)などのバリュー株の見直しの動きなども期待したいところです。

コロナ影響が直撃した4-9月期の増益確保銘柄は、業績安定感の高さが際立つ

 11月13日段階で、7-9月期の決算発表はほぼ一巡する形となっています。全産業の純利益は前年同期比38%減になったと試算されており、うち、製造業が同54%減、非製造業が同28%減になったもようです。

 一方、下半期見通しは製造業が同77%増と回復の一方、非製造業は同49%減と減益幅拡大の見通しです。製造業は4-6月期でボトムを打った銘柄も多く、現状では株価の見通しも製造業優位と捉えるべきです。非製造業の来年度業績回復を織り込むには時期尚早でしょう。

 決算発表が一巡した局面では、あらためて好決算発表銘柄を評価し直す動きが想定されます。とりわけ、新型コロナウイルスの悪影響が直面した4-9月期決算における増益銘柄などは、業績の安定感の高さが特筆できるものと判断します。

今期が前期に続く増益予想+上半期も増益の高配当利回り銘柄ランキング

 下表は、時価総額1,000億円以上で配当利回り3.0%以上の銘柄の中から、今期が前期に続く増益予想銘柄で、上半期も増益を確保したもののリストになります。業績安定感の強さは長期投資向きとも言えるでしょう。

好調な業績推移が続く高配当利回り銘柄(2020年11月13日現在)

コード 銘柄名 会社予想配当利回り 株価 時価総額 上半期増益率
5857 アサヒHD 4.57 3,500 1,395 70.5
1941 中電工 4.87 2,134 1,241 24.8
9434 ソフトバンク 6.83 1,260 60,318 6.8
9433 KDDI 3.86 3,105 71,545 6.4
9436 沖縄セルラー 3.53 4,360 1,192 4.7
8424 芙蓉総合リース 3.55 6,200 1,878 2.3
配当利回り平均(%) 4.54
注:配当利回り、上半期増益率の単位は%、時価総額の単位は億円、株価は2020年11月13日終値、単位は円。

スクリーニング要件

  1. 予想配当利回りが3%以上
  2. 時価総額が1,000億円以上
  3. 前期実績、今期見通しともに営業増益
  4. 直近四半期までの累計営業利益が前年同期比増益

1 アサヒHD(5857・東証1部)

▼どんな銘柄?

 貴金属事業が主力となります。歯科分野を中心とした貴金属含有スクラップからの貴金属リサイクル、金および銀を米国やカナダで精錬する北米精錬などを手掛けています。

 また、各種廃棄物の収集運搬・処理・リサイクルなどを手掛ける環境保全事業、マッサージチェアや空調システムを扱うライフ&ヘルス事業も行っています。

 金市況が上昇した際には関心が高まる銘柄となります。また、配当性向は50%以上をメドとしています。

▼業績見通し

 2021年3月期上半期営業利益は118億円で前年同期比70.5%増と大幅増益になっています。新型コロナの影響が想定よりも軽微であったため、従来計画を10億円上回る着地でした。

 国内・アジアの貴⾦属リサイクル事業分野、北⽶の精錬事業分野ともに好調で、貴金属事業が業績のけん引役となっています。

 2021年3月期通期では、210億円で前期比16.6%増益を予想しており、4期連続での最高益更新となる見込みです。年間配当金は前期比30円増配となる160円を計画しています。

▼ここがポイント

 2020年3月期営業利益は約5割の大幅増益となりましたが、今期はそれに続いての2ケタ増益見通しと、業績は急拡大ステージにあります。配当性向が高い分、業績拡大による増配妙味も大きいといえます。

 金、パラジウム、銀などの市況は前年同期と比べて高水準にあり、下半期の業績下振れリスクも乏しいといえるでしょう。

 株価は7月以降高値圏でのボックスの動きが続いていますが、全体相場の上放れにつれて、目先は追随の動きになりそうです。

2 中電工(1941・東証1部)

▼どんな銘柄?

 中国電力系の電気工事会社です。中国電力を主要顧客とする配電線工事、送変電工事の他、ゼネコンや製造業、ホテルなど向け屋内電気工事、空調管工事、情報通信工事を手掛けています。

 地域別では中国地域が9割弱を占め、残りは都市圏で、東南アジアに子会社を設置するなど海外にも事業拡大を図っています。電力系設備工事会社の中では相対的に自己資本比率が高い状況にあります。

▼業績見通し

 2021年3月期上半期営業利益は32.7億円で前年同期比24.8%増益となりました。昭和コーポレーションの新規連結化効果で売上高が増加した他、原価管理の徹底や効率化施策などによる生産性向上で収益率も高まったもようです。

 2021年3月期通期では、営業利益は88億円で前期比5.6%増益の見通しです。投資有価証券売却益の計上で、最終利益は同54.3%増と大幅増益になる予想です。

 上半期受注高は情報通信工事の寄与が大きく前年同期比4.6%増になっており、下半期の業績には安心感があると言えるでしょう。

▼ここがポイント

 配当政策はDOE(株主資本配当率)2.7%をメドとしており、結果、配当性向や配当利回りは業界内でも高い水準となっています。

 高い自己資本比率を背景に、積極的な自社株買い実施なども今後期待できるでしょう。とりわけ、総資産に占める投資有価証券は43%を占めており、保有有価証券の売却益を原資とした自社株買いの余地などは大きいとみられます。

3 KDDI(9433・東証1部)

▼どんな銘柄?

 通信大手の一角で「au」ブランドが主力です。2020年3月の携帯電話契約者数シェアは31.7%で業界第2位となっています。子会社のJ:COMはケーブルテレビの市場シェアトップです。

 2020年3月期まで19期連続での増益、18年連続での増配を続けており、2021年3月期も増益・増配見通しになっています。金融事業の拡大などにも注力する方向です。

▼業績見通し

 2021年3月期上半期営業利益は5,888億円で前年同期比6.4%増益となっています。モバイル通信サービス収入が減少して売上高は微減となったものの、ライフデザイン領域やビジネスセグメントなど成長領域の順調な拡大が増益をけん引する格好となりました。

 2021年3月期通期では、営業利益は1兆300億円で前期比0.5%増益を計画しています。なお、今後発売するスマホは全て5G対応機種としています。

▼ここがポイント

 発行済み株式数の3.65%に当たる8,400万株、2,000億円を上限とする自社株買いの実施を発表しています。取得期間は11月2日から2021年5月31日までです。

 政府の携帯料金値下げ要請による影響は当面警戒されますが、それをカバーするには十分な規模感といえます。

 また、トヨタ自動車との新たな資本業務提携も発表しました。もともと資本提携関係にはありますが、関係性の希薄化も警戒されていた中、今後のコネクテッドカー普及による役割の高まりなども期待されることになります。

4 沖縄セルラー(9436・JASDAQ)

▼どんな銘柄?

 KDDI(9433)を親会社とする通信会社です。沖縄県では5割と圧倒的なシェアを占めています。

「au」「UQ」のブランドで展開するモバイル事業、「auひかりちゅら」「ひかりゆいまーる」が中心のFTTH事業、2019年11月からサービスを開始したauでんきを中心とするライフデザイン事業を手掛けています。

 東シナ海ルートの「沖縄~九州海底ケーブル」が竣工し、2021年3月期には収益貢献する予定です。

▼業績見通し

 2021年3月期上半期営業利益は77.9億円で前年同期比4.7%増益となりました。

 新型コロナウイルスの影響などで端末出荷台数は減少しましたが、auでんきや海底ケーブルなど新規事業の売上拡大、モバイル契約数増加など顧客基盤拡大による電気通信事業収益の増加がプラス寄与しています。

 2021年3月期通期では、営業利益は140億円で前期比0.2%増益の計画ですが、上半期の進捗率は55.7%に達しており、超過達成の可能性は高いと考えられます。

▼ここがポイント

 配当性向40%を新たな配当政策に掲げており、2021年3月期年間配当金は154円で前期比9円増を計画しています。これで20期連続での増配となります。

 また、今期は発行済み株式数の2.2%に当たる60万株、20億円を上限とする自社株買いの実施を初めて発表しています。

 こうした株主還元策の強化に加えて、想定以上の契約者獲得推移となっているauでんき、格安スマホ市場で高い競争力を有しているUQモバイルなども今後の期待材料となるでしょう。

5 芙蓉総合リース(8424・東証1部)

▼どんな銘柄?

 リース業界大手の一角でみずほ系です。9月末の営業資産残高は2兆5,756億円で、うちリース資産残高は1兆7,240億円となっています。

 物件別リース契約実行高では、情報・事務用機器、建物など、輸送用機器、産業工作機械などのセグメントが上位となっています。

 不動産や航空機などが戦略分野で、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスなどは新領域となります。2020年4月にはヤマトHDの子会社ヤマトリースを買収しました。

▼業績見通し

 2021年3月期上半期営業利益は209億円で前年同期比2.3%増益となりました。コロナ禍の悪環境の中、不動産リースが伸びた他、ファイナンス事業も不動産ファイナンス中心に好調に推移しました。

 営業資産残高はヤマトリースの連結化や不動産アセットの積み上がりなどで、中計目標だった2兆5,000億円を前倒しで達成しています。

 2021年3月期通期では、営業利益は420億円で前期比1.4%増益を計画しています。消費増税前の前年上半期実績を上振れていることで、通期計画達成の確度は高いと考えられます。

▼ここがポイント

 みずほFGに近いリース会社は、同社の他、東京センチュリー(8439)みずほリース(8425)などが存在しています。2021年春には三菱UFJリース(8593)日立キャピタル(8586)が合併することもあり、今後も再編期待などが折に触れて高まる可能性があるでしょう。

 その他、新型コロナウイルスワクチンの開発進展で、航空機リース事業の先行き懸念が後退することも支援となります。