大統領選挙の投開票は「前代未聞の混乱」に突入か

 株式市場は、欧米で新型コロナウイルス感染者数が増加するなか、米国で追加景気対策を巡る与野党協議が決裂したまま本選挙を迎える事態を嫌気しています。

 行政府(ホワイトハウス)と立法府(上下両院議会の過半)のすう勢が決まるまで、企業や家計を支える財政政策は決められず、市場の不確実性は高まっています。

 図表1は、専門家予想を集計する調査会社(Good Judgment)による大統領選挙の「当選確実判明時期」の見通しです。

 投票日(11月3日)から8日までに「どちらかの陣営が敗北を認める可能性」は3割のみとされ、7割が「11月9日以降」と予想。5割が「11月9日以降で26日(感謝祭)までに決まる」と見込んでいます。

 コロナ禍で郵便投票が過半を占めるとされる今回の選挙では、投開票の遅れが市場の混乱につながる可能性に要注意です。

 逆に、選挙結果が早期に判明すれば、滞っている景気対策の審議が迅速に進む可能性もあり、株式にはプラス要因となりそうです。

 なお、大統領選挙と上下両院議会選挙のすべてで民主党が勝利する場合は、財政出動を決めやすくなるとの見方が有力となっています。

 独自の予測モデルで選挙結果を予想する調査会社(FiveThirtyEight)によると、州ごとに割り振られた選挙人総数(538人)のうち「バイデン候補の獲得予想」は過半数(270人)を上回る343人、トランプ大統領は195人となっています(28日時点)。

 とは言うものの、「選挙は水物」とされ、開票結果に予断を許しません。

<図表1>大統領選挙の「当確判明」は遅れる見込み

出所:Good Judgmentより楽天証券経済研究所作成(2020/10/28)

中国株式は景気持ち直しと「ポスト・トランプ」を織り込む動き

 ワシントン情勢が不確実性を高めているのを横目に、中国株式が堅調に推移している状況に注目したいと思います。

 図表2は、世界の機関投資家が注目するMSCI中国株指数(MSCI China Index)が10月に過去最高値を更新したことを示しています。

 同指数は、売上高や営業収益で中華人民共和国(香港を含む)の比率が大きい銘柄で構成される時価総額加重平均指数です。

 MSCI中国株指数の年初来上昇率は+21.0%で、MSCI米国株指数(同+3.2%)やMSCI日本株指数(同▲5.9%)を大幅に上回っています。

 中国株堅調の背景としては、
・同国の景気回復基調が鮮明となっている
・デジタル需要拡大を背景に中国のIT(情報技術)関連株の株価が堅調である
・為替相場で人民元の対ドル相場が堅調である(図表2)​

などが挙げられます。

 また、トランプ政権との貿易摩擦やコロナ危機(感染拡大と移動制限)を乗り越える経済活動の回復を経て、中国市場が「ポスト・トランプ」(バイデン民主党政権誕生)を視野に入れた物色に支えられている可能性に注目したいと思います。

<図表2>MSCI中国株指数は過去最高値を更新した

出所:Bloombergをもとに楽天証券経済研究所作成(2019/10/1~2020/10/28)

 そもそも近年の中国経済は「二面性」を鮮明にしてきました。「重厚長大」と称される分野を中心にした国営企業の非効率性と過剰負債は「チャイナリスク」と呼ばれ、構造改革(リストラ)が必要とされています。

 労働賃金の上昇傾向は中国製造業の国際競争力を減退させ、トランプ政権の対中強硬策(対中関税引き上げ)の影響で対米輸出製造業の交易条件は一段と悪化。「投資や輸出」に依存する経済成長から「個人所得向上と消費支出拡大」が主導する成長に移行する転換期にあります。

 こうしたなか、付加価値の高いIT分野や消費サービス関連の「非国営企業」(民営企業)が中国市場の「ニューエコノミー関連株」として株式市場をけん引しています。

 中国のGDP(国内総生産)規模は世界2位に位置し、成長率は徐々に減速するにしても、総人口で約14億人(米国の4倍超)を抱える市場規模と購買力は今後も拡大していく見通しです。

 米国と「覇権争い」を続けつつ、中国型資本主義経済の主役は「投資から消費」、「国営企業から民営企業」、「製造業からサービス業」、「重厚長大からデジタル化」へ移行。

 MSCI中国株指数の高値更新は、市場参加者(世界の機関投資家)が中国の経済的潮流(ニューエコノミー化)と株式見通しを変化させている可能性があります。

中国市場の「ニューエコノミー株」に分散投資するETF

 ポスト・トランプを視野に入れるなら、中国の「ニューエコノミー関連株」に分散投資する米国籍ETF(上場投資信託)に注目したいと思います。

 ファンド名は「ウィズダムツリー中国株ニューエコノミーファンド」(CXSE)です。同ETFが投資している対象は、国有企業を除く中国企業(民営企業)で、ファンド内の個別銘柄の最大ウェイトは10%、運用経費率(年率)は0.32%となっています。

 図表3で示すとおり、同ファンドの取引価格の年初来上昇率は+42.3%と好調です。今春以降に鮮明となっている中国の景気回復とニューエコノミー関連企業の収益拡大を期待するパフォーマンス堅調が同ETF価格の相対的な好調に寄与しています。

<図表3>中国株ニューエコノミーファンドは年初来4割超の上昇

出所:Bloombergをもとに楽天証券経済研究所作成(2019/10/1~2020/10/28)

 図表3は、同ETFの発行済み口数も増加傾向をたどっていることを示しています。

 一般的に、機関投資家など大口マネーがETFへの投資を増加させる際は、取引価格(売買価格)に過度の影響を与えない目的で、指定業者(マーケットメーカー:証券会社)を通じて運用会社にETF受益証券を新たに発行させることが多く「発行口数」は増加します。

 中国経済や中国株式に成長期待がある反面、非効率な国有企業(オールドエコノミー)を避けたい投資ニーズは根強いと考えられます。

 なお、上記ファンド(CXSE)の組入上位銘柄としては、テンセント・ホールディングス(騰訊控股)、アリババ・グループ、中国平安保険、美團點評、JDドットコム、網易、バイドゥ(百度)など香港、米国、中国本土に上場される大手主力IT系企業が挙げられます。

 ファンドの運用時価総額は約3.977億ドル(約415億円)となっています。同ETFに資金を投じることで、比較的簡便に「中国ニューエコノミー関連株への分散投資」を資産運用(ポートフォリオ)に加えることが可能となります。(参考情報:米国籍ETFの売買は米国株式の売買と同様です)。

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